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十四章

五話 【赤鬼】

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ノイカからの情報で、おおよその事がわかった。

今度の厄災は、緑の巨大な2本の鎌を持つカマキリの様だ。

大木ほどの巨体は細く、4本の脚で立つ厄災は、時折飛んでは兵が見失うも、近くで直ぐ見つかるを繰り返しているそうだ。


「カマキリか…… 殺虫剤が見当たらないが、どう対処するかな、益虫かもしれないしな~」

「かまきり? なんですそれ? 名前があるのですか、あの厄災に?」

「まぁ、そんなもんですが、適当ですのでお気になさらずに! それよりその厄災、他の厄災を倒したとか、そんな話は聞きませんか?」

「厄災を? 聞いた事はないですが…… 被害なら発見当時、北東にあった村が襲われ、多くの村人が食べられたと聞きましたが」

害虫だったか。

「当初、軍も討伐にあたりましたが、甚大な被害を受け、監視と近隣への避難警告に徹してる始末です。惣一郎殿! どうかこの国の為に、お力をお貸し下さい」

「ええ、その為に遥々海を越えて来ました」

その惣一郎の言葉に、遥々と言う程の距離では無いと思う、リヴォイ達は苦笑いで、決して口には出さなかった。



朝食を終えると、リヴォイ達は馬を手配し、早速情報にあった東へ向かう事にする。

のんびり観光したかった惣一郎だが、被害が広がる前に倒さねばと諦め、ポートスの町を後にする事にした。

ギルドからも応援を出すとの申し出を断り、ジビカガイライの3人と1匹、それとセシルとリヴォイ達の3人で向かう。

話にあった森へは、二日はかかる。

避難が終わった[アリワの村]を通るとの事で、リヴォイ達が馬で先導し、その後ろをクロの荷車に乗った惣一郎達が追う。



荒野を砂煙を上げながら、しばらく進むと前方に、赤い何かが動く。

「クソ! 急いでる時に!」

サヴォイが馬を止め、リヴォイが、

「惣一郎殿! ザザメイトです! 迂回しましょう!」

っと叫ぶ。

「ザザメイト? 国の名前じゃないのそれ?」

こちらに気付いたのか、そのザザメイトが砂煙を上げ、向かって来る。

「この国の国旗にも描かれている、魔獣です! 素材が高額なのですが、ここは迂回し逃げましょう!」

「そうは言っても、向かって来るぞ?」

「この距離ならまだ逃げられます! 厄災の前に消耗する事もありません!」

「大丈夫だろ? 厄災討伐に向かっているのに、魔獣から逃げてどうするのよ」

「ですが!」

「まぁ、下がってて!」

荷車を降り、前に出る惣一郎が苦無を幾つも浮かすと、

「ご主人様! ベンゾウがやる!」

っと、さらに前に出るベンゾウ。

「いや、ここはアタイが!」

っと、さらに前に出る弁慶。

「喧嘩するな!」

「「 アタイが! ベンゾウが! 」」

じゃんけんしてる余裕もないか……

「じゃ弁慶! 危なくなったら直ぐ手助けに入るぞ!」

「ああ!」

「え~ ベンゾウが先に言ったのに」

「お前、溺れて助けてもらったろ! 譲ってやれよ!」

そんなやり取りを見ていたリヴォイ達は、

「あの、倒した事あるんですか?」

「いや、初めて見る魔獣だが?」

リヴォイとサヴォイは顔を見合わせるも、以前ハイオークの王を倒した惣一郎を信じようと、覚悟を決める。

「まぁ、見てろ」

巨大なザザメイトが近づくと、その全貌があらわになっていく。

サイだった。

分厚い皮膚は鎧の様に固そうな、真っ赤なツノの大きなサイが、ドスンドスンと早くは無いスピードで突進して来る。

弁慶は侃護斧を構え、筋肉が盛り上がり一回り大きく見える。

観念したリヴォイは、盾を構えセシルの前に、サヴォイも剣を構える。

攻撃が届く距離に来たサイはツノを下げ、突き上げようと弁慶に突っ込んで来る。

下から突き上げられるツノを、半歩踏み込んで、いなす弁慶は、サイの顔に横から思いっきり侃護斧を叩き込む!

鈍い音を立て、大型トラックほどの巨体が半分浮く。

白目をむいて、前足を浮かすザザメイトに、振り切った侃護斧をそのまま回転する様に、体を回し2撃目を横っ腹に叩き込む!

初撃より重い一撃は、サイの体をくの字に曲げ、あの巨体を完全に地面から浮かす!

10cm程ではあったが、完全に浮いたザザメイトは、そのまま地面を揺らす様な衝撃で倒れる。

リヴォイ達は、開いた口に気付かないほど、驚いた顔をしていた。

こちらも、赤いザザメイトに気付かなかったが、弁慶の体も赤く、蒸気のような物が漂い、陽炎を体に纏っていた。

「ふぅ~!」っと息を吐く弁慶の体が、ゆっくりと元の肌色になって体も萎んでいく。

まさに、赤鬼であった。





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