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第四章

二話 【普通って何?】

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「色々とおかしいぞ!」っと大騒ぎするスワロ。

「えっ普通だが?」っと、惣一郎。

「普通です」っと、ベンゾウも続く。

食事を終えると惣一郎は外に出て、一回り小さい迷彩のテントを組み立て始める。

ベンゾウにお湯を沸かしてもらう為、カセットコンロを5個出して、大きめの寸胴鍋を置き水を入れる。

惣一郎はテントの中にタイルを敷き詰め、水の入った大きい桶を出す。

ベンゾウと沸いたお湯を桶に入れては、桶の水を鍋に入れ、お湯を沸かすを繰り返す。

良い温度になると、桶の横に広く取ったタイルの上にシャンプーやリンス、ボディーソープを並べ、体はここで洗う様にベンゾウに教え手桶を置いて外に出る。

簡単に作った風呂に、ベンゾウにスワロと先に入るよう指示して、ベッドのあるテントで作り置きの食事を作り始める惣一郎。

混乱して騒いでいたスワロだが、しばらくするとベンゾウと楽しそうに風呂に入る音が聞こえて来た。

のんびり温まったふたりが出てくると、スワロが感動しながら騒ぎ出す。

熱ったふたりにアイスを渡し、惣一郎も風呂に入る。

さっぱり温まった惣一郎は、湯船にクリーンをかけてテントごと収納スキルで仕舞い、大きなテントの中のテーブルに腰掛け、プシュっとビールを飲む。

「いや、何処が普通なんだーー!」

これまで、こんな贅沢な体験をしたことがないと、スワロが興奮して騒いでいる。

湯船に入るなど貴族や金持ちのする事であり、食事も美味いし、気がつけばベッドの横には小さな箪笥にランプが置かれ、観葉植物まで飾ってあるし、豪華な宿でも味わえない贅沢な経験を、旅の途中の草むらでしているのだ。

「えっ普通だが?」っと、惣一郎。

「普通です」っと、ベンゾウも続き、ケラケラ笑っていた。

ベッドに横になり寝ようとすると、見張りをかって出たスワロに「大丈夫、寝ろ!」っと灯りを消す。




翌朝、やはり惣一郎に抱きつき、幸せそうな寝顔のベンゾウを起こし、ベッドを出るとスワロが居なかった。

テントを出ると、スワロが朝日を眺めながら、

「現実なのだな……」

と、呟いていた。



朝食はカセットコンロで焼いた、ハムとチーズのホットサンドにサラダとヨーグルト、インスタントのトマトスープでいただく。

驚き疲れたスワロは美味いを連発しながら食べていた。

食後にお茶を飲みながら、スワロに薄手の防護服を渡して中に着る様に勧める。

テントごと収納スキルで仕舞うと、何事もなかった様に目的地を目指し始める。

スワロだけが驚き過ぎて、疲れが取れない様だ。




この世界に来た頃に比べると、惣一郎は大分体力がついたのか、距離を歩いても疲れない体になっていた。

スワロは昨夜の余韻を楽しみながら歩き、ベンゾウはただ元気だった。

ふと現実に戻ってきたスワロが、

「惣一郎殿は、凄いのだな……」

っと、誤解されそうな事を呟く。

「えっ普通だが?」っと、惣一郎。

「普通です」っと、ベンゾウも続く、ケラケラと笑って。



しばらく進み林の中に入ると、ベンゾウが冒険者の顔になった。

左右の林から、男が六人現れて、

「こりゃついてる、今度は女だぜ!」

っと、武器をチラつかせる。

旅人を狙う盗賊かな? 

刃物をチラつかせ、ジリジリ近づく小汚い男達が、スワロとベンゾウに狙いを定める。

「ベンゾウ、右からだ!」

声を上げた惣一郎は強化アクリルの盾を出し、左の敵からの攻撃を軽く受け止める。

ベンゾウは右の近い男から刃物を持った腕を切り落とし、二人目の首を飛ばす。

スワロは杖を構え、惣一郎に軽そうに受け止められた男に炎槍を突き立てる。

ベンゾウが三人目を二つにして、惣一郎に近づく五人目を後ろから袈裟斬りする。

炎槍で燃えて崩れた男の後ろで、青ざめ後退りする最後の男が悲鳴を上げる間もなく、胸に炎槍が突き刺さる。

あっと言う間の出来事であった。

「惣一郎殿、なんかおかしいのだが……」

ん? 

スワロが杖を見ながら、

「私、こんなに早く炎槍を撃った事ないんですけど……」

っと驚いていた。

早くも食事の影響かな?

「えっ普通だが?」っと、惣一郎。

「普通です」っと、ベンゾウも続く……






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