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第七章

二十二話【援軍】

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「クロ、遅い!」

戦いながら見向きもせずベンゾウが声を上げる。

やれやれと言った顔で戦闘の中に入って行く大きな白い犬神。

「えっ…… クロがなんでここに?」

地面に尻を着く間抜けな姿勢のまま惣一郎が、アホみたいな顔で呟く。

その惣一郎の前に、2本の見覚えのある鉈を持った黒猫の獣人が、

「話してる場合じゃないだろ旦那!」

っと鉈を振り回し、回転しながら飛び上がる!

「ミコ!」

すると惣一郎を後ろから抱き起こすライオン顔の獣人が、ガオっと声をかけ、乱戦の中に消えて行く。

「ガオ……」

「ミコの言う通り、話は後だ惣一郎殿」

腰の日本刀に手をかける熟女が、腰を落とし低い姿勢のまま残像を残す!

「ツナマヨ…」

「お久しぶりです、惣一郎様!」

すらっとした白髪の美人が、銀の杖を持って笑みを向ける。

「まさかセシ… ぶーーー!」

後ろから筋肉に挟まれ、息が漏れる惣一郎。

「旦那様ぁ~ 逢いたかったぞ!」

大きな胸で挟まれ振り返る事も出来ない惣一郎。

その惣一郎の顔に上から涙がこぼれ落ちる。

惣一郎も自然と涙が溢れ出す。

「弁慶……」

涙で滲む景色に、目深にフードを被る呪羅流民を持った女性も映る。

ピノまで……

みんな…… みんなが、なんでここに……

理解出来ない惣一郎の視線の先に、ドラミがニヤニヤとこちらを見ていた。

「アタイの旦那様によくも……」

惣一郎を下ろす弁慶の体が赤く膨らんでいく。

腰に下げられたポーチから黒い鉄の塊を握り出し、後ろに構える。

しなる筋肉から音が聞こえそうだった。

突然現れた犬神達に、一気に押され気味の上位種達。

顎の砕けた傭兵が柄と鉄球を両手に持ち、繋がった鎖でミコの鉈の練撃を受ける。

素早い槍の連続の突きは、ツナマヨの刀に難なくいなされ、ベンゾウを見失う傭兵は一本、また一本と四肢を失う。

ガオの突き上げる左フックに、手に持つ剣を弾き上げる傭兵はクロに脚を噛まれ、グルンっと宙を舞う。

上位種8人相手では分が悪かったが、タイマンならベンゾウの敵じゃない。

惣一郎は夢でも見ている様だった。

「おのれ……」

戦斧を構える黒いクロカタゾウムシの人型。

振り上げた大きな斧を惣一郎の前で構える弁慶に向け、音を置き去りに打ち込む!

それに合わせた筋肉が軋む弁慶の侃護斧が、ゲルドマの斧を撃ち返す!

侃護斧は戦斧を砕き、伸び切った弁慶のしなやかな筋肉が繋ぐ右腕を残し、くるりと背中を入れ替えると、さらに遠心力に乗せ侃護斧が大きな弧を描く!

武器を失ったゲルドマが、すかさず両手4本を前に体を丸め防御姿勢に!

ドゴォ!

ガードした4本の腕を砕き、後ろに吹き飛ぶゲルドマ!

敵わぬと後退した3匹の傭兵の元に滑り行く。

4匹ともボロボロの体であった。

その4匹を囲むベンゾウ達。

クロは牙を剥き、ツナマヨは居合の構えだ。

ミコも毛深く獣化しており、ガオも構えを崩さない。

弁慶の一撃で気を失ったのか、脚だけになった黒い蟲人間を支えるトンボの目が、人の目に変わって行くと、いつの間にか現れていた足元の魔法陣が激しく光り、一瞬にして姿を消す。

逃したが惣一郎は今、それどころじゃなかった。

バラバラの蟲の死骸を拾い上げるガオ。

「お前ら……」

話しかけた惣一郎を、またも駆け寄る筋肉が力強く抱き寄せる!

「ああぁ旦那様! やっと、やっと会えたぞ!」

惣一郎を抱き上げ、顔中にキスをしまくる弁慶。

惣一郎が気を失っている事に気付くのは、少し後の事であった……






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