1 / 409
第一章
一話 【異世界行っちゃった!】
しおりを挟む
電話も落ち着いた深夜の救急病院の事務で、隣の席の同僚がスマホを触りながら話しかけて来る。
「ねぇ[佐藤くん]。異世界に行くとしたらどんなスキルが欲しい?」
万年人手不足の医療事務で激務に耐え、我が儘な患者にヘラヘラと頭を下げ、家にただ寝に帰るだけの日々に月2回の夜勤。
36になる俺に恋人もおらず、実家も姉夫婦が継いでいる。
正直…… いつ異世界に行っても問題はない。
なんてくだらない妄想話を、キーボードを叩きながら深夜のテンションで同僚と話していた。
「そうっすねぇ、戦闘とかはやっぱ怖いし、ネットショッピングが出来るスキルで商人希望ですかね!」
寝る前によく読む無料のラノベで、特に気に入ったスキルだった。
「いいね、胡椒とか売って一攫千金狙うヤツね!」
初老の同僚がスマホに何かを入力しながら笑みを浮かべ答える。
「まぁ良くある設定ですけどね、やっぱスローライフ系がいいですよ!」
俺は遠くに聞こえる救急車の音を聞きながら、適当に答えた。
適当だったが、趣味も無く生き甲斐も見出せない現状に、だったら良いなは本音であった。
「商人じゃ[アイテムボックス]みたいな収納スキルもいるか…… あと[言語理解]も……」
初老の男は両手でスマホに何かを入力しながらニヤニヤととても仕事中の態度ではなかった。
「では[佐藤 惣一郎]よ! ネットショッピングスキルと言語理解、それとアイテム収納スキルも共に与えよう!」
「あはは、大盤振る舞いですね! それなら異世界でもやって行けそうですよ!」
「じゃ行っといで~」
「へっ?」
目の前が眩しい光で真っ白なる……
目を細め見えない状況を見ようとする惣一郎。
肌に触れる風と吸い込む空気が違う事に戸惑う。
光に慣れ始めると、周りがぼんやり見えて来た。
へっ? アレ? 森?
深い緑の木々にキラキラと降り注ぐ木漏れ日を浴び、田舎でも嗅いだことのない澄んだ空気。
えっ? はぁ? 何処?
隣にいたはずの同僚の姿を探しながら、状況を理解しようとするが、何が起こったか全く理解出来なかった…… っと言うより、頭の中が真っ白であった。
木から飛び立つカラフルで綺麗な鳥が太陽を背に色を無くし、止まっていた思考がゆっくりと動き出す。
冷たい……
地面の苔で尻が濡れていた。
同僚って…… 誰だっけ? 名前が出てこない。
病院にいたはずなのに…… これは夢?
ダメだ理解が追いつかん!
さっきまで病院で仕事をしてたよな俺......
誰かとラノベの話で盛り上がって……
そう、ラノベ! 異世界にスローライフ!
えっ……
いやいや無理っしょ無理ありすぎっしょ!
夢よ夢!
いやだとしても...... 何で俺?
神様は?
事故やゲームしてての過労死とか、なんかあるっしょ!
……………
澄んだ森に吹く風が葉を揺らす音だけが聞こえている。
…………
一応やってみるかお約束。
オホン! 「ステータス!」
はずっ!
えっ、異世界じゃないのか?
もしかしたらスキルとか使えると思った…… の… に......
突然目の前に浮かび現れた画面。
ネットショッピングの所持金は0。
マジか……
アイテムボックスは?…… もちろん空っぽ。
だが使える……
ネットショッピングスキルは入金しないと使えないようだったが、目の前に浮かび上がる画面は、よく使っていたパソコンと同じ画面。
モニターもないのに......
認めちゃう? 異世界って……
一通り状況を考えたが、解らない事は考えても解らない。
だがこのままここに居ても始まらないと重い腰をあげる惣一郎。
目的も無く森をしばらく歩くと、少し開けた場所に人影らしき物が見えた。
やった! 第一村人発見か!
だがよく見ると服じゃ無い緑色の肌。
下顎から上に伸びた歯は鼻の横まで伸びており、上半身裸ので毛皮を腰に巻く大男。
手には木と石で出来た原始的な斧みたいな鈍器を持っている。
はい確定です…… 来ちゃったよ異世界!
その見た目から話が通じるとは思えない相手。
見つかるのはマズい…… 襲われたら終わると腰を低く落とし、茂みに身を隠す惣一郎。
持ってるスキルは戦闘系じゃないし、金がないので買い物も出来ない。
同化だ、自然と一体になるんだ!っと息を殺す。
足を止めた緑の大男は、クンクンと辺りの匂いを嗅ぎ、何かに気付いたのか周囲を見渡す。
やば! 匂いか! 風上はどっちだ!
そっと指先を舐め風上を探すと、指先は正面で冷たさを伝え、風下にいる惣一郎は安堵する。
大きな影はクンクンと鼻を鳴らし、森の奥へと消えて行く。
リアルな体験に惣一郎は恐怖で震えていた……
「ねぇ[佐藤くん]。異世界に行くとしたらどんなスキルが欲しい?」
万年人手不足の医療事務で激務に耐え、我が儘な患者にヘラヘラと頭を下げ、家にただ寝に帰るだけの日々に月2回の夜勤。
36になる俺に恋人もおらず、実家も姉夫婦が継いでいる。
正直…… いつ異世界に行っても問題はない。
なんてくだらない妄想話を、キーボードを叩きながら深夜のテンションで同僚と話していた。
「そうっすねぇ、戦闘とかはやっぱ怖いし、ネットショッピングが出来るスキルで商人希望ですかね!」
寝る前によく読む無料のラノベで、特に気に入ったスキルだった。
「いいね、胡椒とか売って一攫千金狙うヤツね!」
初老の同僚がスマホに何かを入力しながら笑みを浮かべ答える。
「まぁ良くある設定ですけどね、やっぱスローライフ系がいいですよ!」
俺は遠くに聞こえる救急車の音を聞きながら、適当に答えた。
適当だったが、趣味も無く生き甲斐も見出せない現状に、だったら良いなは本音であった。
「商人じゃ[アイテムボックス]みたいな収納スキルもいるか…… あと[言語理解]も……」
初老の男は両手でスマホに何かを入力しながらニヤニヤととても仕事中の態度ではなかった。
「では[佐藤 惣一郎]よ! ネットショッピングスキルと言語理解、それとアイテム収納スキルも共に与えよう!」
「あはは、大盤振る舞いですね! それなら異世界でもやって行けそうですよ!」
「じゃ行っといで~」
「へっ?」
目の前が眩しい光で真っ白なる……
目を細め見えない状況を見ようとする惣一郎。
肌に触れる風と吸い込む空気が違う事に戸惑う。
光に慣れ始めると、周りがぼんやり見えて来た。
へっ? アレ? 森?
深い緑の木々にキラキラと降り注ぐ木漏れ日を浴び、田舎でも嗅いだことのない澄んだ空気。
えっ? はぁ? 何処?
隣にいたはずの同僚の姿を探しながら、状況を理解しようとするが、何が起こったか全く理解出来なかった…… っと言うより、頭の中が真っ白であった。
木から飛び立つカラフルで綺麗な鳥が太陽を背に色を無くし、止まっていた思考がゆっくりと動き出す。
冷たい……
地面の苔で尻が濡れていた。
同僚って…… 誰だっけ? 名前が出てこない。
病院にいたはずなのに…… これは夢?
ダメだ理解が追いつかん!
さっきまで病院で仕事をしてたよな俺......
誰かとラノベの話で盛り上がって……
そう、ラノベ! 異世界にスローライフ!
えっ……
いやいや無理っしょ無理ありすぎっしょ!
夢よ夢!
いやだとしても...... 何で俺?
神様は?
事故やゲームしてての過労死とか、なんかあるっしょ!
……………
澄んだ森に吹く風が葉を揺らす音だけが聞こえている。
…………
一応やってみるかお約束。
オホン! 「ステータス!」
はずっ!
えっ、異世界じゃないのか?
もしかしたらスキルとか使えると思った…… の… に......
突然目の前に浮かび現れた画面。
ネットショッピングの所持金は0。
マジか……
アイテムボックスは?…… もちろん空っぽ。
だが使える……
ネットショッピングスキルは入金しないと使えないようだったが、目の前に浮かび上がる画面は、よく使っていたパソコンと同じ画面。
モニターもないのに......
認めちゃう? 異世界って……
一通り状況を考えたが、解らない事は考えても解らない。
だがこのままここに居ても始まらないと重い腰をあげる惣一郎。
目的も無く森をしばらく歩くと、少し開けた場所に人影らしき物が見えた。
やった! 第一村人発見か!
だがよく見ると服じゃ無い緑色の肌。
下顎から上に伸びた歯は鼻の横まで伸びており、上半身裸ので毛皮を腰に巻く大男。
手には木と石で出来た原始的な斧みたいな鈍器を持っている。
はい確定です…… 来ちゃったよ異世界!
その見た目から話が通じるとは思えない相手。
見つかるのはマズい…… 襲われたら終わると腰を低く落とし、茂みに身を隠す惣一郎。
持ってるスキルは戦闘系じゃないし、金がないので買い物も出来ない。
同化だ、自然と一体になるんだ!っと息を殺す。
足を止めた緑の大男は、クンクンと辺りの匂いを嗅ぎ、何かに気付いたのか周囲を見渡す。
やば! 匂いか! 風上はどっちだ!
そっと指先を舐め風上を探すと、指先は正面で冷たさを伝え、風下にいる惣一郎は安堵する。
大きな影はクンクンと鼻を鳴らし、森の奥へと消えて行く。
リアルな体験に惣一郎は恐怖で震えていた……
26
お気に入りに追加
1,868
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる