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第九章

六話【精霊流し】

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「恥ずかしいな、あんな所でおっ始めるなよ!」

赤い顔の惣一郎。

「別にええやろ。タイミングやタイミング」

悪びれる事もなくドラミは、腕に刻まれたタトゥーの様な紋様を見ていた。

「ついでや、他のも行っとくか?」

「他の精霊も? また水みたいな条件があるのか?」

「せや、イフリートは火。シルフは風や。ユグポンの中でも出来るやろ」

「水も出来ただろ……」

「せやからお湯しかないやろが! 何処にあんねん大量の水!」

「大量って普通、湖ぐらいかと思うだろ! それにもうひとりの精霊忘れんなや!」

「はぁ、ノームの事かい!」

「そうだよ!」

「ノームおるやろがい!」

「はぁ、何処にだよ!」

「村にイワオ親子がおるやろがい!」

えっ、精霊だったの! あの親子……

恥ずかしさから喧嘩へと発展した惣一郎は、以前ギネアが連れてきた奴隷だった岩の様な肌の親子が、精霊ノームだった事に驚く。

「せやから後2人の精霊で終いや!」

「そ、そうですか…… で、どうするのよ?」

広場で火を炊けっとまたお手軽な精霊召喚が始まる。

薪を焚べ、高々と燃え上がるキャンプファイヤーを囲み、村人が注目する中、ドラミが魔法陣を展開して祝詞をあげる。

すると火の中から、オレンジの火に包まれたスライムの様な可愛らしい精霊がぴょんっと飛び跳ね出る。

「なななな何よ…… ここここんな所に呼び出して…… たたたただじゃ働かないわよ!」

ガタガタ震える火の精霊。

これまた惣一郎の予想を裏切る見た目だった……

ビビり過ぎだろ……

ドラミが事情を話すと、イフリートを含む全員が惣一郎に注目する。

「えっ、なに?」

「褒美やアホ」

さいですか……

惣一郎は混合ガソリン4ℓ缶を差し出す。

ご賞味あれ……

ゴクゴクゴク。

ボワッ!「ウンマーーー! こんな力が出る飲み物初めて飲むよ! いいよ、いつでも僕を呼び出して!」

カンカンを抱えたまま、火の中に帰っていくイフリート。

引火に気を付けてね……

ドラミは腕に増えた紋様を見て、

「次は風や!」

っと、やる気満々であった。

風か…… 何あげたら喜ぶんだ?

「何しとんねん……」

「いや何あげようかと……」

「アホ! その前にはよ風を起こさんかい!」

興奮状態のドラミに気押され、大型換気扇のファンを出し回し始める惣一郎。

緩やかな風は突風になり、黒髪を振り乱し魔法陣を出すドラミ。

風で祝詞も聞こえない。

すると風の中をふわふわ揺れる精霊が現れる。

小さな羽を付けて、楽しそうに飛び回る妖精。

コレこそファンタジー!

花びらの様な頭に虫の様な羽。

小さな裸の妖精は突風の中、風に乗り楽しそうに飛んでいた。

「あ~楽しかった! いい風だったよ」

ドラミがまた事情を話す。

「ん~ 何くれるの?」

またも注目される惣一郎。

正直全く思い付かない……

「えっと、どんなのが欲しいのかな……」

「えっ、望みを聞いてくれるの?」

この言葉に顔色を変えるドラミ!

「あかん! 精霊の望みを聞いたらダメや!」

可愛らしかった妖精が、黒く濁る様に大きくなり、不気味に笑い始める。

構えるベンゾウと弁慶!

スワロも杖を構え、村人を下がらせる!

ツナマヨもミコ達も武器を手に精霊を囲む!

惣一郎は何が起きたのか、驚き固まっていた。

「さて、何を望もうか!」

それは低く太い声だった。




聞いてないよ………





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