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第四章
十七話【空気を読まぬ者】
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物珍しい食料品などを、ジルの説明を元に買いながら進んでいく惣一郎とスワロ。
売れた店から店仕舞いしていく露店街。
どの店も扱う商品は然程多くは無かった。
人族やツノの生えた獣人が多い中心街を進んでいくと、雑貨屋が目に付く。
漆喰の様な塗り壁の家が並び、どこも店先の椅子に店主らしい人が座っている。
農具や工具、釘などを売る店の前で惣一郎は、奥のナイフに目が止まる。
「ジル、あれがそうか?」
「ええ、その様です」
惣一郎が知る、緑のガラスの様な刃では無かったが、ケースに貼られた値段が、もしやと思えた。
鉛の様な鈍い鉄色のナイフ。
値段は金貨470枚。
ドワーフの様に欲しいから買ってくれ!っと、気軽に購入を頼める金額では無かった。
見せて欲しいと店員に話しかける惣一郎。
太ったご婦人がニコニコと、ケースに手をかざすと魔法陣が浮かび、ガラスケースが消えていく。
魔法で保護されていた様だ。
手に取り渡して来る店主から、ナイフを受け取ると、ジルが魔力を流す様に勧める。
ズシリと重いナイフに惣一郎が魔力を流すと、刃の部分から緑色に光る魔力がナイフ全体に薄い水を纏う様に広がる。
「なるほど……」
間近で見るとキラキラと刃先から、常に魔力が流れているのがわかる。
惣一郎は店主に、蟻の魔石2個で在庫の2本と交換出来るか交渉する。
金貨より儲けが出るのだろう、店主も喜んで交渉に応じる。
大量に魔石を持つ惣一郎も、換金して大量の金貨で払うよりは楽だろう。
過足分で店主に、牛や羊を買いたいと相談すると、知り合いの農家を紹介してくれるという。
雑貨屋の店主に聞いた農家を訪ねに街の奥に歩いていくと、いい匂いが漂って来る。
食堂だろう店先にテーブルをはみ出し、料理を楽しむ長閑な風景が街の色を変える。
ベンゾウならすぐに走り込むだろう。
蟲に怯え、何処か暗い雰囲気のこの世界で、惣一郎は久々に和んでいた。
「ちょっと食ってくか?」
喜ぶふたりを連れ、店に入って行く惣一郎。
注文をジルに任せ、まったりとした時間を過ごしていると、斜向いの店から皿の割れる音と罵声が聞こえだす。
店にいた全員が視線を向ける。
「ふざけんじゃねぇ~!」
騒がしい店から出てきた男が広い通りに出ると、腰の剣を抜き出てきた店に向け構える。
惣一郎は店のアトラクションの様な気分で、寸劇を見ていた。
剣を向ける店の奥から、カウボーイを思わせる男がゆっくりと歩いて現れる。
いや服はカウボーイとは全然違うのだが、帽子だけがそう思わせた。
男の後ろには店員だろう、若い娘がその背中に縋る様に張り付いている。
「お前さん、店を間違っちゃいないか? ここはそういう店じゃないんだぜ」
その言葉だけで、色々察しがつくセリフだった。
気がつくと、そのコテコテの寸劇に注目しているのは惣一郎達だけであった。
周りは直ぐに平常運行。
いつもの事の様に客は食べ始め、店員は料理を運んで来る。
「ヤロ~、タダじゃおかね~!」
男は剣を振り上げ、カウボーイに襲いかかる!
帽子で顔半分を隠す男は丸腰で笑みを浮かべる。
次の瞬間!
剣に落ちた落雷が男の動きを止め、隣に座っていた空気を読まないダークエルフが杖を構え立っていた!
「武器を持たない者に剣を向けるとは、卑怯だぞ!」
静まり返る場の空気を気にもせず、正義感丸出しで立つスワロに、惣一郎は他人のふりをする……
売れた店から店仕舞いしていく露店街。
どの店も扱う商品は然程多くは無かった。
人族やツノの生えた獣人が多い中心街を進んでいくと、雑貨屋が目に付く。
漆喰の様な塗り壁の家が並び、どこも店先の椅子に店主らしい人が座っている。
農具や工具、釘などを売る店の前で惣一郎は、奥のナイフに目が止まる。
「ジル、あれがそうか?」
「ええ、その様です」
惣一郎が知る、緑のガラスの様な刃では無かったが、ケースに貼られた値段が、もしやと思えた。
鉛の様な鈍い鉄色のナイフ。
値段は金貨470枚。
ドワーフの様に欲しいから買ってくれ!っと、気軽に購入を頼める金額では無かった。
見せて欲しいと店員に話しかける惣一郎。
太ったご婦人がニコニコと、ケースに手をかざすと魔法陣が浮かび、ガラスケースが消えていく。
魔法で保護されていた様だ。
手に取り渡して来る店主から、ナイフを受け取ると、ジルが魔力を流す様に勧める。
ズシリと重いナイフに惣一郎が魔力を流すと、刃の部分から緑色に光る魔力がナイフ全体に薄い水を纏う様に広がる。
「なるほど……」
間近で見るとキラキラと刃先から、常に魔力が流れているのがわかる。
惣一郎は店主に、蟻の魔石2個で在庫の2本と交換出来るか交渉する。
金貨より儲けが出るのだろう、店主も喜んで交渉に応じる。
大量に魔石を持つ惣一郎も、換金して大量の金貨で払うよりは楽だろう。
過足分で店主に、牛や羊を買いたいと相談すると、知り合いの農家を紹介してくれるという。
雑貨屋の店主に聞いた農家を訪ねに街の奥に歩いていくと、いい匂いが漂って来る。
食堂だろう店先にテーブルをはみ出し、料理を楽しむ長閑な風景が街の色を変える。
ベンゾウならすぐに走り込むだろう。
蟲に怯え、何処か暗い雰囲気のこの世界で、惣一郎は久々に和んでいた。
「ちょっと食ってくか?」
喜ぶふたりを連れ、店に入って行く惣一郎。
注文をジルに任せ、まったりとした時間を過ごしていると、斜向いの店から皿の割れる音と罵声が聞こえだす。
店にいた全員が視線を向ける。
「ふざけんじゃねぇ~!」
騒がしい店から出てきた男が広い通りに出ると、腰の剣を抜き出てきた店に向け構える。
惣一郎は店のアトラクションの様な気分で、寸劇を見ていた。
剣を向ける店の奥から、カウボーイを思わせる男がゆっくりと歩いて現れる。
いや服はカウボーイとは全然違うのだが、帽子だけがそう思わせた。
男の後ろには店員だろう、若い娘がその背中に縋る様に張り付いている。
「お前さん、店を間違っちゃいないか? ここはそういう店じゃないんだぜ」
その言葉だけで、色々察しがつくセリフだった。
気がつくと、そのコテコテの寸劇に注目しているのは惣一郎達だけであった。
周りは直ぐに平常運行。
いつもの事の様に客は食べ始め、店員は料理を運んで来る。
「ヤロ~、タダじゃおかね~!」
男は剣を振り上げ、カウボーイに襲いかかる!
帽子で顔半分を隠す男は丸腰で笑みを浮かべる。
次の瞬間!
剣に落ちた落雷が男の動きを止め、隣に座っていた空気を読まないダークエルフが杖を構え立っていた!
「武器を持たない者に剣を向けるとは、卑怯だぞ!」
静まり返る場の空気を気にもせず、正義感丸出しで立つスワロに、惣一郎は他人のふりをする……
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