上 下
29 / 409
第三章

十三話 【期待裏腹に!】

しおりを挟む
まずはスワロ達が合流に指定した宿屋を探そうと、大きな城を横目に歩き出す。

ギルド近くの青い屋根の宿との事で、先に冒険者ギルドを探す。

道を聞きながら歩いていると、どうやらこっちがメインの正面入り口の、大きな広場に出る。

ギルドは正面広場のすぐ横に、デカデカと建っていた。

と言うことは、あの青い屋根が宿屋らしい。
 
宿屋に入ると広いエントランスにカウンターまで伸びる赤い絨毯、装いはホテルであった。

4階建ての宿屋の一階は食堂と受付になっており、契約した206号室は二階の角部屋である。

ふたりでも十分な広さの部屋に入り、ベッドでくつろぐが、テントの方が正直落ち着いた。

キロの宿の様にグレードの上の部屋には、風呂付きもあるそうなんだが料金が高く、主に貴族などが利用するらしい。

俺達の様な冒険者が泊まると目立ってしまうので、この部屋にした。

まだ外は明るいが、もうすぐ陽が沈む頃なので、今日はこのまま休む事にした。





早朝、朝早くから鐘がなるこの街は、夜明けと共に市場が始まるとの事で、二度寝する事にする。

何度目かの鐘でベンゾウに起こされるが、まだ朝だった。

朝食を一階の食堂で食べる。

パンと野菜とスープと味も見た目も普通だった。

ベンゾウはカレーが食いたいと朝から煩い。

朝食を終え、ギルドに向かう。



宿を出ると、ギルドの前に人集りが出来ている。

どうやら冒険者同士の喧嘩の様だ。

すでに勝負はついている様で、剣を手にした体格の良い髭面の男が叫んでいる。

「他にも俺様に挑戦する奴はいね~のか!」

何処にでもいるんだな、この手の奴は……

興奮するベンゾウを連れ、無視してギルドに入る惣一郎。

カウンターで買取を頼み、専用カウンターへ案内される。

グルピー六匹を処分して36ギーを受け取る。

そのまま掲示板を見に行こうすると、ベンゾウがドワーフに捕まっていた。

何事か尋ねると、ベンゾウの腰の小刀を見せてくれと、しつこく付きまとって来るそうだ。

「頼む! ちょっとでええ、見せてくれんか?」

小柄で髭を生やし額にゴーグルをつけた、THE ドワーフ。

ベンゾウは頑なに「ご主人様の!」っと断っているが、ドワーフも諦めない。

ココでの騒ぎは遠慮したいので、場所変えようと提案する。

変えた所で、見せるつもりは無いのだが……


まだ騒いでる馬鹿を他所目に、広場の隅の人気のないベンチへ座る。

諦めずついて来たドワーフが、頭を下げて話し出す。

「わしは、[ミルドの街]で武器屋をやってる[トト]と言う。先程ギルドの前の騒ぎで、この娘さんがチラっと抜くのを見てな、一瞬であったが綺麗な刃紋が見えたんじゃ、それは美しい。それで武器屋として、どうしてもちゃんと見ておきたくての~ 頼む、どうか見せてくれんじゃろか?」

ギルド前で、何してんのベンゾウさん!

「すまないが、これを見せびらかすつもりはない、騒ぎは困る。悪いが諦めてくれ」

そんなやり取りが一時間近く続き、終いには見せるだけで10ギー払うとまで言い出すドワーフ。

遂に根負けして、金はいいので絶対に誰にも話さない約束で見せる事にした。

が、ここでは不味いと、また場所を変える。

人気のない路地裏で、ここならいいかと触らない見るだけの約束でベンゾウに見せさせる。

ベンゾウが手にした美善國家と美善國千代を見た瞬間、ドワーフは口を開けたまま固まった。

「な、なんじゃこりゃ、神が作ったものか! 何処の[ダンジョン]で手に入れたんじゃ!」

ダンジョン?

ドワーフはしばらく二本の小刀に見惚れて「これは人が作れるもんじゃないな」と礼をいい再度、誰にも話さないと約束をして帰って行った。

ダンジョン? ダンジョンならこんな武器が手に入るのか?

後でベンゾウに聞いてみるか……

その後、惣一郎達は街中をフラフラと惣菜屋などで味見しては、気に入った料理などを買い込んだり、服も数着購入したりと、知らない街を楽しんでいた。

魔導書店もあったので覗いてみる事に。
 
店内は広かったが、やはり本棚はなく椅子とテーブルがあり、カウンターには年配の女性が、三角の黒い帽子を被りイメージ通りの魔女、いや美魔女がこちらを見ていた。

「何かお探し」

「はい、あなたを♡」

美魔女はキョトンとしていた。

ちょっと覗いただけだったが、ここは購買意欲を掻き立てる!

「おすすめとか、ありますか? あなたとか……」

「面白いお客さんだね~ こんなおばさんをからかって。そうだね~ おすすめは…… アイスジャベリン、ストーンバレット、それから……」

攻撃魔法か、正直興味はない。

「あとは、そうそう、範囲型のカトリもあるよ」

「ふむ…… 水をお湯にするのとかあります?」

「普通のファイヤじゃダメなのかい? 安くしとくよ」

「いえ、大丈夫です、すいませんお騒がせして」

また来ますと美魔女に再会の約束をして店を出る。

王都の魔導書店のわりに、攻撃魔法ばかりだったな~

正直クリーンだけで十分な気がして来た。

ベンゾウは冷たい目で惣一郎を見ていた。





しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...