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第四章

二十話 【不安解消!】

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スライムは上手く行かなかったが、トイレ自体は大好評であった。

あの匂いの逆流しない水洗の仕組みだけで、大儲け間違いないとスワロが興奮していた。

白いグルピーも手に入ったし、儲け話に興味はなかった。

このままで十分、スローライフを満喫しています。




翌朝、朝食を済ませテントとトイレを収納し、旅に戻る。

林の中の登り坂を進んでいくと、木々の間隔が徐々に広くなり、岩山へと景色が変わって行く。

ゴルドー山に入った様だ。

道はあるが、ゴツゴツと大きめの石が多く歩きづらそうだが、リアカーは多少の揺れでも快適であった。

クロは平気だったが、ベンゾウがリアカーに乗り込む。

四足歩行で平然と歩くクロに、後でご褒美をあげよう。



今日も暑くなると思っていたが、標高が高いからか涼しかった。

ここまで来ると植物が姿を消して、切り立つ岩肌の崖を石だらけの道が続く。

空には大きな鳥が…… 鳥?

バーンアソーの群れだ!

無数の飛竜が上空を旋回している!

盾を出す惣一郎に、スワロが「私に任せて下さい」っと、イケメン発言。

クロが足を止めると、スワロが亜流美を構える。

急降下し出す数匹に、青い炎槍が次々と刺さり、燃えながら落ちてゆく。

まだ息があるバーンアソーは、ベンゾウが首を落とす。

クロは口を開けたまま、驚いている。

六匹目を倒した所で、上空の残りが逃げて行く。

随分と遠くまで、魔法を飛ばせる様になったドヤ顔のスワロ。

二匹が崖の下に落ちたが、四匹を収納し、何もなかった様に旅に戻る。

もうソロで、厄災倒せんじゃないか?

惣一郎はふたりが、強くなりすぎてるのを問題視していたが、簡単に解決した。

リアカーの荷台で、のんびりと3人は世間話に華を咲かせていた。

その会話の中で、以前ケネブをレイトールまで送った時の事が話に出た。

レイトールまでの道中、どうやらふたりは徐々に力が弱まるのを、個々に感じていたそうだ。

スワロは、手に入れた力を失う感覚に恐怖を感じ、ベンゾウは力が弱まる事で主人を守れなくなる不安を覚えていたそうだ。

思い当たるのはケネブの手前、食事は異世界の物にしたからだ。

たった数日、こちらの普通の食事を取っただけで、いや惣一郎の料理を食べなかっただけで力が弱まったなら、ふたりはいつでも普通に戻れるんだと安心した惣一郎であった。




蛇行する崖の細い道を進んで行くと、惣一郎達は肌寒さを感じて来た。

ベンゾウは特に寒そうで、惣一郎にくっついて来る。

それもそのはず、道脇の日陰にチラホラと、雪が見え始めていた。

だいぶ高くまで登って来たのだろう。

惣一郎はネットショップスキルで防寒具を購入すると、ベンゾウとスワロに着させる。

標高も高いからか、息が上がる惣一郎はついでに酸素缶も買い、口に当て酸素を吸う。

少し開けて来た道で休む事にする為、いつも通り惣一郎はテントとトイレを出す。

防寒具ですっかり元気になったベンゾウは、クロと雪で遊んでいた。

今夜はテントの中も冷える事を想定し、惣一郎はネットショップスキルで薪とキャンプ用の暖炉を購入する。

元々テントには、暖炉の煙突をさす所が備えられていたので、スワロと組み立て薪に火をつける。

ネットショップで買えない物は無いんじゃないかと思うが、ガソリンや灯油は売ってない。

ソーラーパネルは売っているので、電化製品も使えるのだが、惣一郎はこれを何故か良しとしなかった。

今日は頑張ったクロに、缶詰の高級ドックフードを数缶まとめて皿に山積みにする。

よほど美味いのか、夢中で食べていた。

夕食は温まる様にお鍋にした。

カニも入れての豪華な鍋は、結局どれもポン酢の味だったが、ご飯が進む!

スワロは、特に鍋の中のしらたきが気に入ったらしい。

ベンゾウは鶏肉、豚肉を交互に食っていた。

野菜も食べようね。

人目も無いしせっかくなので、風呂桶を外に出して雪見風呂と洒落込む。

ビールと枝豆を用意して、のんびり浸かりながら惣一郎は雪景色を楽しむ。

案の定、ふたりも裸で乱入して来るが、もう動揺しません。

ふたりにも飲み物を出す、大人な惣一郎。





早朝、山からの夜明けを見たかった惣一郎は、早起きして外でコーヒーを楽しんでいた。

お供はクロだけで、ふたりはまだ夢の中。

犬のおやつをクロにあげながら、朝日を眺めている。

高い山の上から見渡す世界は、素晴らしく綺麗で輝いて見えた。

大自然と澄んだ空気。

言葉を失う景色が広がっていた。


そこへ、朝早いにもかかわらず、ふたりのドワーフが歩いてコチラに向かって来る。

「こりゃたまげた、こんな所に冒険者か?」

「プレリーコウを手なずけるたぁ~ たいしたもんだ!」

惣一郎は椅子とコーヒーを出し、ふたりの訪問者を歓迎した。

話を聞くと、この山に住んでいて鉱物を採取加工しているそうだ。

ドワーフの集落が近くにあり、朝早くから新たな採掘場所を探しに来ていたそうだ。

「苦いが癖になるな、この黒いお茶は」

「ご馳走さん、この辺りは[ファルネリ]が出るから、気を付けて行きな」

「まぁ噂のゴキコロリならファルネリなんざ、相手にもならんだろうがな。ガッハハハ」

「じゃ、馳走になった、気を付けてな」

ふたりのドワーフは礼をいい、温ったまったと礼を言い、雪の中へと消えていった。

気持ちいい朝の出来事だった…… なんて?






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