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第十章

八話 【名前が出てこない!】

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朝、テントに戻るとベンゾウが抱きついて来る。

「ご主人様、遅い!」

先を越された弁慶が悔しそうに、

「旦那様、何か問題が?」

「いや話が長かった……」

眠い……

適当にご飯を出すと、惣一郎は食べずに横になる。

起きたのは昼過ぎだった。

ふたりも昨夜は寝ないで待っていた様で、隣で寝ていた。

起こさない様に露天風呂に入る惣一郎。

癒される……

王都まではここから馬で東に一日の距離だ。

夕方にギルドが用意する馬車で、向かう事になったんだが…… 全員乗れるのだろうか?

クロだけ走りっぱなしは可哀想だしな。



風呂を出るとベンゾウ達も起きて来たので、夕方から出かけると事情を話す。

馬車にいい思い出は無い。

ベンゾウは露骨に嫌そうな顔をする。

仕方ないでしょ!

食べるとまた吐くので、食事は控え目で! 

周りに張った布を仕舞い、露天風呂も元に戻すのがマナーらしいので、弁慶が埋めている。

テントを収納すると、少し早いがギルドへ向かう。




町は昨日ほどでは無いが、まだ慌ただしい。

そんな中、ギルドの前に人集りが出来ていた。

デカい黒塗りの馬車が止まっていた。

「デカ! 馬もデカ!」

8本足の馬だった。

なんか知ってるぞ、なんだっけな……

そこにヒロヨシーとエバンが現れた。

「惣一郎殿、よかった。呼びに行こうかと思ってた所です」

「惣一郎殿! よろしく頼む!」

「ええ、それよりなんでしたっけ? この馬」

「ん[ワカボン]ですか?」

絶対違う! 

何それ? 浴衣来た子供みたいな名前は! カッコいい馬が可哀想だわ!

「ワカボンがどうかしたのですか?」

「いえ、なんでもありません。かっこいいな~って思っただけです」

「そうですか、初めてならきっと驚きますよ!」

そのままエバンに挨拶をして、馬車に案内される。

中も広く、弁慶でもキツくなさそうだった。

コレならクロも乗れるな!

ヒロヨシーも乗り込み、御者席に職員らしき人も乗り込むと、ゆっくり動き出す。

町の注目を浴びながらイカホの街を出ると、徐々にスピードが上がる。

乗り心地は…… まぁ予想通りだった。

橋を渡ると、一気に加速する。

早い! クロと引けを取らない速さだ!

ニコニコしながら揺れる馬車の中ヒロヨシーは、

「行きますよ!」

っと天井のレバーを引く!

すると、馬車の上に大きな布が膨らみ、風を受けると馬車が軽く浮く!

ふわふわとした感じはあるが振動が無くなった!

なるほどパラシュートみたいな物か!

驚く惣一郎にヒロヨシーが、

「凄いでしょ~ ギルド自慢の高速馬車です! 王家の馬車より乗り心地が良いんですよ! 早いですし!」

確かに乗り心地はいい、揺れるのは揺れるが。

風を受け宙に浮く馬車に、ベンゾウも興奮し窓から外を見ていた。

「風の魔晶石も使っているので、揺れも大分抑えられているんですがね……」

ん? 何故に寂しそう?

「最近南方で凄い馬車が出来たとかで、この馬車も、もう時代遅れになりつつあるのが寂しくって」

そうですか……

コレはコレで良いと思うんだがね~

馬がカッコいいし!

クロの視線を受けながら、馬車は王都を目指す!





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