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第七章
九話【消えたルドの村】
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村から離れ、森の中に身を隠す惣一郎。
サーチで安全を確認すると種を出し、中に入る。
「惣一郎様!」
「旦那様!」
慌ててミネア達が出迎える。
中庭では大勢の村人が集まり、目を怪我した男を囲んでいた。
「惣一郎さん、一体何が!」
ブラギノールさんが状況が分からないからか、惣一郎に説明を求める。
「魔女だ。魔女に寄生されると自由を奪われ操られるんだ」
「魔女? 魔女は仲間では」
「本物の魔女だ」
混乱するブラギノールさん。
惣一郎は目を失った男に近付くと、アイテムボックスから回復薬大を取り出す。
四肢の欠損は無理でも、瀕死から怪我を治すと言う回復薬だ。
高価な物だが惜しみ無く男に飲ませる惣一郎。
見る見る回復し傷口が塞がるが、失った眼球そのものは元には戻らなかった。
「すまん、目までは治せないみたいだ」
「いえ、あの痛みが嘘の様です。混乱してますが、私にもその魔女に乗り移られた記憶はありますので、助けてもらっただけでも十分感謝しております」
「魔女に乗り移られた時の事を詳しく教えてくれないか?」
「ええ、宴の最中、急に首に激痛が走りまして、すぐ飛び立つ虫が見えたのでハチに刺されたと思っていたのです」
やはりあのハエが刺したのか、ハエの癖に。
「痛みは直ぐに治ったので、気にしなくなったのですが、木の根に拘束され、混乱していたら目が急に燃える様に熱くなり、体が全く動かせなくなったのです。意思とは関係なく話す自分に気がおかしくなりそうでした」
「ずっと意識はあったのか? 何か魔女について感じなかったか?」
「何も、ただ冷たく暗い感情が全身を包んで行く様に感じて…… そしたら急にまた目に激しい痛みを感じて」
「そうか、ありがとう」
「いえこちらこそ、ありがとうございます! 目は見えませんが、あのままあの感情に浸かっていたら、死ぬよりも辛かったかと」
会話を黙って聞いていた村人が、やっと状況を理解出来た様で、また助けられたと感謝する。
「ドラミ! すまないがカン達とみんなの仮住まいを頼む」
「ああ、任せとき……」
暗いドラミの返事。
村人が「仮住まいとは、村にはいつ戻れるのでしょうか?」っと聞いて来る。
その答えをドラミは森の木を通じて知っていたからだ……
「大型の蟲が何匹も向かって来てたんだ。少し様子を見よう」
惣一郎も巻き込んでしまった罪悪感に、気持ちが沈む。
「ミネア、ジル。みんなの事を頼む」
少し疲れたと言う惣一郎が、ミネア達にその場を任せ去って行く。
風呂上がりの熱った体に、ビールを流し込む惣一郎。
膝の上に頭を乗せてベンゾウは、ソファーで横になってアイスを食べていた。
魔女の目的が見えない……
小さな虫にまで寄生し、各地に情報網まで広げているのか?
蟲をも操り村を襲わせる事も容易い。
何年も時間をかけ、失った力を取り戻すと生き続ける意味は?
人を操り、魔女崇拝者を集め組織する意図は?
幸い、惣一郎達が大陸を目指してる事は、まだバレてはいない様だったが、近付いてる事がバレれば、仲間の転移陣でスワロを連れ、逃げられる可能性も高い。
「クソ、管理者め! 何が蟲の数を減らすだけの簡単なお仕事だ!」
そんな事は言ってない……
「管理者? 管理者ってなに?」
「お前の夢に出て来て、お前は勇者だって言ってた奴だよ」
「ああ、あのおっさんか…… おばさんだったっけ?」
「知るか! お前の夢だろ」
「ねぇ、ご主人様!」
「ん?」
「ダンジョンないの? ダンジョンならあの人の目、治す薬あるかも」
「ないのよコッチには……」
「じゃ向こうに帰って、取って来るしかないね!」
「そう上手く行かないのよね~」
「何で?」
「俺もスワロも、向こうで死んじゃったでしょ。なんか向こうの世界との繋がりが切れてるから俺たちは帰れないのよ」
「そうなの?」
「うん…… まぁベンゾウはこっちが片付いたら送るつもりだから安心しろ」
「えっ、ベンゾウもこっちに居るよ! ご主人様といる」
「向こうはどうすんのよ。弁慶達も待ってるだろ? 勇者が居ないと困るだろ向こうだって」
「ん~ じゃ、そん時だけ帰る」
「里帰りじゃないんだから……」
早く魔女倒して、スワロ助けないとな……
つか、アイツも勇者の癖に簡単に攫われやがって、どんだけ心配させんだ!
段々ムカついて来たぞ!
サーチで安全を確認すると種を出し、中に入る。
「惣一郎様!」
「旦那様!」
慌ててミネア達が出迎える。
中庭では大勢の村人が集まり、目を怪我した男を囲んでいた。
「惣一郎さん、一体何が!」
ブラギノールさんが状況が分からないからか、惣一郎に説明を求める。
「魔女だ。魔女に寄生されると自由を奪われ操られるんだ」
「魔女? 魔女は仲間では」
「本物の魔女だ」
混乱するブラギノールさん。
惣一郎は目を失った男に近付くと、アイテムボックスから回復薬大を取り出す。
四肢の欠損は無理でも、瀕死から怪我を治すと言う回復薬だ。
高価な物だが惜しみ無く男に飲ませる惣一郎。
見る見る回復し傷口が塞がるが、失った眼球そのものは元には戻らなかった。
「すまん、目までは治せないみたいだ」
「いえ、あの痛みが嘘の様です。混乱してますが、私にもその魔女に乗り移られた記憶はありますので、助けてもらっただけでも十分感謝しております」
「魔女に乗り移られた時の事を詳しく教えてくれないか?」
「ええ、宴の最中、急に首に激痛が走りまして、すぐ飛び立つ虫が見えたのでハチに刺されたと思っていたのです」
やはりあのハエが刺したのか、ハエの癖に。
「痛みは直ぐに治ったので、気にしなくなったのですが、木の根に拘束され、混乱していたら目が急に燃える様に熱くなり、体が全く動かせなくなったのです。意思とは関係なく話す自分に気がおかしくなりそうでした」
「ずっと意識はあったのか? 何か魔女について感じなかったか?」
「何も、ただ冷たく暗い感情が全身を包んで行く様に感じて…… そしたら急にまた目に激しい痛みを感じて」
「そうか、ありがとう」
「いえこちらこそ、ありがとうございます! 目は見えませんが、あのままあの感情に浸かっていたら、死ぬよりも辛かったかと」
会話を黙って聞いていた村人が、やっと状況を理解出来た様で、また助けられたと感謝する。
「ドラミ! すまないがカン達とみんなの仮住まいを頼む」
「ああ、任せとき……」
暗いドラミの返事。
村人が「仮住まいとは、村にはいつ戻れるのでしょうか?」っと聞いて来る。
その答えをドラミは森の木を通じて知っていたからだ……
「大型の蟲が何匹も向かって来てたんだ。少し様子を見よう」
惣一郎も巻き込んでしまった罪悪感に、気持ちが沈む。
「ミネア、ジル。みんなの事を頼む」
少し疲れたと言う惣一郎が、ミネア達にその場を任せ去って行く。
風呂上がりの熱った体に、ビールを流し込む惣一郎。
膝の上に頭を乗せてベンゾウは、ソファーで横になってアイスを食べていた。
魔女の目的が見えない……
小さな虫にまで寄生し、各地に情報網まで広げているのか?
蟲をも操り村を襲わせる事も容易い。
何年も時間をかけ、失った力を取り戻すと生き続ける意味は?
人を操り、魔女崇拝者を集め組織する意図は?
幸い、惣一郎達が大陸を目指してる事は、まだバレてはいない様だったが、近付いてる事がバレれば、仲間の転移陣でスワロを連れ、逃げられる可能性も高い。
「クソ、管理者め! 何が蟲の数を減らすだけの簡単なお仕事だ!」
そんな事は言ってない……
「管理者? 管理者ってなに?」
「お前の夢に出て来て、お前は勇者だって言ってた奴だよ」
「ああ、あのおっさんか…… おばさんだったっけ?」
「知るか! お前の夢だろ」
「ねぇ、ご主人様!」
「ん?」
「ダンジョンないの? ダンジョンならあの人の目、治す薬あるかも」
「ないのよコッチには……」
「じゃ向こうに帰って、取って来るしかないね!」
「そう上手く行かないのよね~」
「何で?」
「俺もスワロも、向こうで死んじゃったでしょ。なんか向こうの世界との繋がりが切れてるから俺たちは帰れないのよ」
「そうなの?」
「うん…… まぁベンゾウはこっちが片付いたら送るつもりだから安心しろ」
「えっ、ベンゾウもこっちに居るよ! ご主人様といる」
「向こうはどうすんのよ。弁慶達も待ってるだろ? 勇者が居ないと困るだろ向こうだって」
「ん~ じゃ、そん時だけ帰る」
「里帰りじゃないんだから……」
早く魔女倒して、スワロ助けないとな……
つか、アイツも勇者の癖に簡単に攫われやがって、どんだけ心配させんだ!
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