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第七章

十話【謎多き少女】

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「おのれ勇者め!」

急に勇者への恨み節を声に出すダークエルフの少女。

身動き出来ないスワロが背後から聞こえた声に心配になる。

『主人? 主人に何かあったのだろうか…… だが今はこちらも危機なのだ!』

暗い部屋で椅子に座り、濡れた布で体を拭かれるスワロ。

もう1人の少女が……

「さぁ女神様、綺麗になりましたよ」

っと動けないスワロに服を着せてくる。

至れり尽くせりなのはいいが一方通行の善意に、膀胱の限界近いスワロ。

『ダメだ破裂しそうだ! 早くトイレに行かせてくれ……』

「さぁ女神様、お休み前に厠へ参りましょう」

『助かった、早く!』

手を引かれ部屋を出るスワロが、向かいの小部屋に入ると、少女がドア越しに指示を出す。

「女神様、終えましたらノックをして下さい」

『動く! 声は出せぬが今なら逃げ出せるのに…… クソ! 首輪も外れん……』

だが我慢も限界であり、逃げ出せる窓もない。

ドアの向こうにはネネルという少女が居るだろう。

彼女達の指示に抗う事は出来ない。

トイレだけが唯一、体が自由になるのだが……

石畳の上に桶が置かれており、その下を水が流れている。

拳しか通らない水路の穴では、抜け出す事は出来ない。

コールなら届くだろうか?

今なら使えるのだが、レーテウルを無くしてから魔力も弱くなっているし、杖も無い。

魔石のかけらを埋め込んだ魔導具も無しに、用を足しながらコールを惣一郎に向け送るスワロ。

『主人の瞬間移動が使えれば……』

するとドアの向こうから声が聞こえる。

「ネネル、勇者がルドの村まで来ているわ」

声はもう1人のキシルと言う少女のものだった。

「ここがバレたのかしら?」

「分からないわ。たまたまかも知れない」

「ロンシール様はなんて?」

「[ゲルドマ]を送るそうよ」

『ゲルドマ…… 確かあのフードを被った大男』

「彼で大丈夫かしら?」

「勇者相手に誰が行っても同じ事だわ」

「「 ウフフフッ 」」

『当たり前だ! 主人に敵う者など……』

「女神様、魔力を練っても無駄ですわよ」

『バレてた!』

コンコン。



ベッドに横になるスワロ。

ネネルに変わりキシルが椅子に座り、見張っている。

寝る様に指示をされ、瞼まで開かない。

『まるで人形ではないか…… どうすれば…… 主人よ…… Zzzz……』

睡眠まで指示に従うスワロ。

スワロが眠りにつくと、キシルが部屋を出る。

廊下には長い銀髪をなびかせるダークエルフがいた。

「女神様は寝たか」

「はい、ロンシール様」

「教皇を動かし、ゲルドマが信者共と今し方ここを出た」

「では、私達も?」

「ああ、備えてくれ」

「畏まりました」

「早く勇者を倒さねば……」

ロンシールを見送るキシルが部屋に戻る。

するとすぐにネネルも部屋に戻って来る。

「ロンシール様はなんて?」

「備える様にだってさ」

「備える? 私達も動くの?」

「女神様復活を夢見て、焦っているのよ」

「また私が減るじゃない」

「また増やしましょ」

「そうね……」

「「 ウフフフッ 」」






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