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第九章

七話【惣一郎の悩み】

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額から汗を流がし杖を握るドラミ!

その表情から只事で無い雰囲気が伝わって来る。

ルールは事前に説明しろよ!

遅れて惣一郎も盾を出し槍を数本、宙に浮かせ構える!

黒い渦の風の中、ニヤリと笑みを溢す精霊。

「そうだな…… 共に風に乗る仲間を望む!」

風に乗る仲間?

へっ? そんだけ?

ドラミの顔色は変わらない。

罠なのか?

惣一郎はネットでシャボン液を購入し、ストローを吹くと、虹色のシャボン玉がふわふわといくつも空を埋め尽くしていく。

「おっ、おおおおぉ! あはははぁ」

追いかける黒い邪悪な精霊は次第に元の姿に戻って行き、シャボン玉を追いかける。

ベンゾウも……

「やらせてやらせて!」

惣一郎の手からシャボン液を取り上げ、小さな口で力一杯吹き、シャボン玉を作る精霊。

無邪気なその姿に、皆が武器を下ろす。

「約束だし、呼べば力を貸すよ!」

自分で吹き作ったシャボン玉を追いかけ、風の中に消えて行く精霊シルフ。

「焦ったーーー!」

力が抜け、腰を落とすドラミ達。

「おい、どう言う事だよ!」

「精霊に供えるのは何でもええねん。そりゃ供えたもんで貸す力も変わるんやが、問題は精霊に望みを聞いちゃ絶対にいけないんや…… 無理難題ふっかけ魂まで毟り取るんやぞ奴らは……」

「先言えよ!」

「常識や! 知っとる思うやろ!」

「でも、精霊の難題に無事応える事が出来て、ほんと良かったですね……」

「焦ったぞ、主人よ……」

「さすが旦那様!」

ケラケラケラ。

「じゃ、お前やイワオ達にもか?」

「ウチらは精霊ゆうても末裔みたいなもんや、召喚される事もない。さっきまでの純な生粋の精霊とちゃう! あれはより神に近い存在や」

そんな末裔で務まるのか?

やや不安になる惣一郎。

ドライアドリスの無理難題を拒み続けた惣一郎は、盆に飾るお供物をイワオの前に置く。

混乱しキョロキョロするイワオだった……





風呂に浸かり、ひとり疲れをとる惣一郎。

ほとんど気疲れだが……

取り敢えずこれで、五大精霊?が揃った訳で、後は残党キシルとネネルを倒すだけだ。

さて、どうしたものか……

湯船から眺める景色は……

転移屋の三階部分…… しかも割と近い。

向こうからは見えないと言うが、落ち着かない。

長湯する気にもなれないと、顔を洗って出ようとする惣一郎。

すると、湯船に映る自分の顔が何だか……

ダブった顔に……

「悩みかえ?」

わああああああっ!

「なっ、何してんのよ!…ですか……」

「美味しい水の礼じゃ、悩み聞くぞえ」

ドラミの奴…… お湯で出るじゃん!

湯船から現れるウンディーネ。

「悩み聞くぞえ」

また罠か……

素直に悩みを言っていいのか悩む惣一郎。

下手に拒むのも怖い……

すると湯船の中、水に背後から抱きつかれる感覚が……

や、やめろ、前に手を伸ばすな……

「なるほど居場所を知りたいのかえ?」

えっ、何故それを?

「ふたりに別れを言うのが怖いのかえ?」

なっ……

「あの娘とずっと一緒に……「やめろ!!」」

勝手に心を読むな!

動揺した惣一郎に纏わりつく、水の感覚が消えて行く。

揺れる湯船にウンディーネの姿はなかった……

そして吹っ切れた様に清々しい惣一郎の顔が、水面に揺れていた……

なるほど、その手があったか……




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