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第八章

十七話 【緩和の宴】

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城の中庭にテントを出させてもらう。

モモもさっきまでテントで寝ると騒いでいたが城の人に連れて行かれた。

夕飯は城で豪華な料理を頂いたので、のんびり風呂にでも浸かりたいと湯を沸かしている。

城の豪華な風呂を勧められたが、庶民の惣一郎にはこのぐらいの贅沢が丁度いい。

ベンゾウには経験だからとモモと豪華な風呂に入るよう勧めたが、ベンゾウもこっちがいいとの事。

のんびり足を伸ばし、肩まで浸かる至極の時をベンゾウと過ごす。

「ベンゾウさん、また厄災だってよ」

「またシューってします? ご主人様」

「どうだろうな~」



風呂を出たらお決まりのアイスとビール!

熱った体にビールの最初の喉越しが、

「プハー! たまらん!」

なんだかビールを飲んでたら口が寂しくなったので、軽くつまむ物を……

中庭にバーベキューセットを出して、イカとサザエを焼き始める。醤油の暴力的な匂いが辺りに漂い始め、イカは生姜醤油で千切って食べる!

美味い! 

ベンゾウも串に刺して姿焼を齧り付く。

グツグツ言い出したサザエにも醤油を垂らすと、匂いに釣られ城の人が見に来る。

冷えたビールを渡して、追加でイカを焼く!

「なんだこのエールは、冷たくてすっきりして、こんなの飲んだ事ないぞ!」

すると宰相さんと財務大臣も不思議そうに顔を出すので、飲んできな!

イカを片手に大喜び!

人が集まり出してお祭り騒ぎ! 気がつきゃモモも王様もいる! 

バーベキューセットも今じゃ5台がフル稼働! 

女中さんが手伝ってくれて、料理も増え、城からも料理が運ばれ、テーブル席もいつの間にか出来ている。

惣一郎は、醤油の偉大さを改めて知る。

王様って、毒味された物しか口にしないんじゃないのね……

厄災の討伐を惣一郎が引き受けた事で、安心から緊張の糸が切れたのか、急な宴は遅くまで続いた。





翌朝目を覚ますと、テントの周りをウロウロするメイドがいた。

出て声を掛けると「何処から?」っと驚き不思議そうにしていた。

テントが見えなかった様だ……

朝食の準備が出来たそうで、呼びに来てくれたメイドに案内され、食べに出向くと、二日酔いで他のみんなは欠席していた。

今は情報が入るまでする事が無い惣一郎は、街をぶらつく事にする。

厄災の事を知る由も無いこの街は、賑やかに活気に満ちていた。

すると広場に人集りが出来ており、その中に頭一つ、いや二つ飛び出た大きな人影が見えた。

騎士の人達と揉めていた様で、数人の見た事のある騎士が、倒れうずくまっていた。

昨夜の宴会にいた城の騎士だった。

近づくと、大きな人影は2mを優に超す、筋肉質な女性だった。

黒い皮のズボンに腰に毛皮を巻き武器を下げ、上半身は黒いビキニに肩を隠すだけの上着、長く白い髪に、額に見える突起はツノだろうか、20代の冒険者風の女性だった。

「どうしたんですか?」

倒れた騎士に声を掛けると、恥ずかしそうに、

「惣一郎殿! いえ…… 街をうろつく彼女が不審に思え、声を掛けたら何故か口論になってしまい、お恥ずかしい……」

「違う…… 決め付けていた」

「な、何を言う! 鬼人が!」

「まぁまぁ、落ち着いて!」

「お前も、仲間か?」

「ん? まぁそうなるのか?」

すると鬼人が惣一郎に殴り掛かる!が、拳は惣一郎の手前で止まる。

いつの間にか間に入ったベンゾウの小刀が、鬼人の正面から首元に光っていた。

「は、はやい!」

「取り敢えず落ち着いて話しませんか?」

額に汗が見える鬼人の女は、観念して拳を下ろす。

場所を変え、人の少ない木陰で座る鬼人は、座っていても大きかった。

騎士の人達は居ると揉めそうなので、後は任せて帰ってもらい、惣一郎が話を聞く。

「冒険者?」

「……ああ」

「依頼で?」

「……いや」

………

………

会話が続かない子だったが、鬼人の娘はベンゾウが気になる様で、

「あの娘は…… お前の牙か?」

「牙? あぁ、違う仲間だよ」

「奴隷だろ」

「仲間だ」

「強いな……」

「ああ、最強だ!」

クロと離れて遊んでるベンゾウを見ながら、少し会話が続いた。

「鬼人って種族なのか?」

「……知らんのか?」

「ああ、オーガなら倒したが、鬼人は初めてだ」

「オーガを?」

「あぁ、4本腕の!」

………

「鬼人ではない[ベルセルク]だ」

聞いた事ある名前だな、確か狂戦士とかそんな…… 似た様なもんじゃね?

「俺は惣一郎だ」

「なっ! ジビカガイライか!」

急に目の色を変え立ち上がる鬼人…… じゃ無いベルセルクだった。

あら、ご存じで……





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