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第十一章

十九話 【待ち人来らず】

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いつの間にか勉強会になったお茶会は、賢王の遣いが食事の準備が出来たと呼びに来た事でお開きになる。

割とお腹、膨れてますが……

奥の部屋に案内され、席に座るとテーブルに料理が運ばれて来る。

質素だが、家庭的で美味そうな料理であった。

賢王も現れ、改めて礼を言われると食事が始まる。

食事を摂りながら、クオンが賢王に訪れた理由を話し始める。

「なるほど陣唱紙か。それならばナリで確かに間違い無いでしょう。すぐにでも呼んで来させましょう」

賢王からの紹介なら、変わり者のナリも素直に話を聞いてくれると、ホッと胸を撫で下ろすクオンだった。

「であれば、私の仕事はここまででしょう」と、クオンは食事を終えるとギルドに顔を出すと、エレノイと戻るそうだ。

久しぶりの故郷だろうし、後はゆっくりしてもらおう。

「ここまでの案内、助かったよ。ありがとう」

「いえ、こちらこそ貴重な体験をさせて頂きました…… 出来れば、その、下着を……」

「断る!」

残念そうなクオンはそのまま、賢王に挨拶する。

「では賢王様、夕食にお招き頂き、ありがとうございました。折角部屋をご用意頂きましたが、私はコレで……」

「そうか。惣一郎殿を連れて来てくれ其方にも感謝するぞ! ガルデラの娘よ」

頭を下げ、クオンとエレノイが帰って行った。

賢王も食事を終えると、

「惣一郎殿、ナリが来たらテントに案内させよう! 庭は滞在中自由に使ってくれて結構。他に入り用の物は無いかね?」

「いえ、十分です! 助かりました」

「では、何かあればいつでも言ってくれ」

そう言うと、部屋を出て行く賢王。

てっきり、他の王との揉め事に巻き込まれると思っていたので、肩すかしを喰らう惣一郎は、テントに戻り、ナリが来るのを待つ事にする。




しばらく待つと、外が騒がしくなる。

テントを出ると、賢王とエルフの男性が立っていた。

「惣一郎殿! 申し訳ない」

賢王が言うには、呼びに行ったがナリは居らず、家も荒らされたいる様で、すでに何日も経っているとの事。

街の隅に住むナリは、変わっており関係を持つ者もいない為、居なくなってる事に誰も気付かなかったそうだ。

家は荒らされてはいるが、争った痕跡は無く、大事な物を慌てて持って消えた様だと言う。

「他に陣唱紙について聞ける人はいませんか?」

「作り方を知るのは、ナリだけだろう」

「賢王様、もしかしたら[リーレン]なら」

「ふむ、知ってれば良いが……」

陣唱紙って便利な物が、なぜこんなに使われず知る者もいないのだろうか……

「惣一郎様、リーレンなら近くに住んでおりますので、ご希望に添えるか分かりませんが、ご案内出来ます」

「ええ、お願いします」

別に今すぐじゃなくても……

「惣一郎よ、わざわざ遠い所訪ねて来られたのに済まなかった。後はこの[ワーク]に案内させるので、何でも申し付けてくれ」

「いえいえ急に押しかけて来たのに、助かってますよ十分」

「では、惣一郎様!」

もう空は暗いのに、急に押しかけて行って大丈夫なのだろうか? 

帰って申し訳ない気持ちの惣一郎が、ワークの後を付いて行く。



星灯りに照らされた美しい空中庭園を通り、中心街だろう、まだ賑やかな店が並ぶ飲み屋街の裏手に、下に降りる階段があった。

この街は二層式の様だ。

住居が並ぶ下の階に、そのリーレンは住んでいると言う。

ワークがドアをノックすると、奥から腰を曲げた年配のエルフが現れる。

「何じゃい、こんな遅くに!」

ほら、明日でも良かったのに……

「賢王様からの申し付けで来た! 遅くに申し訳ないがって、どうせ今から飲みに行くんだろリーレン!」

「何じゃい、ワークの若造かい!」

嫌な顔をしながらも、中に入れてくれた。






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