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第八章

二十六話【崩壊】

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現れた応援にホッとするガオ。

セシルが叫ぶ!

「外壁の外にも!」

刀を構えるツナマヨが、瞬間的に指示を飛ばす!

「スワロ殿、外壁の外を頼む! ミコは下がれ! ベンゾウ、弁慶! ここは頼むぞ! 私は岩山の上から来るのを抑える!」

ピノとクロが岩山の上から襲い来る蟲に、光剣を飛ばしなんとか持ち堪えていた。

いつの間にか集まる蟲はゴキブリだけじゃなく、色んな蟲が混じっていた。

その中にハイブリッドの姿も見える。

スワロの捜索に森に出ていたグルミターナの人間が戻りつつあったのだ。

「アジトに少ないと思ったのだ!」

岩山を駆け上がるツナマヨ。

ベンゾウと弁慶は、ロンシールから目を離さない。

光剣を足場に外壁に登るスワロ。

数匹の大型の蟲の足元に、ゴキブリや人の面影を残す上位種を目にする。

「流石ドラミ殿の作った外壁だな!」

ピノの光剣とは比べ物にならない数の光剣に雷を纏わせ、空に浮かべ始めるスワロ。

「お姉様……」

疲れ切ったピノの表情も、明るく復活する。

下がるミコを受け止めるガオ。

セシルが直ぐに、回復魔法を唱え始める。

ベンゾウの背後に、岩山から転げ落ちる蟲の残骸。

洞窟から現れ、ゲルドマの斧を持つ弁慶に、ロンシールが静かにグルミターナの崩壊を理解する。

「いや、また始めるだけだ……」

ボソッと言葉にしたロンシールが、ふたりに剣を向け構える。

「勇者は? あの男はどうした」

せめて奴だけでも……





重い足取りで階段を登る惣一郎が、ゲルドマ達と戦った広い空間に出る。

ロンシールが蟲を集め、強制的に次元を開かせた場所。

この大陸から蟲を送り込み、勇者を呼ぶ為だったのか……

奴らを倒せば、ベンゾウ達の世界に厄災が現れる事も減るだろう……

まさか厄災が人為的な物だったとは……

別の世界での事が繋がっていた事に、気が滅入る惣一郎。

上に登る階段を上がると惣一郎は、無数の鉄球を出し、空間の天井を撃ち始める!

入れ替わりマシンガンの様に打ち付ける鉄球は、次第に天井を崩し始め、瓦礫の山が空間の中央に出来ていく。

杖を構え集中する惣一郎。

徐々に崩れる瓦礫は大きくなっていき、地鳴りが聞こえ始めると、一気に崩壊を始める!

鉄球を引き連れ、慌てて出口へ向かう惣一郎。

途中から杖に乗り、一気に出口へ向かう。

激しい地鳴りと崩壊音が惣一郎を追いかけて来る。

やり過ぎたと焦る惣一郎が、勢い良く洞窟を飛び出すと、そこにはボロボロになった蟲が混ざる銀髪のダークエルフが黒い剣にもたれ、なんとか立っているといった状況であった。

外壁の上ではスワロが手を振り、外は夥しい数の蟲の死骸で埋め尽くされている。

旋回し戻ると、岩山の上にはツナマヨが肩を揺らし、鞘に刀を仕舞う。

クロの背中でぐったりするピノも見えた。

みんな無事の様だ。

セシルに治療を受けるミコの元に降りる惣一郎。

岩山の向こうで大きな音を立て、地面が崩れ落ち始める。

ツナマヨとクロが急いで岩山を降り始める。

「怪我の具合は?」

脇腹を抑えるガオが「ガオ」っと言うと、俺は大丈夫っと聞こえる。

セシルが膝に乗せたミコを見て、

「もう少し時間がかかりますが、大丈夫です」

っと答える。

ミコは笑っていた。

「大した事ねーや」

惣一郎は回復薬をミコに渡し振り返る。

弁慶とベンゾウに挟まれ、膝を突くロンシール。

「お前がロンシールか?」

額から流れる血で片目を塞ぐロンシールが、震える脚でまた立ち上がり答える。

「妾が魔女ロンシールだ…… 貴様が勇者だな」

ベンゾウと弁慶に怪我はなさそうだ。

流石にこのふたり相手では、魔女でも勝てまい。

「終わりだ。魔女に操られて復讐したいんだろうが、無意味だ。復讐したい勇者は魔女を封印しお前らが喰った御神体だ」

「そんな事知っておるわ!」

「魔女の残留思念に振り回されているだけなんだぞ!」

「煩い! 何も知らぬ癖に、妾達がこの世界でどう生きて来たか貴様に何がわかる!」

声を荒げるロンシールに反応するベンゾウと弁慶。

惣一郎が幻腕を出し、ふたりを止める。

「何も知らないし知りたくもない…… ただな、関係ない人達を巻き込むな!」

無数の鉄球が惣一郎の背後から、ロンシールを襲う!

硬い剣に弾かれるも次々に襲う鉄球が、次第にロンシールの外殻を砕き、押し倒す!

剣を手放し大の字で天を仰ぐロンシール。

夜空は東から薄明るくなり始めていた。







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