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十五章
十五話 【虫人間】
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「なぁ、ビルゲン。厄災がグラサーナを狙う理由ってなんだと思う?」
惣一郎はひとり湯船に浸かりながら、仕切りの向こうのビルゲンに話しかける。
「ええ、僕も気になっていました。どんなに離れていてもグラサーナの居場所がわかるみたいに追いかける理由……」
ロープでぐるぐる巻きにされたビルゲンが真顔で答える。
夜、みんなが寝静まった後、ひとり風呂に入る惣一郎に気付いたビルゲンが、服を脱ぎ出した結果だ。
金色の厄災に姿を変えたグラサーナが、厄災に追いかけられ、逃げる理由。
この広い森で、グラサーナを見つけられればいいが……
厄災がいれば後を追い、見つけられるかも知れないが、先を越され殺されたら厄災の行動が読めなくなる。
なんとしても先に見つけねば、数多く散らばった厄災が集まるチャンスは、もう無いだろう。
ん? 厄災に姿を変えた……
あれ? じゃ夜は動かないんじゃ……
惣一郎は風呂を出て、すぐにみんなを起こす!
「すまん、考えが足らなかった! 捕まえるチャンスは夜だ! 急ぐぞ」
起きたベンゾウと弁慶、ビルゲンの視線が惣一郎の惣一郎に注がれる。
「いや~ん♡ って、やってる場合か! 急げ!」
惣一郎は服を着ると理喪棍を掲げ、幻腕を出して両手で握り集中する!
「なっ! なんだその手は!」
「し~!」
サーチ! ダメか…… 反応が無い。
大分広範囲で探したが、サーチが届かないさらに奥か?
待てよ、西南の方角には魔獣の反応が少ないぞ!
惣一郎はテントの外に出て舟を出す!
「クロ、留守番を頼む、みんなは舟に!」
「えっ? 舟に?」
「いいから、いいから」
舟に乗ると理喪棍を握るベンゾウと弁慶。
「ビルゲンも杖を掴め、行くぞ!」
銀の舟が浮かび、西南へ飛び立つ。
勢いよく飛ぶ舟に、ビルゲンは何が起きてるのか理解が追いつかないでいた。
魔獣の反応が少ない場所へ降りると、またサーチを唱える。
もう魔力を温存してる場合では無いな!
だが、頭の悪腫騒ぎで魔力切れの頭痛と勘違いして、気にしている惣一郎だが、リミッターが無くなった今の惣一郎は、無限に近い魔力を持っている事に気付いていなかった。
「いた! 舟に乗れ!」
訳も分からず、また空を飛ぶビルゲン。
「はははは~ 空を飛んでおる~」
やや壊れかけていた。
更に森の奥へ飛ぶ舟は、しばらく西へ進むと上空で止まる!
「いた! 下だ、いいか逃すなよ!」
ビルゲンがライトの魔法を唱える。
地面に降り、大木の根元で丸まっている金色の厄災を取り囲む!
「こ、これが、グラサーナなの?」
周りには、食い散らかされた魔獣の死骸が散乱している。
惣一郎は、大型犬用の檻を購入し地面に置く。
グラサーナは、まだ丸くなっている。
「あれ? このまま運べそうか?」
惣一郎が近づくと、厄災が起き、惣一郎達を見て大きな声を上げる!
「ガゲガーーーー!」
立ち上がるグラサーナは、人と厄災が混ざった化け物だった。
すぐさま、惣一郎の鉄球が上から襲う!
だが奴の死角は視界の中だった!
簡単に避けられ、額の触覚がカタカタと音を鳴らす。
弁慶のフルスイング!
それを振り向きもせず、片手で受け止めるグラサーナ!
だが厄災は、受け止めた肘に違和感を感じ顔を向ける。
掴まれた侃護斧は、動かない。
そこに閃光が潜り込んで、一閃!
侃護斧を掴んだ肘で大きな火花を見せると、掴んでいた手を離し「イガーーー!」っと吠える!
惣一郎のククリ刀が4つ、オレンジに色を変え、高い音を響かせ飛び立つ!
奴の両足で火花を光らせ弾かれるが、グラサーナも膝を折り地面に突く!
「ギーーーー!」
腰から生えている両腕が、地面を叩く様に飛び跳ねる!
が、上から赤い弁慶がタイミングを合わせ、侃護斧を打ち下ろす!
虫の様な小さな羽を広げ、軌道を変えるが、侃護斧が肩を捉え、地面に叩き付ける!
左腕の一本が肩から黄色い体液を出し、千切れ飛ぶ。
「イガアーーーーー!」
すぐさま、起きあがろうするグラサーナ。
黒いオーラを両手に纏った、ベンゾウの残像が横切ると、立ちあがろうと前に出された右足を切り落とす。
「イガイーーーー!」
「待て! お前……」
惣一郎が攻撃を止める!
「お前、意識が残ってるのか!」
2本の手足を失った虫人間が、残った4本の手足で地面に四足獣の様に、起き上がる。
羽を時折、ビビビっと鳴らし、触覚が動く。
「ゴゴセーーー!」
3人掛りのイジメの様な戦いは、妙な方向へ進んでいく。
背後には赤い弁慶が、ツノを伸ばし、侃護斧を振り上げ、いつでも動ける様に構えている。
横にも、メラメラと黒いオーラを纏う銀髪の少女が、目を光らせていた。
「殺せって言ってるのか!」
カタカタ触覚が鳴る。
「厄災が、お前を追いかける理由はなんだ!」
「グウーー!」
「ぐー? 食うか! 厄災はお前を食うために追いかけてるのか!」
「ゴゴセーー!」
っと厄災が、惣一郎に襲い掛かる!
「待っ……」
グラサーナの右手が惣一郎に届く前に、弁慶の一撃が打ち込まれ、くの字に地面に大きな窪みを作る。
右側にいたベンゾウは、左側で背を向けていた。
グラサーナの伸ばした右腕が、落ちる。
カタカタ「ゴゴ……セ」
「ああ、ひと仕事してからな……」
なんとも後味の悪い、戦いであった。
ビルゲンは、その後ろで、
「何も出来なかった……」
っと呟く。
惣一郎はひとり湯船に浸かりながら、仕切りの向こうのビルゲンに話しかける。
「ええ、僕も気になっていました。どんなに離れていてもグラサーナの居場所がわかるみたいに追いかける理由……」
ロープでぐるぐる巻きにされたビルゲンが真顔で答える。
夜、みんなが寝静まった後、ひとり風呂に入る惣一郎に気付いたビルゲンが、服を脱ぎ出した結果だ。
金色の厄災に姿を変えたグラサーナが、厄災に追いかけられ、逃げる理由。
この広い森で、グラサーナを見つけられればいいが……
厄災がいれば後を追い、見つけられるかも知れないが、先を越され殺されたら厄災の行動が読めなくなる。
なんとしても先に見つけねば、数多く散らばった厄災が集まるチャンスは、もう無いだろう。
ん? 厄災に姿を変えた……
あれ? じゃ夜は動かないんじゃ……
惣一郎は風呂を出て、すぐにみんなを起こす!
「すまん、考えが足らなかった! 捕まえるチャンスは夜だ! 急ぐぞ」
起きたベンゾウと弁慶、ビルゲンの視線が惣一郎の惣一郎に注がれる。
「いや~ん♡ って、やってる場合か! 急げ!」
惣一郎は服を着ると理喪棍を掲げ、幻腕を出して両手で握り集中する!
「なっ! なんだその手は!」
「し~!」
サーチ! ダメか…… 反応が無い。
大分広範囲で探したが、サーチが届かないさらに奥か?
待てよ、西南の方角には魔獣の反応が少ないぞ!
惣一郎はテントの外に出て舟を出す!
「クロ、留守番を頼む、みんなは舟に!」
「えっ? 舟に?」
「いいから、いいから」
舟に乗ると理喪棍を握るベンゾウと弁慶。
「ビルゲンも杖を掴め、行くぞ!」
銀の舟が浮かび、西南へ飛び立つ。
勢いよく飛ぶ舟に、ビルゲンは何が起きてるのか理解が追いつかないでいた。
魔獣の反応が少ない場所へ降りると、またサーチを唱える。
もう魔力を温存してる場合では無いな!
だが、頭の悪腫騒ぎで魔力切れの頭痛と勘違いして、気にしている惣一郎だが、リミッターが無くなった今の惣一郎は、無限に近い魔力を持っている事に気付いていなかった。
「いた! 舟に乗れ!」
訳も分からず、また空を飛ぶビルゲン。
「はははは~ 空を飛んでおる~」
やや壊れかけていた。
更に森の奥へ飛ぶ舟は、しばらく西へ進むと上空で止まる!
「いた! 下だ、いいか逃すなよ!」
ビルゲンがライトの魔法を唱える。
地面に降り、大木の根元で丸まっている金色の厄災を取り囲む!
「こ、これが、グラサーナなの?」
周りには、食い散らかされた魔獣の死骸が散乱している。
惣一郎は、大型犬用の檻を購入し地面に置く。
グラサーナは、まだ丸くなっている。
「あれ? このまま運べそうか?」
惣一郎が近づくと、厄災が起き、惣一郎達を見て大きな声を上げる!
「ガゲガーーーー!」
立ち上がるグラサーナは、人と厄災が混ざった化け物だった。
すぐさま、惣一郎の鉄球が上から襲う!
だが奴の死角は視界の中だった!
簡単に避けられ、額の触覚がカタカタと音を鳴らす。
弁慶のフルスイング!
それを振り向きもせず、片手で受け止めるグラサーナ!
だが厄災は、受け止めた肘に違和感を感じ顔を向ける。
掴まれた侃護斧は、動かない。
そこに閃光が潜り込んで、一閃!
侃護斧を掴んだ肘で大きな火花を見せると、掴んでいた手を離し「イガーーー!」っと吠える!
惣一郎のククリ刀が4つ、オレンジに色を変え、高い音を響かせ飛び立つ!
奴の両足で火花を光らせ弾かれるが、グラサーナも膝を折り地面に突く!
「ギーーーー!」
腰から生えている両腕が、地面を叩く様に飛び跳ねる!
が、上から赤い弁慶がタイミングを合わせ、侃護斧を打ち下ろす!
虫の様な小さな羽を広げ、軌道を変えるが、侃護斧が肩を捉え、地面に叩き付ける!
左腕の一本が肩から黄色い体液を出し、千切れ飛ぶ。
「イガアーーーーー!」
すぐさま、起きあがろうするグラサーナ。
黒いオーラを両手に纏った、ベンゾウの残像が横切ると、立ちあがろうと前に出された右足を切り落とす。
「イガイーーーー!」
「待て! お前……」
惣一郎が攻撃を止める!
「お前、意識が残ってるのか!」
2本の手足を失った虫人間が、残った4本の手足で地面に四足獣の様に、起き上がる。
羽を時折、ビビビっと鳴らし、触覚が動く。
「ゴゴセーーー!」
3人掛りのイジメの様な戦いは、妙な方向へ進んでいく。
背後には赤い弁慶が、ツノを伸ばし、侃護斧を振り上げ、いつでも動ける様に構えている。
横にも、メラメラと黒いオーラを纏う銀髪の少女が、目を光らせていた。
「殺せって言ってるのか!」
カタカタ触覚が鳴る。
「厄災が、お前を追いかける理由はなんだ!」
「グウーー!」
「ぐー? 食うか! 厄災はお前を食うために追いかけてるのか!」
「ゴゴセーー!」
っと厄災が、惣一郎に襲い掛かる!
「待っ……」
グラサーナの右手が惣一郎に届く前に、弁慶の一撃が打ち込まれ、くの字に地面に大きな窪みを作る。
右側にいたベンゾウは、左側で背を向けていた。
グラサーナの伸ばした右腕が、落ちる。
カタカタ「ゴゴ……セ」
「ああ、ひと仕事してからな……」
なんとも後味の悪い、戦いであった。
ビルゲンは、その後ろで、
「何も出来なかった……」
っと呟く。
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