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第十六章

三十一話 【トップの子】

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斧を構えるガブガ達の前に、大きな赤いムカデが姿を現す!

激しい雨の中、暗い闇を切り裂く様に無数の脚が地面を耕し、赤く鈍く光る体をうねらせる二匹のムカデ。

夜も雨も関係なく現れるムカデは、やはり他の厄災とは違う物に思える。

ゴザがライトの魔法を唱えると光源が現れ、辺りを明るく照らす。


牙を剥く先頭のムカデの顔に、ガオが下から拳を振り抜くと、鈍い音を上げ仰反るムカデ!

大きな牙が折れ、宙を舞う。

「それ、どっこいしょ!」

っと、仰け反ったムカデの体に、2本の斧を食い込ませるガブガ。

緑の液体が吹き出し、たまらず吠えるムカデ。

丸まり、横から赤い鎧が鞭の様に襲い掛かると、ガオがそれを殴り止める。

容赦無いガオの連打で、ヒビが入る外殻。

ギコルは、2匹目のムカデを両断し、2匹にしていた。

ふたつに離れた体がそれでも動き回る。

光矢が、ヒビが入った外殻に突き刺さり、動きが鈍くなるムカデ。

ギコルが分断されたムカデのお尻部分を長剣で串刺しにすると、頭部をカチ割るガブガ!

咄嗟の連携も取れ圧勝に思われたが、1匹目のムカデが傷だらけの体をしならせ、黒い尻部分が殴り続けるガオの背後から襲い掛かる!

気付いたゴザが光矢を飛ばすが、そのままガオを空へ打ち上げるムカデの尻尾!

「ガオ!」

ギコルが突き刺した長剣、千住院大和物を抜きながら横にミコの様に回転し遠心力を乗せ下から切り上げる!

最初のムカデも綺麗に両断され、少しうねると動かなくなった……

飛ばされたガオは背中を強打されたが、惣一郎のプロテクターのおかげで大事には至らなかった。

だが、軽い呼吸困難にはなっていた。

「ガオ、大丈夫か! ゆっくり深呼吸をするのだ!」

四つにバラバラになったムカデは、完全に動かなくなっていた。





勢いよく地面を這い、暗い林を縫う様に進む3匹のムカデ。

その上空で惣一郎は、

「この雨で殺虫剤は使えない、無理はするなよ」

「うん!」

そう言って空から飛び降りるベンゾウ。

惣一郎はムカデの前に降り立ち、盾を3枚広げ、突進して来る3匹の顔に盾をぶつける!

重い! が、三匹の勢いを止める惣一郎。

すると背後から銀の閃光が、真ん中のムカデの頭部を後ろから切り落とし、惣一郎の元に戻って来る。

「ただいま!」

「えっ? うん、おかえり?」

すると両脇のムカデも頭が落ち、うねりだすが、ゆっくりと動かなくなった……

はや! え? いつ切ったのよ!

ベンゾウは振り返りもせず、腰の鞘に小刀を納める。

上空から飛び降りすれ違い様に斬ったベンゾウ。

驚きを隠せない惣一郎は……

「それまた、切れ味上がってないか?」

「うん、いい子でしょ! 褒めてあげて」

っと、無邪気に抱きつくベンゾウ。

もう赤いムカデは瞬殺ですか…… 恐ろしい。



惣一郎は魔石を取ろうとムカデの死骸に近付くが、魔石まで全て真っ二つになっていた。

胴回り3~4mはあると思うんですが……

小刀でどうやって切ってるのだろうか?

ピンポイントで首元の魔石ごと……

少し呆れる惣一郎だった。





「終わったのか?」

村の奥から避難を終え、応援に駆けつけたアザ。

「ああ、楽勝だぜ!」

自慢げに長剣を振り上げるギコル。

「ガオ……」

油断したガオは呼吸を整え、悔しそうであった。

「しかしこの魔獣、厄災から逃げるなら逆方向だろう…… まさかゴミヤを目指していたのだろうか?」

ムカデの死骸に注目している、ガブガ達。

そこへ、惣一郎が戻って来る。

「みんな無事か?」

「びっくりした! ああ、問題ない! それより早かったな」

帰りの早い惣一郎を、不思議に思うガブガ。

「ああ、ベンゾウがあっさりな……」

「3匹いたのだろう? アレが」

注目を集めるベンゾウ。

惣一郎はガブガ達にクリーンをかけると、雨具を着ていない3人にカッパを渡し、ガブガの質問を無視する。

「ツナマヨ達は俺達で追いかけるから、みんなは島に戻っててくれ! 今から追いかけても、着く頃には終わってるだろうから」

そう言いながら惣一郎もベンゾウを見る。

「わかった…… ミコをよろしく頼む」

惣一郎は理喪棍にまたがり、ベンゾウを呼ぶと暗い空へと消えていく。

「飛んだ…… 何者なんだ?」

目を丸くするアザが、遠くに小さくなって行くふたりを見つめる。

「あれが、冒険者のトップを張るふたりじゃ」

「あれが…… ジビカガイライか……」





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