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第二章

九話 【人生いろいろ!】

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なんて素晴らしい魔法なんだ、このクリーン!

髪はサラサラだし、口の中もさっぱり。

おまけに、着ている服まで新品の様に!

ベンゾウもさっぱりし、大喜び。

だが、日に4~5回も使うと頭痛がする。

ここが限界の様だが、十分過ぎる!

成功してみれば、200ギーは安い気がする!

ほんと運が良かった。

憧れた異世界の魔法にしては地味だが、大満足の惣一郎であった。



夜は気分が良いので、ネットショップスキルで食べ物やお酒を買い、大盤振る舞い! 

ベンゾウは、食べた事ない異世界の料理に大満足し、膨れた腹を出し眠りについた。

明日はキネスの街をのんびり見て回るか……

Zzzz……




早起きして朝市に来てみると、野菜などの食べものを売る店がほとんどであった。

この世界に来て最初の食事の印象が、あまり良い物ではなかったが、宿屋や食堂で食べる料理はそんなに悪くない。

見慣れた野菜は無いが、多少この世界の料理も覚えておこうと、市場で野菜や果物、乾物などを購入していく。

アイテムボックスの中に入れておけば、腐らないし。

そう、このアイテムボックス!

マジックバッグと違って、入れた物の時間が止まるのか、温かい物はいつ出しても入れた時のまま温かく腐る事もない、実に優れたスキルであった。

マジックバッグは入れた容量が見た目より多いだけで、時間が経てば冷めるし腐る。

まぁ、重さを感じなくなるだけでも相当優れた魔法アイテムなんだが。

ジュグルータさんに頂いたこのマジックバッグ、見た目は肩掛けの普通のバッグだが、容量はざっくりとボックスタイプの車が入る程である。

そしてアイテムボックススキルには、まだ限界が分からない。

食べ物から飲み水、野営に使えそうな道具や椅子、テーブルなども入れてるし、ネットショップスキルで購入した物の袋や箱など、その辺に捨てられないゴミも、すでに結構な量であった。

このスキルがあれば運送業でも十分、食べて行けそうである。

惣一郎はこの世界で、商人としてスローライフを送るのが目標であったが、目立たず食べて行く術は色々ありそうで、今はスローライフが優先になっていた。

ネットショップスキルで塩胡椒は断念したが、シャンプーや石鹸などでも十分儲かるだろう。

だが、人気が出れば必ず目立つし、仕入れ先も明かせない。

命の軽い異世界でトラブルは極力避けたい。

以前読んだラノベから学んだ教訓であった。

ベンゾウは強いし、護衛として十分守ってくれるだろう。

だが、腹を出し眠る少女を、わざわざ危険に巻き込む事も無いと、段々考えも変わって来ていた。 

このまま旅に出てもいいかもな~




露店を眺めながら歩いていると、鐘塔前の広場で朝から冒険者達が集まっていた。

何事か?っと思ったが、朝依頼を受けた冒険者達がこれから出発する、朝の光景であった。

依頼か……
 
ちょっと見て行くか!っと、冒険者ギルドに入り、大きな掲示板に張り出された依頼の数々を見る惣一郎。

畑を荒らす[ギュノ]討伐 報酬5ギー。

ギュノは、先日ベンゾウがあっさり倒したイノシシの様な魔獣だ。

ススの森、薬草採取護衛 報酬5ギー2ネル。

街道の盗賊討伐、報酬35ギー。

[キビの街]までの護衛、報酬50ギー。

ムイの町までの護衛、報酬12ギー。

この時間だと、すでに良さげな依頼は残って無いようだな……

「あの…… 冒険者の方でしょうか?」

掲示板を見ていると後ろから声をかけられた。

振り返ると幼い少女とその弟らしい、ふたりの姉弟がこちらを見上げていた。

「違いますよ」

「ご主人様!」

「あっごめん、そうだ冒険者でした。あはは」

ベンゾウが幼い姉弟に目線を合わせ話を聞くと、ムイの街まで行きたいらしいが、正式に依頼するお金がないらしく、ここで相談しやすそうな冒険者に声を掛けているそうだ。

次の予定も決めてないし、ムイまで戻っても構わないが……

ベンゾウが『幼い子を放っては、おけません!』って目で見てくるし、先日盗賊に襲われた家族を思い出し、話を聞く事にする。



何でも、父親と3人でこの街に住んでいたが、冒険者の父がもう二ヶ月も帰ってこないそうだ。

蓄えも尽き、父親との取決めで、戻らない時はムイの親戚の家に行くようにと言われていたそうで……

可哀想に。

「急ぐ用事も無いし、じゃ、ムイの街まで一緒に行こうか!」

幼い姉弟は泣きそうな顔で、ベンゾウと一緒に何度も感謝し頭を下げる。

少ないですがと差し出された初めての依頼料は、5ペスであった。

タダでも良いと思ったが、ココは素直に受け取ろう。

お昼をご馳走して、早速キネスの街を出ることにした。





姉弟達の荷物はすでに処分されており、今持っているカバンがふたりの全財産だそうだ。

リアカーを出し姉弟とカバンを乗せ、ベンゾウは護衛に専念する。

軽いリアカーを引く、惣一郎。

屋根を付ければ、立派なキャンピングカーになりそうだな~っと考えていた。




道中、やけに姉弟を気にかけるベンゾウに、兄弟でもいるのか尋ねるが「もういない」っと聞いてはいけない質問だった様で……

「すまん」とだけ返事をする惣一郎。


 
盗賊がいた辺りを過ぎ、陽が傾いて来たので、ススの森に入る前に野営の準備を始める。

焚き火を囲み、キネスの街で買っておいた温かい野菜スープにネットショップスキルで買ったパンを配る。

柔らかいパンに、姉弟も大喜びだった。

宿ではいつも先に寝るベンゾウだが、流石冒険者の顔の時は頼もしい。

姉妹が寝静まる頃、昼間の話を思い出し、惣一郎も家族を思い出す。

だが不思議と、帰りたいという感情は湧かなかった。

きっと、こんな異世界を楽しんでいるのだろう。







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