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第十七章

十四話 【三つの戦い】

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場所が変わり驚くミルドラだが、召喚したはずの厄災がいないと気付くと、また手を広げ、呼び出そうとする。

だが、魔法陣は出ない。

惣一郎の幻腕が、ミルドラの背中に触れたままだった。

ミルドラは振り返りもせず、外殻のスカートが捲れるとサソリの様な尻尾が現れ、背後の惣一郎の腹にめり込む!

吹き飛ぶ惣一郎に、呼吸苦が襲う!

いつもよりプロテクターは多く付けているが、ダメージは大きかった。

「旦那様!!」

大きな赤い弁慶が侃護斧を振り上げたまま、空からミルドラに襲い掛かる最中に声を上げてしまうと、ミルドラの剣が空中の弁慶を襲う!

それを侃護斧でなんとか受け止めるが、ミルドラの倍ほどの大きさの弁慶を軽々と吹き飛ばす。

その直後、青い炎がミルドラを包み、竜巻の様な風が高々と青い火柱を上げる!

少し離れた場所で、杖を構えるエルとゼリオス。

炎を振り払おうと暴れる影が、火柱の中で動く。

大勢を立て直し侃護斧を構える弁慶が、チラッと惣一郎を見る。

惣一郎も苦悶表情で、立ちあがろうとしていた。

ホッとした弁慶の渾身のフルスイングが、火柱の中のミルドラを、くの字に曲げ地面に叩きつける!

青い炎を振り撒き、転がるミルドラ。

表情はない。

だが片膝を突き、起き上がる仕草にはダメージが見て取れる!

弁慶を見据えるミルドラ。

その後ろからギコルの長剣、千住院大和物がミルドラの背後の尻尾を両断すると、血を吹き出し地面に手を突くミルドラ。

そのミルドラを地面に縫い付ける様に、惣一郎の無数の苦無が雨の様に降り注ぐ!





巨大なサソリの素早い動きを封じる為に、2本の鋏と毒針の付いた尻尾を避けながら、キンブルのプロットの魔法で強化されたガオが、軽やかなステップを踏み、サソリの6本の脚の間を縫う様に拳を叩き込む!

艶のない黒い脚には、ヒビが入って行く!

「どっこいしょ!」っと、ドワーフの小さな身体で、大きな鋏を弾き返す!

ゴザの光矢が、ピンポイントで脚の付け根に刺さり、グリコの水弾がサソリの顔を塞ぐ!

水には惣一郎から渡された、殺虫剤が溶け込んでいる!

苦しそうに暴れるサソリ。

殺虫剤は有効の様だ!

キンブルのストーンバレットが、クトルの風刃と重なり、固い外殻を削ると薄くなった肩にあたる所に、ガオに投げ込まれたガブガが、2本の斧を同時に叩きつける!

「「「 どっこいしょ!! 」」」

声が揃うと同時に、左の鋏を肩から切り落とす!

バランスを崩すサソリは、ヒビの入ったもつれる脚を折り失うと、回る事しか出来なくなる!

半分の脚を失い、クルクル回る巨大な蟲。

それだけでも、広場近くの建物を巻き込み瓦礫を作っていく。





その頃、今回の要となる東側では、ミコとベンゾウが揉めていた。

「姉弟子! そりゃないぜ!」

「ベンゾウのが早かっただけでしょ!」

「まぁまぁ、無事倒したのだから良いではないか」

「アタイの必殺技が炸裂する所だろ! 構えてたの見てただろ!」

「見てないよ。見たのは鉈を逆手に持って回ろうとしてた所だけだよ」

「それを言ってるんだよ!」

「ええい、やめぬか! まだ戦いは続いているのだぞ! 急ぎ惣一郎殿の所へ応援に向かうのだろ!」

「「 そうだ! 」」

ギドはバラバラになり動かなくなった巨大な蟲を見て、驚き固まっていた……

「おっさん! 飛べるか?」

「えっ! あ、ああ……」

東側に主力を置いた惣一郎の策が功を奏し、世界が見た世界の終わりは回避する事が出来た。


『惣一郎様! 緑の厄災は無事ベンゾウさん達が倒しました! 今から応援にそちらへ向かうそうです』

『さ、先に、もう一匹の方へ!』

『分かりました! すぐ伝えます』



惣一郎の苦無は、外殻に傷をつけただけで、何食わぬ顔で起き上がるミルドラ。

触覚がカタカタと動くと、ミルドラはゆっくりと姿を消した……





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