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第二章求婚

9訃報

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  この日革命の志達は街のあちこちで爆発騒ぎを起こしていた。
  それは軍内部からも離反者が決起し、クーデターを企てるための隠れ蓑。世間からの注目を集めて、対処に多くの動員をとられ、手薄になったところを、混乱に乗じ目的を遂げる。そのために起こされた無差別なものだったと、輿入れの姫を狙ったものではないと、後に報道された。それが真実であったのかは不明であったが、アスターネスの第二王子が犠牲になった事にはかわりない。決起は失敗に終わり、地下に潜った革命組織とのいたちごっこが、長く続く事になる。
  兄を失った悲しみの涙にくれる姫は、それでも自身の国に戻らなかった。婚姻は大幅に遅れて行われた。

  爆発により、見るも無残な姿になったマークスは、同じように遺体となったほとんどの騎士達とともにアスターネス国に戻った。顔は生前の面影はなく、あまりの無惨さに、頭部には布が巻かれさらに白い刺繍の入った布を掛けられていた。また、数名ほどだが、軽度の怪我の者、重症だが意識があり移動ができる者も戻ってきた。しかし、意識もなく重体の騎士も数名いた。彼らは医療先進国であるコノセルギア国内にて、治療が続けられることとなった。

  突然の訃報で、国中が悲しみに包まれた 。
  国葬の参列者は棺の中に横たわる白い布を掛けられた第二王子を見ることができなかった。市民には祈祷所が設けられた。愛されていた王子に花を捧げて、別れを告げに訪れる人は後から後から、途切れることがなかった。

  だが、婚約者だったファータは一度も姿を見せなかった。
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