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第五章
十六話【嵐の前の…】
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蟲の巣を目指し歩く惣一郎は、キッドからの情報をゴゴから聞いていた。
崖の中腹にある洞窟に住む蟲は、また蟻の類いと思っていた惣一郎だったが、針の付いた黒い飛ぶ蟲との事。
蟻に姿は似ているが、蜂の類いであった。
スズメバチでは無さそうなので、初陣としては物足りないかも知れない。
歩きながら蜂用の殺虫剤を購入する惣一郎だったが、武器を手にようやく活躍出来ると張り切る後ろのタイガ達に、少し様子を見てからでもいいかと思えた。
しばらく、鬱蒼と生茂る森の中を進んでいくと、それは突然現れた。
大きなコオロギの死体の上に立ち、羽を小刻みに振動させる黒い人形の蟲。
いきなり王かよ……
警戒しこちらを睨みつける、黒い大きな目。
ゴゴとジジが盾を構え、前に壁を作る!
ベンゾウが出ようとするのを手を広げ、止める惣一郎。
猫背の王が腰から生えた腕で死体を持ち上げると、自分の何倍も大きなコオロギの死体を軽々と持ち上げ、飛び去って行く。
襲って来ない?
方角的に、巣に持ち帰ったのだろう。
重いのか、地上から軽く浮く程度の高さで、木々の間をスイスイと縫う様に消えて行く。
「旦那、いきなり上位種が出たぞ……」
棍を構えたままのタイガの声は、驚きを隠せずにいた。
すぐにサーチを飛ばす惣一郎。
蟲は、あっという間にサーチの範囲外まで飛び去って行く。
「主人よ……」
「ああ、追うぞ」
惣一郎達は、蟲が飛び去った方角へと森を進んで行く。
みんなの顔色も真剣な物になっていた。
陽が落ち始めた頃、今日はこの辺りで休もうと種を出す惣一郎に、ジジが、
「惣一郎様、訓練の為にも野営しましょう」
っと野宿を提案してくる。
確かにそう言った訓練も必要なのかと、提案を受け入れる惣一郎。
テキパキと火を起こし、見張りと寝床の準備に別れる騎士達。
移動中に捕まえた鹿の様な物で、ハクが食事の準備を始める。
捕らえて直ぐ血抜きされた鹿を、例のナイフで見事に切り分けていくハク。
惣一郎達は黙ってその手際を眺めていた。
香草と一緒に焼かれた肉は、硬いがワイルドな味わいで、惣一郎にとっては力のみなぎる夕食となった。
「お気に召しましたか?」
「ああ、顎が疲れるが、美味い!」
ベンゾウも夢中で齧り付いていた。
「見張は我々が致しますので、食べたら先にお休み下さい」
細い目で肉を切り分ける、ハク。
焚き火の灯りが照らす白髪の女性は、美しくも逞しく映る。
ドラゴンがかき集めた柔らかい葉の上に、固い麻布を敷き、寝床が作られると惣一郎達はその上に横になる。
離れて同じ物が3つ。
夜が更け、パチパチと焚き火の音だけが静かな森に響いていた。
最初の見張は、ゴゴとジジ。
惣一郎も寝ながら、サーチで辺りを警戒していた。
昼間見た上位種に、すでにここは蟲のテリトリーと知っての事でもあったが、静かな森に違和感もあり、両脇で抱き付き寝息を立てるふたりと違い、中々寝付けない惣一郎だった。
明け方、ウトウトしだす惣一郎に、見張のドラゴンが「旦那様、森の様子が」っと、声をかけて来る。
すぐに起きる惣一郎が目にしたのは、霧がかかり視界の悪くなった森であった。
「霧がどうかしたか?」
「いえ、霧の中に何か……」
崖の中腹にある洞窟に住む蟲は、また蟻の類いと思っていた惣一郎だったが、針の付いた黒い飛ぶ蟲との事。
蟻に姿は似ているが、蜂の類いであった。
スズメバチでは無さそうなので、初陣としては物足りないかも知れない。
歩きながら蜂用の殺虫剤を購入する惣一郎だったが、武器を手にようやく活躍出来ると張り切る後ろのタイガ達に、少し様子を見てからでもいいかと思えた。
しばらく、鬱蒼と生茂る森の中を進んでいくと、それは突然現れた。
大きなコオロギの死体の上に立ち、羽を小刻みに振動させる黒い人形の蟲。
いきなり王かよ……
警戒しこちらを睨みつける、黒い大きな目。
ゴゴとジジが盾を構え、前に壁を作る!
ベンゾウが出ようとするのを手を広げ、止める惣一郎。
猫背の王が腰から生えた腕で死体を持ち上げると、自分の何倍も大きなコオロギの死体を軽々と持ち上げ、飛び去って行く。
襲って来ない?
方角的に、巣に持ち帰ったのだろう。
重いのか、地上から軽く浮く程度の高さで、木々の間をスイスイと縫う様に消えて行く。
「旦那、いきなり上位種が出たぞ……」
棍を構えたままのタイガの声は、驚きを隠せずにいた。
すぐにサーチを飛ばす惣一郎。
蟲は、あっという間にサーチの範囲外まで飛び去って行く。
「主人よ……」
「ああ、追うぞ」
惣一郎達は、蟲が飛び去った方角へと森を進んで行く。
みんなの顔色も真剣な物になっていた。
陽が落ち始めた頃、今日はこの辺りで休もうと種を出す惣一郎に、ジジが、
「惣一郎様、訓練の為にも野営しましょう」
っと野宿を提案してくる。
確かにそう言った訓練も必要なのかと、提案を受け入れる惣一郎。
テキパキと火を起こし、見張りと寝床の準備に別れる騎士達。
移動中に捕まえた鹿の様な物で、ハクが食事の準備を始める。
捕らえて直ぐ血抜きされた鹿を、例のナイフで見事に切り分けていくハク。
惣一郎達は黙ってその手際を眺めていた。
香草と一緒に焼かれた肉は、硬いがワイルドな味わいで、惣一郎にとっては力のみなぎる夕食となった。
「お気に召しましたか?」
「ああ、顎が疲れるが、美味い!」
ベンゾウも夢中で齧り付いていた。
「見張は我々が致しますので、食べたら先にお休み下さい」
細い目で肉を切り分ける、ハク。
焚き火の灯りが照らす白髪の女性は、美しくも逞しく映る。
ドラゴンがかき集めた柔らかい葉の上に、固い麻布を敷き、寝床が作られると惣一郎達はその上に横になる。
離れて同じ物が3つ。
夜が更け、パチパチと焚き火の音だけが静かな森に響いていた。
最初の見張は、ゴゴとジジ。
惣一郎も寝ながら、サーチで辺りを警戒していた。
昼間見た上位種に、すでにここは蟲のテリトリーと知っての事でもあったが、静かな森に違和感もあり、両脇で抱き付き寝息を立てるふたりと違い、中々寝付けない惣一郎だった。
明け方、ウトウトしだす惣一郎に、見張のドラゴンが「旦那様、森の様子が」っと、声をかけて来る。
すぐに起きる惣一郎が目にしたのは、霧がかかり視界の悪くなった森であった。
「霧がどうかしたか?」
「いえ、霧の中に何か……」
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