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十五章
十話 【備えあれば憂いなし】
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雨で煙る様な静かな町を、惣一郎達は子供用のカッパを着たふたりに振り回されていた。
「次こっち!」
「こっちだよ!」
こどもの案内をあてにした惣一郎達は、同じ所を回って元の場所に出る。
「あの…… ギルドの場所、本当に知ってるのですか?」
「「 うん! こっち! 」」
「さっき行っただろ、そっちは!」
「埒が明きませんな……」
「もうほっとこうぜ、子供なんて」
「そうも行くまい……」
空も暗くなって来てるし、このままって訳にはいかんな。
「なぁ、空も暗くなって来てるし、そろそろちゃんと教えてくれないか?」
「…………ココ」
子供達は、目の前の大きな壁を指差して答える。
どうやらギルドの周りをグルグル回っていた様だ。
「あ、ありがとう……」
ホッとして中に入って行くみんな。
壁の中はギルドの中庭だろう、芝生を囲む様に倉庫などが、いくつか並んでいた。
疲れた……
早速テントを出し、ゴリラング・ログ用にも別に出す。
皆疲れてる様だった。
「食事が出来たら呼ぶよ…… あれ? あの子達は?」
見渡しても、テントの中にもいなかった。
「どこ行った? クロ!」
だがクロは悲しそうに目を逸らす。
「ご主人様、この雨じゃ匂いは辿れないよ」
なるほど。
「隠れ家にでも戻ったのか、また現れるといいが……」
いなくなった子供を気にするも、疲れたみんなはテントに入って行く。
惣一郎もテントに入り、サーチを唱える。
町全体を見渡す……だが、子供の反応は何処にもなかった。
うっ!
惣一郎は、また頭痛に襲われる。
おかしい、今日はそんなに魔法使ってないぞ!
万力でこめかみを締め付ける様な痛み。
膝を突く惣一郎。
夕方の明るさも、心配するみんなの声も、頭痛に響いて、気が遠くなる……
「「 ご主人様! 旦那様! 」」
………く……くる、しい……
目を覚ます惣一郎は、裸のベンゾウと弁慶にベッドで挟まれていた。
「旦那様、起きたか」
「ご主人様、また寒いってうなされてたよ」
セシルは、違うベッドで寝ていた。
「またか…… 魔力切れじゃなかった様だな」
前回北で、ベンゾウと厄災を倒した時と同じく、魔力切れが原因では無かったのだろうか……
「どの位寝てた」
「まだ夜中だよ、夕飯はセシルが作ってくれたの、ツナマヨ達も心配してたよ」
ベンゾウもホッとしたのか、眠そうだった。
惣一郎の寝汗でテカル、裸のふたり。
クリーンをかけて、お礼を言う。
頭痛は来ない。
一体何が起きてるのだろうか……
しばらく考えていると、外が薄っすら明るくなる。
寝付けなかった惣一郎は、ベッドを出てテントを出ると、雨はまだ降っていた。
厄災が動かないのは助かるが、雨ばかりだと気が滅入る。
「惣一郎様」
「おはようセシル」
「もう大丈夫なのですか?」
「ああ、あの頭痛が嘘の様にスッキリしてるよ」
「惣一郎様、その事でお話が……」
真剣な表情のセシル。
「惣一郎様、私が聖女と呼ばれた理由に、病気や軽い怪我を治す[ケファー]と言う魔法があります。これは治すと言っても、病気や怪我の状態を視て、その人の回復力を上げると言う、聖女にのみ伝わる魔法です」
「なるほど、本人の治癒力を上げる魔法だったのか」
「はい、倒れた惣一郎様にも、ケファーをかけました。視えたのは、頭の中にある大きな影です」
「はぁ?」
「魔力過多による物でしょう悪腫は、私の回復魔法では治癒する事が出来ないのです」
「ちょ、まって、頭の中に悪腫が出来たって言うのか? 魔力がでかくなったせいで?」
「ええ…… 魔力を多く使えば使うほど、悪腫は大きくなって行くでしょう……」
流石に言葉を失う、惣一郎だった。
このタイミングで、色々あり過ぎる……
「惣一郎様、お体の為にも、どうか魔法の使用をお控え下さい」
「旦那様……」
「弁慶! 聞いてたのか?」
「ああ、ベンゾウ殿も……」
「モグモグ、ご主人様! モグモグ」
朝から何食ってるんだ……
「ベンゾウ殿! いくらなんでも」
「ゴクン、ご主人様、大丈夫だよ!」
「大丈夫?」
「うん、薬持ってるじゃん!」
「あっ! つか、服を着ろ!」
「次こっち!」
「こっちだよ!」
こどもの案内をあてにした惣一郎達は、同じ所を回って元の場所に出る。
「あの…… ギルドの場所、本当に知ってるのですか?」
「「 うん! こっち! 」」
「さっき行っただろ、そっちは!」
「埒が明きませんな……」
「もうほっとこうぜ、子供なんて」
「そうも行くまい……」
空も暗くなって来てるし、このままって訳にはいかんな。
「なぁ、空も暗くなって来てるし、そろそろちゃんと教えてくれないか?」
「…………ココ」
子供達は、目の前の大きな壁を指差して答える。
どうやらギルドの周りをグルグル回っていた様だ。
「あ、ありがとう……」
ホッとして中に入って行くみんな。
壁の中はギルドの中庭だろう、芝生を囲む様に倉庫などが、いくつか並んでいた。
疲れた……
早速テントを出し、ゴリラング・ログ用にも別に出す。
皆疲れてる様だった。
「食事が出来たら呼ぶよ…… あれ? あの子達は?」
見渡しても、テントの中にもいなかった。
「どこ行った? クロ!」
だがクロは悲しそうに目を逸らす。
「ご主人様、この雨じゃ匂いは辿れないよ」
なるほど。
「隠れ家にでも戻ったのか、また現れるといいが……」
いなくなった子供を気にするも、疲れたみんなはテントに入って行く。
惣一郎もテントに入り、サーチを唱える。
町全体を見渡す……だが、子供の反応は何処にもなかった。
うっ!
惣一郎は、また頭痛に襲われる。
おかしい、今日はそんなに魔法使ってないぞ!
万力でこめかみを締め付ける様な痛み。
膝を突く惣一郎。
夕方の明るさも、心配するみんなの声も、頭痛に響いて、気が遠くなる……
「「 ご主人様! 旦那様! 」」
………く……くる、しい……
目を覚ます惣一郎は、裸のベンゾウと弁慶にベッドで挟まれていた。
「旦那様、起きたか」
「ご主人様、また寒いってうなされてたよ」
セシルは、違うベッドで寝ていた。
「またか…… 魔力切れじゃなかった様だな」
前回北で、ベンゾウと厄災を倒した時と同じく、魔力切れが原因では無かったのだろうか……
「どの位寝てた」
「まだ夜中だよ、夕飯はセシルが作ってくれたの、ツナマヨ達も心配してたよ」
ベンゾウもホッとしたのか、眠そうだった。
惣一郎の寝汗でテカル、裸のふたり。
クリーンをかけて、お礼を言う。
頭痛は来ない。
一体何が起きてるのだろうか……
しばらく考えていると、外が薄っすら明るくなる。
寝付けなかった惣一郎は、ベッドを出てテントを出ると、雨はまだ降っていた。
厄災が動かないのは助かるが、雨ばかりだと気が滅入る。
「惣一郎様」
「おはようセシル」
「もう大丈夫なのですか?」
「ああ、あの頭痛が嘘の様にスッキリしてるよ」
「惣一郎様、その事でお話が……」
真剣な表情のセシル。
「惣一郎様、私が聖女と呼ばれた理由に、病気や軽い怪我を治す[ケファー]と言う魔法があります。これは治すと言っても、病気や怪我の状態を視て、その人の回復力を上げると言う、聖女にのみ伝わる魔法です」
「なるほど、本人の治癒力を上げる魔法だったのか」
「はい、倒れた惣一郎様にも、ケファーをかけました。視えたのは、頭の中にある大きな影です」
「はぁ?」
「魔力過多による物でしょう悪腫は、私の回復魔法では治癒する事が出来ないのです」
「ちょ、まって、頭の中に悪腫が出来たって言うのか? 魔力がでかくなったせいで?」
「ええ…… 魔力を多く使えば使うほど、悪腫は大きくなって行くでしょう……」
流石に言葉を失う、惣一郎だった。
このタイミングで、色々あり過ぎる……
「惣一郎様、お体の為にも、どうか魔法の使用をお控え下さい」
「旦那様……」
「弁慶! 聞いてたのか?」
「ああ、ベンゾウ殿も……」
「モグモグ、ご主人様! モグモグ」
朝から何食ってるんだ……
「ベンゾウ殿! いくらなんでも」
「ゴクン、ご主人様、大丈夫だよ!」
「大丈夫?」
「うん、薬持ってるじゃん!」
「あっ! つか、服を着ろ!」
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