上 下
362 / 409
第十六章

二十九話 【浮かぶ厄災の謎】

しおりを挟む
セシルがサーズリに、討伐完了の連絡を入れる。

「惣一郎様、報告は終わりましたがフロスト諸島へ向かったチームが、まだ着かないそうです」

「ありゃ、遠いのか?」

「みたいですね。馬車で向かっているそうなのですが……」

俺も向かった方がいいだろうか?

ドノレイが兜を取り頭を下げる。

「助かりました感謝します。多くの犠牲も出しましたが、この位で済んだのも、ジビカガイライのおかげです。しかし……」

「しかし?」

「ここ最近世界中で、厄災の被害が増える一方です。この国に現れたのも数百年ぶりだと言うのに」

確かに多い気もするが、惣一郎にはもっと納得いかない事があった。

天敵のいないこの世界で厄災は、卵を産みなぜ増えないのか……

「今回の厄災は、先日ザザンドに現れた厄災の卵が孵った幼体だと思うけど、今まで厄災が卵で増える事は無かったのか?」

「卵が? 厄災が増えると言う事ですか?」

あれ?

「セシル、サーズリに厄災について詳しい者を紹介してもらってくれ」

「はい!」

この世界で脅威とされる厄災。

古代魔法による召喚……

一体何処から来るのか、何故急に現れ人を襲うのか……

そして何故急に増えたのか……

今まで当たり前のように依頼を受け、倒して来た惣一郎だが、ここに来て初めて、厄災について詳しく調べようと心に決める。





雨脚が強くなる中、馬車と11頭の騎馬隊がゴミヤの街を目指していた。

「団長! 陽が暮れ始めて来たぜ。そろそろ馬も休ませないと」

「仕方あるまい! 馬を休ませるぞ」

すると、並走するアザが、

「いえ、ここから少し先に[トチカの村]がある! そこまで行ければ代わりの馬がいるはずだ」

「馬を代えれば、そのまま休まず行けるな団長」

「ああ、馬には悪いが、もう少し頑張ってもらおう」

「おい、休憩しないのか!」

「今は先を急ごう」

「体が固まっちまうぜ」

「我慢するしかないの~ 雨に濡れるのもやじゃし…… そうじゃ! 惣一郎様に頂いた雨具があるではないか!」

「何だそりゃ?」

「惣一郎様に頂いた魔導具じゃ! これを羽織ると、雨に濡れんのじゃ!」

「マジか! 貸してくれよ」

「大事に扱うか?」

「ああ、任せとけ!」

ミコはエルのカッパを借りると、馬車の屋根に出る。

「すっげ~ 雨を寄せ付けねぇじゃね~か!」

「これで少しは静かになるじゃろう」

エルの計らいに感謝するガブガとガオ。

「すまんな……」

「ガオ……」






惣一郎達はドノレイ達と別れ、施設のあるサイの街に戻ろうと、荷車を走らせていた。

「惣一郎様、サーズリの話では、厄災について研究をしている者がいるそうです」

「良かった、やっぱりいたか。後で会う段取りを付けてもらってくれ」

「それが……」

「ん?」

「それが、ギドなんです」

「あら、厄災の島の施設長か! まぁ不思議はないな、もっと早く気付けば良かった。じゃ戻ったら聞いてみるか!」

「フロスト諸島の方はどうしますか?」

「そうだな~ 街の避難は済んでるんだろ?」

「ええ、幸い向こうは雨で、厄災も大人しくしているそうなんですが、その雨のせいでグラマラの煙を出す事が出来ない状態です。雨が止んだら厄災がどう出るか」

「そっか~ じゃ俺だけでも応援に飛んだ方がいいかな~」

「ベンゾウも行く!」

「そうだな、じゃ弁慶! みんなと島に戻っててくれるか? 俺とベンゾウは、先にフロスト諸島に向かうよ!」

「わかった…… 旦那様、気をつけてな!」

「ああ、何かあればセシル、コールで連絡してくれ」

「はい!」

惣一郎はベンゾウを理喪棍に乗せると、先にサイの町へと飛んで行った。

「良かったのですか? 弁慶さん」

「ああ…… 一緒に行きたいが、飛ぶのはな……」






しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...