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第四章

四十二話 【ただいま】

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荷車でサクッと行こう!っと思っていた惣一郎だが、一気に乗り込んで一度に大量の蜂を相手にするより、数を減らしていった方がいいのか?っと考えを改め歩きながら、なるべく数を減らして行く事にする。

ベンゾウとスワロにも殺虫剤を渡し、使い方を教える。

スワロはまだ、惣一郎のやった事が信じられなかった。

逆にベンゾウは、疑う素振りも心配する素振りも見せず、惣一郎を信じ切っていた。

歩きながらシュー!っとスプレーしてはバタバタ落ちる蜂に、スワロはあの時に惣一郎がいなかった事を悔やみ、複雑な心境であった。

この辺りの生き物は全て蜂の餌食になった様で、スライム一匹いなかった。

「逆に蜂だけ注意すれば良いから、楽だな!」

っと呑気な事を言い出す惣一郎。

十匹以上が同時に襲って来ても、両手にスプレーを持ったベンゾウが、素早くシュー。

いきなり後ろから来てもスワロがシュー!っと、この国が傾く一大事を、散歩の様に惣一郎が解決に向って行く。

スワロの複雑な心境に同情を覚える。

すでに百匹以上駆除して来たが、やはり巣に近づくほど蜂の数は増えていく。

だが、ただそれだけだった。

スプレー缶も、もう30本以上使っている。

もっと少なくても行けるだろうが、ベンゾウがおもしろがって両手で吹きまくり、スワロが敵討ちと必要以上に使いまくる。 

ま、億万長者の惣一郎には、ちょっと贅沢な使い方ぐらいの事でしかない。

旧マイズの村が見えて来ると、スワロが2年ぶりの帰郷に涙を流し始める。

数も増えて来たのでクロに荷車を引かせ、荷台に大量のスプレーを出す。

荷車を囲む様に、3人でスプレーを吹きまくりながら進み、とうとうマイズの村の中心部、神木に到着する。

大音量の羽音に、神木には巨大なスズメバチの巣が聳え立っていた。

穴から危険信号を受けた蜂が次々に出て来ては、スプレーで落ちて行く。

だが立ち止まっていると、死骸が山と積み上がって行く。

惣一郎はそれを収納しながら前に進み、ライターを出して火をつけ、スプレーに引火させると火炎放射器の様に巣を燃やし始める!

ゴオオオっと燃え広がり、パチパチと音を立て、巣は火に包まれる。

蜂の猛追は徐々に勢いを無くして、巣の中の幼虫も、うねりながら燃えて行く。

スワロは泣きながら燃える蜂の巣を眺めていた。

「終わったな……」

惣一郎の言葉に、スワロは巣から目を離さずコクンと頷く。

完全に焼け落ちた巣を確認すると、一晩はここで戻って来る蜂がいないか、警戒にあたる事にする。

死骸を見ながら、惣一郎はでかいだけで脅威となる虫と、それを簡単に倒せる元の世界の殺虫剤に違和感を覚えるも、その答えを出せないでいた。

焚火を囲み、膝で寝るベンゾウと、まだ過去との決別が終わらないスワロ。

惣一郎はこれからの事を考えていた。

しばらくすると、スワロが吹っ切れた顔で惣一郎の隣に座る。

惣一郎が何となしにスワロに出た言葉が「おかえり」だった。

スワロは「ただいま」と微笑む。

スワロの旅が終わった瞬間だった。





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