67 / 409
第四章
三十六話 【前を向く惣一郎!】
しおりを挟む
睡眠不足もあってか、陽もまだ高い時間から惣一郎は寝ていた。
ベンゾウとスワロは、あれから言葉を発しない惣一郎の寝顔を、心配そうに見ていた。
起きてからも、惣一郎はひどく落ち込んでいた。
自分の都合で利益しか考えず、不用意に渡してしまった違う世界の杖で、少女が人生を呪うほどの傷を負ったのだ。
派生的にリアカーを売ってしまった、ジュグルータさんをも心配していた。
ベンゾウとスワロも、クロさえ例外なく、惣一郎の都合で影響を受けている。
盗賊の件にしても、感情的にふたりに人殺しをさせた事実は変わらないのだ……
前の世界で責任から逃げ、この世界では自由に生きる、そう思っていたが大間違いで、自由には責任がつきまとう。
それも他人の人生を背負い込まなければいけない程の重責だ。
俺は馬鹿だった……
何も手に付かず、ただソファーで落ち込んでいると。
隣にちょこんと座るベンゾウ。
「ご主人様、ベンゾウね、今がすごく幸せ」
何を知って、何を理解しての言葉かわからないが、惣一郎の中から込み上げる感情が、涙になって溢れ出す。
年下の少女の胸で声を殺しながら、惣一郎は泣いていた。
少女の手は優しく包んでくれていた。
落ち着きを取り戻し、スワロの淹れてくれたお茶を飲む。
スワロもまた惣一郎に、優しい言葉をかけ抱きつきたかったが、ベンゾウに先を越され我慢していたのだった。
惣一郎にはちゃんと伝わっていた。
ワン! (ふたりにここまで気を遣わせ、巻き込んだんだ! 落ち込んでる場合じゃないだろう、惣一郎!)
そんなクロの言葉は、伝わっていなかった……
気を取り直し少しスッキリしたので、今度は美味い物だと食事の準備を始める。
コンコン!
倉庫の扉を叩く音にスワロが開けると、そこにはギルマスが立っていた。
「少しいいだろうか?」と、ギルマスは惣一郎を外へ連れ出す。
少し離れた建物の上に、街を見晴らす火の見やぐらの様なものが建っており、そこに案内するとギルマスは惣一郎にゆっくりと話し始める。
今回の事、この国の事、これからの事、そして惣一郎の事。
ピノは無事、回復に向かっているそうだった。
今回の様な事に惣一郎には耐性がないと思ったのだろう、ギルマスは今、各地で起きている惨状を、厄災がもたらした悲劇を、淡々と語ってくれた。
すっかり陽も落ちて来た頃、ギルマスは今回の盗賊には、懸賞金が出る事を話の最後に帰って行った。
街を見渡し、惣一郎が守ったものを見せたかったギルマスの意図を理解して、倉庫に戻る。
倉庫に戻ると、惨状が待っていた。
出かけている間にベンゾウとスワロが、惣一郎の為に食事を作ろうとしたのだろう。
ベッドとテントの一部が燃え焦げ、爆発しただろうカセットコンロが数台と鍋などが散乱し、それを消そうと樽の水で辺りはびしょびしょに濡れていた……
まだ何も言ってないのに、そこには耳を畳む少女と、汚れたダークエルフが並んで正座していた。
そしてここには、泣いてた男がもう笑っていた。
ベンゾウとスワロは、あれから言葉を発しない惣一郎の寝顔を、心配そうに見ていた。
起きてからも、惣一郎はひどく落ち込んでいた。
自分の都合で利益しか考えず、不用意に渡してしまった違う世界の杖で、少女が人生を呪うほどの傷を負ったのだ。
派生的にリアカーを売ってしまった、ジュグルータさんをも心配していた。
ベンゾウとスワロも、クロさえ例外なく、惣一郎の都合で影響を受けている。
盗賊の件にしても、感情的にふたりに人殺しをさせた事実は変わらないのだ……
前の世界で責任から逃げ、この世界では自由に生きる、そう思っていたが大間違いで、自由には責任がつきまとう。
それも他人の人生を背負い込まなければいけない程の重責だ。
俺は馬鹿だった……
何も手に付かず、ただソファーで落ち込んでいると。
隣にちょこんと座るベンゾウ。
「ご主人様、ベンゾウね、今がすごく幸せ」
何を知って、何を理解しての言葉かわからないが、惣一郎の中から込み上げる感情が、涙になって溢れ出す。
年下の少女の胸で声を殺しながら、惣一郎は泣いていた。
少女の手は優しく包んでくれていた。
落ち着きを取り戻し、スワロの淹れてくれたお茶を飲む。
スワロもまた惣一郎に、優しい言葉をかけ抱きつきたかったが、ベンゾウに先を越され我慢していたのだった。
惣一郎にはちゃんと伝わっていた。
ワン! (ふたりにここまで気を遣わせ、巻き込んだんだ! 落ち込んでる場合じゃないだろう、惣一郎!)
そんなクロの言葉は、伝わっていなかった……
気を取り直し少しスッキリしたので、今度は美味い物だと食事の準備を始める。
コンコン!
倉庫の扉を叩く音にスワロが開けると、そこにはギルマスが立っていた。
「少しいいだろうか?」と、ギルマスは惣一郎を外へ連れ出す。
少し離れた建物の上に、街を見晴らす火の見やぐらの様なものが建っており、そこに案内するとギルマスは惣一郎にゆっくりと話し始める。
今回の事、この国の事、これからの事、そして惣一郎の事。
ピノは無事、回復に向かっているそうだった。
今回の様な事に惣一郎には耐性がないと思ったのだろう、ギルマスは今、各地で起きている惨状を、厄災がもたらした悲劇を、淡々と語ってくれた。
すっかり陽も落ちて来た頃、ギルマスは今回の盗賊には、懸賞金が出る事を話の最後に帰って行った。
街を見渡し、惣一郎が守ったものを見せたかったギルマスの意図を理解して、倉庫に戻る。
倉庫に戻ると、惨状が待っていた。
出かけている間にベンゾウとスワロが、惣一郎の為に食事を作ろうとしたのだろう。
ベッドとテントの一部が燃え焦げ、爆発しただろうカセットコンロが数台と鍋などが散乱し、それを消そうと樽の水で辺りはびしょびしょに濡れていた……
まだ何も言ってないのに、そこには耳を畳む少女と、汚れたダークエルフが並んで正座していた。
そしてここには、泣いてた男がもう笑っていた。
27
お気に入りに追加
1,868
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる