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第四章
十九話 【カレーの後で…】
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率先してリアカーを引くクロの足取りは、どこか誇らしげに坂道を難なく登って行く。
誘導も、もう必要ない程なので、ベンゾウにも乗るよう声をかけるが「歩くのが好き」っと、本当元気な少女であった。
林の中を蛇行する様に登り、ゴルドー山に近付いて行く惣一郎達。
陽が真上近くに登る午後には、気温も上がり、惣一郎が上着を脱ぐ。
真っ白な毛で覆われたクロは、暑くないのかと心配するが、涼しい顔でベンゾウと並んで歩いている。
しばらく進むと道の先にオークが一匹現れ、こちらを窺っていた。
また群れじゃないだろうな?
惣一郎の心配は外れ、単独の様であった。
手に持つ長い石を巻き付けた槍を構え、こちらを威嚇すると、スワロが荷台に立ち「仕留めます」っと亜流美を構える。
ピカっと光り音もなく雷がオークに伸びると一瞬遅れて、ドッゴーンゴロゴロゴロっと大きな爆音を轟かせる。
腹に響く凄い音だった。
オークは槍を構えたまま、黒焦げになり煙をあげていた。
威力は凄いが前でベンゾウとクロが毛を逆立てて、ピリピリ放電していた。
ライトニングの魔法は強力だが、使いづらそうだ。
スワロが謝っているが、ベンゾウは電気で逆立った毛のクロを触りながら、ケラケラ笑っていた。
陽も傾き、空も赤くなって来たので、そろそろ休む事にする。
疲れを見せないクロとベンゾウ、放って置けば朝まででも歩き続けそうだ。
テントを出し中に入ると、クロは真っ直ぐマットレスの上に腰を落し、水を夢中で飲み始める。
惣一郎がテーブルに冷たい飲み物を置くと、それぞれがくつろぎ始める。
普通の旅では、味わえない快適さだ。
惣一郎は、大量の牛肉をブロックに切り分け、焼き目を付けると、野菜と一緒に圧力鍋で茹で始める。
圧力鍋が笛を吹き、テント中にいい匂いを撒き散らす。
以前作ったカレーがもうないので、新たに作っていた。
肉が柔らかく茹で上がるとそのまま寸胴鍋に移し入れ、コトコトと煮る。
人参などが柔らかくなると、数種類のルーを入れ、火を止めて放置する。
みんなの視線を感じながら、サラダなども作り出す。
別で取っておいた冷めた肉を、そのままクロにあげると、あっという間に食べてしまった。
尻尾がちぎれそうですよ。
テーブルにサラダや福神漬け、らっきょうの甘酢漬けなどを並べ、コップとレモンの入った水のチェイサーを置くと、ベンゾウとスワロも黙って席に座る。
熱々のご飯を皿に盛り、カレーをぶっかけ並べる。
「「「 いただきます! 」」」
出来立てだが、めっちゃ美味い!
アイテムボックスに入れると、いつまでも出来立てのままなので、今回はマジックバッグで保管しよう。
クロの視線が痛い……
「犬にこんな、香辛料や玉ねぎが入ってるのは、毒なのよ」
「クロは犬じゃなく、魔獣ですよ」
あれ、いいのか? いやダメだろ。
犬神って言うぐらいだし……
ちょっと怖いので「ドッグフードで我慢しな」っと、クロのお皿に山盛りにする。
それでも喜んで食べていた。
腹も膨れテント内には、まったりとした時間が流れる。
「あの~ 惣一郎殿」
「何かなスワロ殿」
「また、あのトイレを置いてもらえないだろうか?」
「あぁ、トイレね! 了解」
前回倉庫で利用した仮設トイレは、災害用のビニールの中に白い粉を入れる洋式タイプだったが、この際だいいのを置くか!っと、まずはこの世界のトイレ事情を聞く。
恥ずかしそうなスワロが言うには、深めの穴に穴の空いた箱が置かれており、座るだけの簡易的な物が多いらしく、例外なくどこも臭い。
穴の中にはスライムがおり、処分してくれるのだそうだ。
理解した…… 俺の知る最高のトイレを置こう!
まずはスライムを捕まえる事にする。
ただ探しても大変なので、スワロとベンゾウに外でトロールの解体をお願いする。
皮しか売れないトロールは、ギルドに持って行くと解体費用を取られるので、事前に解体して持って行くのが常識との事。
いらない部位はその辺に放置。
ふたりにはダマスカス三徳包丁を渡す。
朝にはスライムが集まって来るだろう。
その間、惣一郎はネットショップスキルで以前検索した水洗仮設トイレ52万円を購入する。
工事現場などで見られるタイプだが、大容量のタンクの水洗洋式なのだ。
電気がないのでウォシュレットの実現には至らないが、この世界では十分驚異だろう。
購入すると、周りに迷彩柄の布を貼り、上のタンクへ水を入れる。
結構水使うな~ 街で入れた樽も心許ないし、ウォーターの魔法覚えようかな……
出来たトイレを外に設置する。
取り敢えずは使えるよっとスワロ達に話しかける。
血だらけで皮を剥ぐふたりは、いらない部位を切っては投げ、それをクロがいいところだけ食べていた。
グロい…… 俺には無理だ。
ふたりに後でお礼をしようと、テントに戻る。
後はタンクにスライムを入れるだけだが…… いや、待てよ!
スライムをタンクに入れるのはいいが、アイテムボックスにスライムは入るのか?
丁度外からベンゾウが「ご主人様、スライムもう来たよ~」っと声が聞こえた。
スライム数匹を仮設トイレの下のタンクに入れ、スキルで収納!
だが、やっぱりスライムだけがそこにいた……
やっぱ生き物はダメか……
もう一度、仮設トイレを出しスライムを下のタンクに入れる。
毎回スライムを捕まえるのは、面倒臭いな……
解体が終わったふたりをクリーンで綺麗にし、テントの中で「お疲れ様でした」っと、フルーツタルトを切り分け、お茶を淹れる。
誘導も、もう必要ない程なので、ベンゾウにも乗るよう声をかけるが「歩くのが好き」っと、本当元気な少女であった。
林の中を蛇行する様に登り、ゴルドー山に近付いて行く惣一郎達。
陽が真上近くに登る午後には、気温も上がり、惣一郎が上着を脱ぐ。
真っ白な毛で覆われたクロは、暑くないのかと心配するが、涼しい顔でベンゾウと並んで歩いている。
しばらく進むと道の先にオークが一匹現れ、こちらを窺っていた。
また群れじゃないだろうな?
惣一郎の心配は外れ、単独の様であった。
手に持つ長い石を巻き付けた槍を構え、こちらを威嚇すると、スワロが荷台に立ち「仕留めます」っと亜流美を構える。
ピカっと光り音もなく雷がオークに伸びると一瞬遅れて、ドッゴーンゴロゴロゴロっと大きな爆音を轟かせる。
腹に響く凄い音だった。
オークは槍を構えたまま、黒焦げになり煙をあげていた。
威力は凄いが前でベンゾウとクロが毛を逆立てて、ピリピリ放電していた。
ライトニングの魔法は強力だが、使いづらそうだ。
スワロが謝っているが、ベンゾウは電気で逆立った毛のクロを触りながら、ケラケラ笑っていた。
陽も傾き、空も赤くなって来たので、そろそろ休む事にする。
疲れを見せないクロとベンゾウ、放って置けば朝まででも歩き続けそうだ。
テントを出し中に入ると、クロは真っ直ぐマットレスの上に腰を落し、水を夢中で飲み始める。
惣一郎がテーブルに冷たい飲み物を置くと、それぞれがくつろぎ始める。
普通の旅では、味わえない快適さだ。
惣一郎は、大量の牛肉をブロックに切り分け、焼き目を付けると、野菜と一緒に圧力鍋で茹で始める。
圧力鍋が笛を吹き、テント中にいい匂いを撒き散らす。
以前作ったカレーがもうないので、新たに作っていた。
肉が柔らかく茹で上がるとそのまま寸胴鍋に移し入れ、コトコトと煮る。
人参などが柔らかくなると、数種類のルーを入れ、火を止めて放置する。
みんなの視線を感じながら、サラダなども作り出す。
別で取っておいた冷めた肉を、そのままクロにあげると、あっという間に食べてしまった。
尻尾がちぎれそうですよ。
テーブルにサラダや福神漬け、らっきょうの甘酢漬けなどを並べ、コップとレモンの入った水のチェイサーを置くと、ベンゾウとスワロも黙って席に座る。
熱々のご飯を皿に盛り、カレーをぶっかけ並べる。
「「「 いただきます! 」」」
出来立てだが、めっちゃ美味い!
アイテムボックスに入れると、いつまでも出来立てのままなので、今回はマジックバッグで保管しよう。
クロの視線が痛い……
「犬にこんな、香辛料や玉ねぎが入ってるのは、毒なのよ」
「クロは犬じゃなく、魔獣ですよ」
あれ、いいのか? いやダメだろ。
犬神って言うぐらいだし……
ちょっと怖いので「ドッグフードで我慢しな」っと、クロのお皿に山盛りにする。
それでも喜んで食べていた。
腹も膨れテント内には、まったりとした時間が流れる。
「あの~ 惣一郎殿」
「何かなスワロ殿」
「また、あのトイレを置いてもらえないだろうか?」
「あぁ、トイレね! 了解」
前回倉庫で利用した仮設トイレは、災害用のビニールの中に白い粉を入れる洋式タイプだったが、この際だいいのを置くか!っと、まずはこの世界のトイレ事情を聞く。
恥ずかしそうなスワロが言うには、深めの穴に穴の空いた箱が置かれており、座るだけの簡易的な物が多いらしく、例外なくどこも臭い。
穴の中にはスライムがおり、処分してくれるのだそうだ。
理解した…… 俺の知る最高のトイレを置こう!
まずはスライムを捕まえる事にする。
ただ探しても大変なので、スワロとベンゾウに外でトロールの解体をお願いする。
皮しか売れないトロールは、ギルドに持って行くと解体費用を取られるので、事前に解体して持って行くのが常識との事。
いらない部位はその辺に放置。
ふたりにはダマスカス三徳包丁を渡す。
朝にはスライムが集まって来るだろう。
その間、惣一郎はネットショップスキルで以前検索した水洗仮設トイレ52万円を購入する。
工事現場などで見られるタイプだが、大容量のタンクの水洗洋式なのだ。
電気がないのでウォシュレットの実現には至らないが、この世界では十分驚異だろう。
購入すると、周りに迷彩柄の布を貼り、上のタンクへ水を入れる。
結構水使うな~ 街で入れた樽も心許ないし、ウォーターの魔法覚えようかな……
出来たトイレを外に設置する。
取り敢えずは使えるよっとスワロ達に話しかける。
血だらけで皮を剥ぐふたりは、いらない部位を切っては投げ、それをクロがいいところだけ食べていた。
グロい…… 俺には無理だ。
ふたりに後でお礼をしようと、テントに戻る。
後はタンクにスライムを入れるだけだが…… いや、待てよ!
スライムをタンクに入れるのはいいが、アイテムボックスにスライムは入るのか?
丁度外からベンゾウが「ご主人様、スライムもう来たよ~」っと声が聞こえた。
スライム数匹を仮設トイレの下のタンクに入れ、スキルで収納!
だが、やっぱりスライムだけがそこにいた……
やっぱ生き物はダメか……
もう一度、仮設トイレを出しスライムを下のタンクに入れる。
毎回スライムを捕まえるのは、面倒臭いな……
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