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第三章

十話 【危険と分かっていても男には……】

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朝一番にギルドを訪れる、惣一郎とベンゾウ。

ギルド長から残金を受け取り、昨日の騎士達の情報を聞くと、セルネルまでの街道に[ピテュルス]と言う魔獣が出たとの事。

この言いづらいピテュルス、亀の様な甲羅を持つ虎の様な四足獣らしく、この辺りに生息してる魔獣なんだが今回現れたのは、通常の倍ほどの大物らしい。

昆虫程では無いが、硬くて騎士との相性が悪い。

早速、討伐依頼も出ており、懸賞金400ギーに冒険者が討伐隊を組み始めたそうで……

なら騒ぎもすぐに終わるだろうと、安心する。



ギルド長に挨拶して部屋を出ると、掲示板の前がその件で賑わっていた。

一応掲示板も覗いていく。

ピテュルス討伐依頼、報酬、400ギー

ピテュルス討伐隊、報酬均等分配、チーム[竜の息吹]

ピテュルス討伐隊、報酬応相談、 チーム[砂漠のミョルテ]

ピテュルス討伐隊、報酬均等分配、チーム[鮮血女帝]

情報求む、ルイードの救世主[ゴキコロリ] 、報酬、情報次第


「ぶーーーーーっ!」

早く村を出ようとベンゾウを急かし、桶を受け取りに向かう。





木工所に着くと、ビンツが徹夜で作ってくれた大きな桶が店先に置いてあった。

最高じゃん!

いい仕事に喜んでいると、水漏れがないか一緒に確認してほしいとビンツとサイーツが、桶に水を入れ始める。

もちろん問題無い。

満足して、料金を多めに支払う。

ついでにと、水を一杯まで入れてもらってスキルで収納。

マジックバッグの容量に驚くビンツに再度お礼をいい、村を後にする。

さて、急いで村を出て来たが、討伐隊もまだ動いてないだろうし、ピテュルスと遭遇したらどうするか……

岩肌の丘を下り、セルネル城を目指して歩き出すふたり。





道の両脇に竹林が現れ始め、景色がゆっくり変わり始めると、少し先で大きな影と交戦中の冒険者の一団が目に入る。

褐色の肌に尖った耳のエルフが、3人の騎士に後方から指示を飛ばしていた。

大きな盾を持った体の大きな騎士が、黒いグルピーの攻撃を抑え込み、残りの騎士が剣で徐々に、グルピーの体力を削る。

指揮官らしいエルフの女が、後方で杖に呪文を唱え、騎士達に「さがれ!」と叫ぶ。

空中に複数現れた火が集まり炎になって、グルピーめがけ槍となる。

炎の槍はグルピーを貫き、中から燃える様に勢いを増す。

苦しみ暴れ出すグルピーは火が消えると動きを止め、トドメと騎士達が剣を刺す。

これじゃ毛皮は取れないな……

熟練の冒険者達の戦いを、惣一郎は感心しながら傍観していた。
 
こちらに気付いたエルフが誇らしげな表情で、肩で息を整える騎士達に指示を出す。

黒焦げのグルピーでも売れるのか?

騎士達がマジックバッグに詰めていると、竹林からもう一頭、茶色の大きなグルピーが現れた。

冒険者達は驚いた表情で慌てるも、盾の騎士がグルピーの初撃を受け止める。

だが連戦の疲れか盾の騎士は押され、地面に膝を突く。

剣の騎士も応戦するが、グルピーに振り払わられる様に宙を舞う。

褐色のエルフも慌てて詠唱に入るが、魔法が発動しない。

魔力が残ってないのだろう、万事休すと悔しい表情になる。

「ベンゾウ、頼む」

コクンと頷き、疾風と消えるベンゾウ。

盾ごと押し潰されそうな騎士の上に、ゴトン!っと首を落とすグルピー。

騎士達が驚き固まっていた。





「助けていただき感謝する。私は冒険者[エリリンテの牙]リーダーの[スワロ]だ」

今日、四度目の戦闘で魔力も尽きて死ぬところだったと、礼を言う[ダークエルフ]は、他の騎士に手当てをする様に指示をしていた。

彼女のワンマンチームの様だ。

騎士達はグルピーを一撃で倒す少女に驚き、まだ目が離せないでいた。

飛ばされた騎士が足を引きずり近付いて、ベンゾウに礼を言う。

セルネルから来たと言う冒険者達は、キロの村の騒ぎを知らなかった。

来る途中、荷馬車が襲われた跡があったそうで、説明すると青ざめた表情を浮かべる。

ピテュルスが出たせいで、この辺りの魔獣も騒いでいたのだろう。

連戦を強いられながらも、当のピテュルスに遭遇しなかったのは運が良いといえる。

ここからキロの村までは距離もないし、見晴らしも良かったし、通って来たばかりなので安全だろう。

そう伝えて、ベンゾウと立ち去ろうとすると……

「ま、待ってくれ! この先にピテュルスが出ると言っておきながら行くのか? たったふたりで?」

あらやだ♡

危険と分かって戦いに行く、戦士を見送る設定ですか?

こんなセリフを言われる日が来るなんて! 

興奮するわ~ オホン!

「ふふ、危険と分かっていても男には、行かなければ…「ご主人様!」」

ちょっベンゾウさん!

俺のカッコいいセリフを! 何よ!

ゲッ! 今出るのかよ……

口にグルピーを咥えた、大きな亀の四足獣が現れた。






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