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第三章

六話 【くにいえ&くにちよ!】

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暗い森を小走りで進むふたり。

ベンゾウは惣一郎に、強い恋愛感情以上の物を抱いていた。

あの暗い地下牢から生きる意味を見出させてくれた主人であり、沢山の恩恵(美味い物)をもたらしくれ、獣人としての本能でもある強者としても条件を満していた。


惣一郎は悩んでいた。

この世界で目立たず、スローライフを送りたいだけの欲のない(責任を負いたくないだけ)おっさんは、男としての本能に負け、少女に手を出しそうになり、英雄になる事からも逃げ出し、そしてベンゾウの獲物を狙うような目が怖かった。



深夜の森を惣一郎達は、ルイードの村から逃げ出し、次の目的地[キロの村]へと向かっていた。

その村は、森を抜ければすぐ見えて来る場所にあるらしいのだが、このルイードの森、こちら側に長く伸びているのか森をまだ出られないでいた。

逃げるように出て来た村で、情報を集める事も出来なかった惣一郎。

そして睡眠も取っていない……

悪い事した訳じゃないのに何故逃げるのか、ベンゾウには理解できないだろう。

あのまま英雄に祭り上げられれば、話が広まるのも時間の問題であり、厄災と呼ばれる虫が出るたびに討伐依頼が殺到する事になるのも、容易く想像できる。

そんなのスローライフじゃない! 

申し訳無いがもう、責任を負わされ押し潰されるのは懲り懲りだ!

でも、流石に眠いねベンゾウさん……

あれ… 寝てる? 歩きながら寝てる?

ここまで来ればと道の脇に逸れ、目立たない所にテントを出す。

自分と寝ぼけているベンゾウにクリーンをかけ、ベッドに潜り込む…… 君はそっち!





遅めの朝、センサーの音で飛び起きる。

テントの周りには、十数匹のゴブリンが音に驚き、センサーライトを攻撃をしていた。

飛び起きたベンゾウが、両手に包丁を持ってテントを飛び出す。

テントもゴブリンの槍の様なもので突かれていたが、破ける様子は無かった。

この世界でのテントのスペックは要塞の様だ!っと、複数のゴブリンに襲われる中、惣一郎は悠長にテントの中で感心していた。

ベンゾウの邪魔をしないのが役割なのだ。



終わった~っと、ベンゾウが戻って来る。

お疲れ~っと迎え、普通の朝に戻る。

いや、昼を過ぎていた。




食事が終わるとベンゾウが、モゾモゾと何か言いたそうなので、聞くと包丁の手入れをしたいそうだ。

そういう事は遠慮せずに言いなさいと諭す。

本来奴隷が、おねだりする事の無い世界なのを、惣一郎も忘れていた。

見ると包丁は大分傷んでいた。

この世界では何倍も切れ味が増すのに、ここまで痛む原因は先日の昆虫との戦いだろう。

あの虫、相当硬かったんだな~ 

研げば切れ味も増すだろうと、ネットショップスキルで砥石を検索する。

割と安いのから高額なのは10万を超える物もあり、その良し悪しが惣一郎には分からなかった。

そして気づいた。
 
異世界でナイフを買うぐらいなら、ネットで包丁の方がマシだと包丁を購入したが、ナイフの代わりならナイフで良くね? 

包丁は切れ味を追求した薄い刃物だ。

ベンゾウの戦闘スタイルにはナイフの方が合っている!

誕生日だったらしいし、色々感謝と謝罪も含めて奮発するか!っと……

早速、ネットショップスキルで検索をする。

だが、種類が多過ぎる! 

鉈の様な物から、ククリ刀、サバイバルナイフ……

ベンゾウに画面は見えないし。

ならば前回よりも、もっと詳しく聴き取り調査をする事にする!
 
「包丁あるから勿体無い、手入れする!」っと案の定、遠慮して来たので、包丁はベンゾウのスタイルに合わないと時間をかけ説得。

理想の形、好み、重さ、硬さなど、戦闘スタイルも研究し、何となくイメージができたので検索!


そして見つけてしまった……


日本が誇る世界最高峰の武器、鉈の重さに剃刀の切れ味、日本刀!

その中でもナイフぐらいの長さの短刀を! 

歴史的価値もある刀匠の銘入り。

[國政一門 小柄小刀 美善國家と美善國千代]

総額800万也!

やりすぎだな……

いや、今後のベンゾウの活躍には、これ位の期待を持ちたい。

貯金は大幅に減るが、すぐに稼げるだろう!

ええいままよ! ポチっとな。




やばい、何だコレ……





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