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第七章

四話【ルドの災難】

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湯船で足を伸ばす惣一郎。

癒される貴重な時間を飛沫を上げ、ベンゾウが入ってくる。

コイツもマナーがなってない……

「ご主人様ぁ~♡」

甘えてくるベンゾウにゲンコツが落ちる。

「風呂は静かに入れ!」

ケラケラケラ。

「何がおかしいんだ」

「痛っ!て感じより、おつー!って感じがするんだもん」

何だそれ? ゲンコツの感想?

「今日はどうだった、村で過ごしてみて」

「うん、ドラミを手伝っててね…… あっ!違う。訓練してた! そう訓練! みんな一生懸命だったよ!」

ん?

「タイガとジャニーは、リヴォイとサヴォイぐらいの強さだね!」

「そうか、まだ蟲相手はキツそうか?」

「ひとりじゃ無理」

そうか……

やはり他の傭兵団にも、あたってみるべきか……

「ご主人様、早くスワロ助けないとね!」

「ああ、必ず見つけるぞ」

必ず……





翌朝、宿の惣一郎の部屋にブラギノールさんが迎えに来る。

「おはようございます。準備出来てますか?」

「ええ、いつでも出発出来ますよ!」

宿に朝食は無く、カウンターの女将の旦那に挨拶と鍵を渡し、宿を出るふたり。

最後にひと目会いたかったが、残念だ……



朝市で賑わう通りを抜け、転移屋に向かう。

ブラギノールさんの案内で転移して行くと、ルドの一つ手前[オッタリ]っと言う町で、騒ぎに巻き込まれる。

慌ただしく動く転移屋の職員達に、詰め寄る大勢の人集り。

「これは、何の騒ぎなんですか?」

ブラギノールさんが旅人らしい人に話しかける。

「閉鎖するらしい! まだ人が大勢残っているのに」

「ルドの村が、襲われてるらしいんだ!」

「蟲だ。急にルドの村に蟲が出たらしいんだ! 急な事で避難させるより、蟲の被害を恐れて閉鎖するって言い出したんだよ!」

「ルドの村が!」

驚くブラギノールさん。

惣一郎はすぐに転移屋の職員をひとり捕まえて、人気のない場所に行くと幻腕を出す。

「急ぎ村に行きたい! 開けてくれるか?」

察した職員の猫がコクコクと顔を縦に振り、惣一郎を部屋に案内する。

「惣一郎さん! どちらに?」

呼び止めるブラギノールさんに惣一郎は、薬が役に立つかも知れないか……っと、

「ルドに行く、ついてきて!」

っと、ブラギノールも連れて行く。




ルドの村に着くと、村人が転移屋に押し寄せていた!

突然現れた惣一郎とブラギノールさんに、驚く村人が、そのブラギノールさんに気付く。

「ブラギノールさん良い所に! 傷薬を」

怪我した村人が数人いた。

惣一郎は白いローブを羽織り、幻腕を出し声を上げる。

「みんな! 落ち着いてくれ。村にまだ人はいるのか!」

その姿に職員が驚き声を出す。

「勇者だ! 勇者様が来てくれた!」

手当を始めていたブラギノールさんも村人のその声に、惣一郎を見て驚く。

すでにサーチを張り、村の様子を把握する惣一郎。

転移屋を出ると、近くの土の上に種を投げ置き、木が現れると中から惣一郎のコールで準備していた仲間が出てくる!

「ドラミ! タイガ達とここを守れ! ベンゾウと俺は蟲を倒す!」

サーチに反応した蟲は村の外壁を破り、中に数匹ほど入り込んだ蟻だった。

子供サイズの蟻は赤黒く、警戒しながら村に広がり、村人を襲っていた。

蟻用の殺虫剤をいくつか投げる様に置き、消える惣一郎。

追いかける様にベンゾウも消える。

すぐに蟻を見つける惣一郎は、蟻に向かって槍を放つと、刺さった蟻が爆ける!

臭っさ!

刺激臭と地面で煙を上げる液体。

ジバクアリか!

「ベンゾウ斬るな! 毒を撒き散らし……」

目の前で蟻を斬るベンゾウは、蟻が自爆するより早く、他の蟻を斬っていた。

「なんか言った? ご主人様」

「うん、頑張ってね」

「はーい!」

要らぬ心配だった……



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