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第十七章

二話 【生存者】

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ヒロヨシーに連絡が入ったのは、次の日だった。

ギルドの宿泊施設に泊めてもらった惣一郎は、暗い顔をしている。

ベンゾウに「こんな事になるなんて、わかる訳が無いよ!」っと慰められていたが、惣一郎は本当はあの時、どうするべきだったのかを考えさせられ後悔していた。

「旦那様、どの道まだ、何もわかってないんだ、もし、そいつの仕業だったとしても、悪いのはそのベリルだろ! 旦那様が落ち込む事は無いだろう」

そこにドアを叩き、入ってくるヒロヨシー。

「惣一郎殿! 連絡が! 施設は無事な様で生存者がいました!」

地下深く作られた施設に、隠れていた施設職員と、逃げ遅れたギルド職員、それと街の人間の計5人が、瓦礫の下の地下施設で生きていたそうだ。

「施設職員が生きていたのは幸運でした! すぐ飛べますが、どうされますか?」

「すぐ向かう!」

ヒロヨシーはすぐにコールを送り、ジビカガイライの3人が今から向かうと伝えると、古屋の地下にある施設へ向かう。

「お気を付けて!」

「ああ…… 行ってくる」





光る魔法陣を出ると、暗い顔で疲れ切った男が出迎える。

「ジビカガイライの皆様…… お待ちしておりました……」

それだけ言うと施設員は、扉を開け階段を登り始める。

街が襲われたのが6日前、ワイドンテが捜査に向かったのが3日前。

1週間近く地下に閉じ込められていたのだ、すぐに明るく出迎えろなんて、できる訳が無い。

惣一郎達も申し訳ない気持ちで、黙って後を付いて行く。



外に出ると、街の瓦礫が厄災襲撃の酷さを物語り、目を覆いたくなる惣一郎。

……………酷いな。

救助に駆けつけた冒険者達7人が、施設から救い出した生存者達の手当をしていた。

惣一郎はすぐさま、他に生存者が居ないか集中してサーチを唱える。

だが生きている者は、ここに居る15人だけであった。

「ジビカガイライだ、他に生存者はいない様だ………」

頭を抱え、泣き崩れる生存者。

悲壮な表情で生存者を見つめる冒険者。

言葉を失うジビカガイライ。

だが、惣一郎は生存者の5人に、

「ネウロはいるか!」

っと、声をかける。

だが、返事はなかった……

疲れ切った生存者に、栄養ドリンクと食料を出し、ゆっくりと話を聞き始めた。

それは突然始まったという。



ダンジョンで賑やかな街に、突然現れた2匹の厄災。

1匹は、家よりも大きな巨大な緑色の厄災。

体に合わない小さな羽に棘のついた硬そうな外殻、長い6本の脚にも棘が見られ、鋭い2本の鋏を持つ口元から、長く伸ばした2本の触角が生えていたと言う。

その緑色の厄災は、長い脚で家を薙ぎ倒し、人を襲い食べていたと言う。

バキバキと食べられる音が、今も耳から離れないと、その時の恐怖を見開いた目で、静かに話す生存者。

そしてもう1匹は、街の反対側に現れたと言う。

こちらも巨大な漆黒の外殻に覆われ、大きな2本の巨大な鋏を持ち、別に伸ばす6本の脚で素早く動く厄災は、長く反り返る尻尾を持ち、先端にある大きな針の付いた瘤で、逃げ惑う人々を串刺しにしては、両手の鋏で街を破壊して回っていたと言う。

1匹目は分からないが、こっちはサソリだろうか……

サソリは蜘蛛の仲間だったはずだが、これも厄災なのだろう……

「人影は見なかったか? 厄災を操る様な者はいなかったか?」

目撃したギルド職員は、逃げるので精一杯だったそうで、見ていないと言う……

逃げる途中行き合った5人は、そのまま施設職員の誘導で地下に逃げこみ、今日まで施設にあった非常食で生きながらえた…… 

生存者達はそれ以上、何も分からないと言う。

だが、逃げこむ途中、ダンジョンに逃げ込め!っと言う声を聞いたそうだ。

惣一郎はいくら巨大な厄災が二匹現れたとしても、この大きな街の人々が、全員襲われ殺された事に、少し引っかかっていたが謎が解けた気がした。

逃げられない空間では無いはずの街で、生存者が少な過ぎた理由に、微かな希望が生まれたのだ。

「ダンジョンは! 入り口はどの辺だ!」

冒険者のひとりが「案内する」っと、走り出す。

惣一郎達3人も、後を追いかけて行く。




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