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007【アロス国】

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「戻りましたアロス王よ」

「よくぞ戻った! すでに連絡は受けておる…… ん? 惣一郎殿は?」

「それが……」

マルジは、惣一郎が戻らず旅に出た事を、王に伝える。

見返りも求めず、行ってしまった惣一郎達。

感謝の言葉も言えないまま、惣一郎達を行かせたマルジを責めるも「後は残された国の問題」との惣一郎の言葉をマルジが伝えると、アロス王も渋々、矛を納める……

そこに慌てて現れたモモ。

「エリシア姫……」

「そうですか…… やっぱり戻らなかったのですね……」

わかっていた、わかっていたが、もしかしたらと走って来たモモは、落ち込む素ぶりも見せずに、

「よく戻られました……大臣。捕らえた…者に合わせて……下さい」

鼻を赤くしながらも、凛とした態度で兄、エリオットとの面会を望むモモ……

軍務大臣マルジは、姫のその姿に、惣一郎の言った通りと嬉しそうに頭を下げ、王と姫を、元王子を捕らえた牢へ案内する。

城の中は、戻った兵達の喜ぶ声で賑わいを見せていた。

誰もが過ぎ去った危機に、大量の厄災の素材に、喜びの声を上げる。

その中を地下牢へと向かう、マルジ達……



牢の前の兵に、上で待機する様に指示をするマルジ。

暗い牢の中には、膝を抱えうずくまる顔を腫らした男。

『『 誰? 』』

一瞬、親族を見分けられない王と姫に、マルジがライトを唱える。

明るく照らされた鉄格子の中のエリオット。

「ちっ、父上……」

王は、静かに目を閉じ、次に開いた目は父親が子に向けるものでは無かった。

「エリオットよ、お前をそう育てたワシにも責任がある! だが、お前がした事は決して許される事では無い! マルジよ、この者を罪人として、処刑を命ずる……」

言葉無く頭を下げるマルジ。

背を向け戻っていくアロス王。

「兄さん……」

「エリシア、頼む教えてくれ! 誰だ、俺の計画を潰した、あの男は誰なんだ!」

鉄格子に掴み掛かり、モモに詰め寄るエリオット…… その目には反省よりも、復讐が色濃く映し出されていた。

「兄さん……貴方にはもう、何も残ってはいない……コレからは私がこの国を守っていきます」

幼少よりいじめられ、決して逆えなかった兄エリオットに、毅然とした態度で目を逸らさず、見返すモモ。

「お前を…… 俺を追い出す程、強くしたのもアイツか……」

「可哀想な人……」

「なっ、お前如きが、俺様を見下すな!」

怒りを露わに、格子越しに掴み掛かろうと手を伸ばすエリオット。

慌てて間に入るマルジ!

「エリシア様は変わられた、この国の為に強く! だが、貴方は…… 何も変わられないのだな」

「きっ貴様まで、王族でも無いお前が…… おのれ……」

牢を後にするふたり。

エリオットの汚い言葉は、しばらく地下に響いていた……

「復讐……してやる…………」







翌朝、城は蜂の巣を突いた様な騒ぎになる。

「なっ……何事ですか…マルジ大臣!」

「エリシア様! エリオット派の残党が、城内で! 城内まで攻めて来ております! 避難を」

「まだいたのですか! 槍を……私の槍を! 迎え撃ちます! 大臣は、父……王の元へ」


その後すぐ、城の兵を含む30人近くの残党は、モモを筆頭に呆気なく討たれる。

中には、名の知れた城の戦闘教官もいたが、モモの槍に例外無く、あっさりとやられる……




王の元に集まる大臣達の中、宰相が、

「見え透いておる…… あの様な少数で攻め込むとは…… 狙いは他かも知れん」

「ですが、中には強者もおりました。まぁ、エリシア様の敵では無かった様ですが……」

「では、少数精鋭による奇襲?」

「後がない者による、最後の悪あがきでしょう」

そこに、慌ただしく駆け込む城の兵。

「申し上げます! 地下牢から何者かの手引きで、エリオット王子が逃走しました!」

「「「 なに!! 」」」

「狙いは、エリオットだったか……」

「じゃが、何故…… ワーテイズの後ろ盾も無くしたエリオットを、今更逃して何を企む……」

エリオット派による奇襲は、モモの活躍により直ぐに収まるも、逃走したエリオットの捜索と、エリオット派閥の洗い出しが、マルジ大臣を中心に大々的に行われた。

その中に、長きに渡り城を支えて来た大貴族、クライス家の名も上がり、城に大きな衝撃が走る。

「まっ、まさかセブ殿が…… クライス家が王を裏切るとは……」

アロス国、王都の広い城下町の一角、まさにお膝元で、裏切りは行われていたのだ……

すぐに城から兵が集められ、すぐそこの城下町で屋敷を囲む騎士達。

屋敷の中では……

「まさかこんなにも早く、我々に気付くとは…… やるではないかマルジ殿も……」

「セブ殿、城から逃がしてくれた事、感謝する」

「王子よ、屋敷の地下から街の外へ繋がる、道がございます。どうかそこからお逃げ下さい」

「セブ殿も!」

「いえ、私はその道を塞がねばなりません」

「!!!」

クライス家当主、セブ・メリル・クライスは、エリオット王子に、クライス家に伝わるダンジョン産の弓矢を渡し、地下へと案内する。

「セブ殿、どうしてそこまで……」

「王子よ、姉である今は亡き王妃の子を、この国の王に望むのは、至極当たり前ではございませんか…… 現の王妃の子、エリシアを継がせるなど、あの世で愛した姉に合わす顔もございません…… どうか生き延びて、このアロスを!」

「セブ殿…… だが御息女は! 御息女まで巻き込む訳には……」

「リンゼはすでに、執事のノートに任せ、街の外に出ております。あの子もきっと、いつか分かってくれるでしょう……」

「……必ず、必ずこの私エリオットが、この国を本当のアロスに、戻して見せましょう!」

「ええ、さっお早く!」

屋敷を囲む騎士達の前で、突然屋敷の中から火柱をあげ、崩壊するクライス家。

逃げ場を失ったセブの自害と、その場は戦いも無く、エリオット派の影の黒幕、クライス家は、歴史から姿を消した……

それにより、残されたエリオット派の者が、次々と城へ自首に訪れる。

元王子、エリオット以外は……




「大臣……まだ兄の…エリオットの消息は、掴めないのですか!」

「はい……予想される場所は、四方探しておるのですが、元王子の消息だけが、何故か掴めないのです……」

一体何処へ……





その頃、ワーテイズ国へ入ったひとりの男が、歩きながら……

「殺してやる殺してやる殺してやる! 全部アイツのせいだ! 見つけ出して殺してやる! それからだ、国もエリシアも全て…… それからだ……」





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