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十四章

十話 【ザザロウの街】

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南へ向かう荷車は、心地よい適度な揺れが眠気を誘い、惣一郎達はウトウトと、夢と現実を行き来していた。

するとクロが急に止まり、ワンと吠える。

目を覚まして前を見る惣一郎は、進行方向を遮る様に立つ、3人の男女に気付く。

「ジビカガイライか?」

大楯を担ぐ黒い鎧の男と、弓を持った長髪のエルフの男、その真ん中で声をかけて来た、杖を持つローブの女性。

何事か理解出来ず、キョトンとする惣一郎。

「ジビカガイライかと聞いておる!」

「そうだが、何か?」

「厄災はどこだ?」

はい?

「厄災はどこだと…… 何度も言わせるな!」

「どちら様で?」

「ほぉ、知らんと言うか! 馬鹿にしおって…… 我らはザザンドの冒険者、ゴリラング・ログじゃ! この国の事は我らが解決するのじゃ! 厄災の居場所を言え! ギルドから情報を貰っているじゃろ!」

ローブ姿の若い女性が、年寄りの様な喋り方で、惣一郎達を睨む。

「北に少し行った所だが……」

「フン! 素直じゃな! 大方お主らでは無理と逃げる所なのであろう! まぁよい[ゴザ]! 団長に連絡しろ、厄災は北だ!」

そう言うと3人は、馬に乗り北に消えていった。

「あれが昨日言ってた冒険者か…… 関わりたくないな~」

まぁ、自分の故郷の危機に、蚊帳の外じゃ名の知れた冒険者じゃ面白くはないのだろう。

「良いのか旦那様、アイツらに倒した事、言わなくて?」

「居場所を聞かれただけだぞ?」

「ケラケラケラ」

惣一郎達はまた荒野をザザロウ目指し進み始める。



荒野だった地面は徐々に水分を含み、植物がちらほら見えて来る。

「ダメだ、眠い! この辺で今日は休もう!」

惣一郎はテントを出して、クロに山盛りの肉を出すとベッドに潜り込む。

「惣一郎様は、よほどお疲れなのですね」

「ああ、多分テレキシスと同時にサーチもずっと使ってたのだろう…… アタイも眠い」

ベンゾウはすでにベッドで惣一郎に抱きついて寝ており、弁慶もそこに潜り込む。

セシルはクロを見て小さな声で、

「お風呂いただきますね」

っと、ひとり風呂へ入る。



翌朝、朝食を済ませた惣一郎達は、また街を目指し進み始める。

何事もなく昼頃にザザロウに到着すると、街は避難して来ただろう人々で、外壁の外までテントが溢れていた。

街への入り口の門も行列が出来ており、中に入るのはかなり遅くなりそうであった。

荷車を仕舞い、最後尾に並ぶ惣一郎達。

セシルは到着を、サーズリにコールで知らせていた。

少しすると、列の先頭から男が走ってくる。

「ハァハァ、ジビカガイライの皆様ですね! 連絡を受けお迎えに参りました!」

ギルド職員の様で、直ぐに中に入れてくれるそうだ。

列に並ぶ人々の妬ましい視線に目を逸らし、恥ずかしそうに惣一郎は職員の後をついて行く。

「いや~ お疲れ様でした! 本当に厄災を倒してしまわれるとは、ギルド職員を代表してお礼を申し上げます! 私、この街のギルドマスターをやらせて貰ってます[シーバサキ]と言います。滞在中はなんでもお申し付け下さい!」

冒険者と言うより事務員の様な男は、門番に手を挙げると、そのまま中へ入る事が出来た。

不思議と門の中は緑が多く、外と全く違った雰囲気の街並みであった。

小川が流れ、緑豊かな田舎町といった感じの道は、中心地に行くほど家が増え、木造の家々からも大きな木が生えている。

「随分と外と雰囲気が違うんだな~」

「ええ、この街は魔石を使った工業が盛んでして、この植物などもその恩恵を受けているのです。後ほど、街をご案内致しましょう! まずは当ギルドへ」

「へぇ~ 楽しみだ!」

シーバサキの案内で街の中心地まで行くと、小さな二階建てのお店の様な建物に入る。

ギルドにしては小さいと思ったが、中から地下へ向かうと、受付が並ぶエントランスが広がっていた。

「どうぞこちらです!」

奥の扉の先は、吹き抜けの中庭になっていた。

窓がある壁で囲まれた中庭は、空が広がっており、解体場だろう小屋や、訓練所もあった。

街の中心地に随分と場所をとったギルドであった。

訓練所の横の芝生の広がる場所でシーバサキは、

「こちらでよろしいですか?」

色々情報が伝わっている様だ。

「ええ、助かります! ありがとう」

「いえいえ、何かございましたら受付へお声かけください。まずはゆっくりと休み、明日にでも街をご案内致しましょう! 今回の報酬は準備出来次第、お持ちしますので」

腰を曲げ挨拶をすると事務員の様なギルマスは、建物へ戻っていった。

お言葉に甘えテントを出し、くつろぎ出す惣一郎だった。




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