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久しぶりにリーナに会えると思うと自然と足取りは軽くなり、小走りで庭園に向かった。
彼女を探している時間さえも楽しく、夢中になって探し回った。
(やっと会えるんだ!早くリーナの顔を見たいな、、)

なかなか見つからず、随分と奥まで来たところだった。
湖の方からもがくような音が聞こえた。
何故か嫌な予感がし、湖に向かって走り出した。

息を切らしながら湖を見渡すと、溺れている少女が目にはいった。
よく見るとその少女は、この2ヶ月会いたくてたまらなかった相手だった。

「リーナ!!」
息苦しかったことなど忘れ、考える前に手が動いていた。
彼女が自分の視界から消える前に、浮遊術を展開し水中から持ち上げた。

久しぶりに見たリーナの顔は自分の記憶にある笑顔とは違い、青白く呼吸も弱かった。
温めるために、魔法で服を乾かし周りの温度を少しあげた。
それでも目を覚さない彼女に心臓が止まりそうになりながらも、名前を呼び続けた。

「リーナ!起きてくれ!」
彼女を揺さぶりながら、必死に叫んだ。
「リーナ!、、目を覚ませ!」

医者を呼びに行こうかと思ったとき、彼女の目が少しづつ開気始めた。
「リーナ!!!」
顔色も段々と良くなる彼女の姿を見て安堵し、体から力が抜けた。

「、、、レン?なんでここにいるの、、?、、、、、、、、夢?」
まだ意識ははっきりしていないが、問題なく話せていることに安心した。

「リーナ!!!!良かった、目が覚めたな!」
「レン、、、本物なの?」
まだ夢を見ていると勘違いしている彼女に、これが夢じゃないことを教えるため強く抱きしめた。
「本物だよ。本当に心配したんだからな!!」

しばらく抱きしめ、リーナの意識がはっきりすると自分の状況がようやく理解できたようだった。
服が濡れていないことを不思議そうにしながらも、彼女は感謝を伝えた。

「本当にありがとう。私あなたが来てなかったら多分死んでたわ」
「全くだ!なんで1人でこんなところにいたんだよ!」
死んでいたかもしれないと言われ、思わず声を荒げてしまった。
一方的に怒鳴るのはいけないと思いながらも、言わずにはいられなかった。

「本当にごめんなさい、迂闊だったわ。助けてくれてありがとう、レン!」
彼女の申し訳なさそうな姿に冷静になり、言い過ぎたことを自分も申し訳なく思った。

「、、、ごめん、僕も言い過ぎた。でもすごく心配したんだ、、、!手遅れにならなくて本当によかったよ。」
自分の言葉にもう一度彼女から礼を伝えられ、笑いかけてくれた。
待ち侘びた本来のリーナにやっと会えた気がして、つられるように笑い合った。

「それにしても、なんでこんな人気のないところにいたんだ?」
「、、うーん、あの日から何回か庭園に来てたんだけど最近は飽きちゃって、たまたまここを見つけたの。」
「ごめんな、相当君を待たせてしまった、、、」
肩を落とした自分を見てリーナが慌てながら自分の言葉を否定した。

「違うの!あなたを責めている訳じゃないの!むしろいつ会えるのかワクワクしてたのよ!」
彼女の優しい言葉に救われ、いくらか気持ちも楽になった。

「そんなことより、どうして私の服が乾いてるの?それにどうやって私を湖から引き上げてくれたの?」
無理やり話を変えてくれた彼女の優しさを無碍にするわけにはいかないため、自分もこれ以上は触れずに彼女に返事をした。

「あぁ、服は簡単な風魔法で乾かしたんだよ。君のことは浮遊術で引き上げたんだ。」
そう伝えると彼女は目を輝かせながら自分の話に聞き入った。
「去年から魔法学の勉強をしていているんだ。どちらの魔法も初歩的なもので比較的簡単なんだよ」
「レンはもう魔法が使えるの?!すごいわ!」
「リーナもすぐできるようになるよ。」
彼女からの賞賛に嬉しくなり、にやけそうになったので平静を装った。

「そうかな?私も早く魔法を習いたいな~」
「少しやって見せようか?」
「本当に?!見たいわ!!」

期待で満ちた目を向けられ、力が入った。
彼女が喜びそうなものを考え、何枚かの落ち葉を手の中に入れた。

「よく見てて」
そう言い、手のひらに魔力をこめて握った。
3秒ほど経った後に手を広げると、数匹の色とりどりの蝶が飛び立った。
蝶はゆるかな軌道でリーナに近づき、彼女の周りを飛んだ。

「うわぁ、、!かわいい!これレンがあの葉っぱで作ったの?」
「うん、僕はものを具現化したり変身させることが得意なんだ。」
「かわいい~、魔法ってこんなこともできるのね!」

アドルフ曰く、魔法は術者の想像力次第だ。
何かを動かしたいなら、その様子を鮮明に思い浮かべ魔力を集中させる。
何かを変身させたいなら、どのように構造を変化させるか。
何かを創り出したいなら、どのような構造でどのような質感なのか。
自由だからこそ難しいのだと教えられた。

「リーナにあげたネックレスも実は僕が作ったんだ。」
「そうだったの?!本当にすごいのね!」
彼女の反応に少し得意げになりながら魔法の説明をした。

会えなかった時間を埋めるようにお互い、いろいろな話をした。
自分がこの2ヶ月で得た新しい知識について話すと、興味深そうに聞いてくれた。
彼女の話も相変わらず面白かったが、一つ残念なのは湖に落ちたときに一緒に持ってきてくれていたクッキーも落ちてしまったようでダメになってしまったことだ。
それでもいいと言ったがリーナは頑として譲らず、また次の機会になった。

楽しい時はやはりあっという間で自分の魔法学の時間が終わりに近づいていた。
次に会う日を決めることはできなかったが、再会を誓い合い別れた。

時間が迫っていることに焦りながら、自室に戻りまたそっと扉を開いた。
そこには部屋を出た時と変わらないアドルフの姿があり、静かに近づいた。

「先生、起きてください。」
「、、、おや、予想以上に眠ってしまったようですな。」
白々しい演技に笑いそうになったが、我慢して話を続けた。

「えぇ、よくお休みになられていましたね。」
「殿下は、、有意義な時間を過ごせたようですな。」
声から彼の優しさが伝わり自分の頬も自然と緩んだ。

「先生のおかげです」
言葉に精一杯の感謝を込め、伝えた。
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