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第三章
十九話[見比べる真実]
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士郎はハナをベッドに寝かせ、また一階に降りていく。
ゴジャッペは腕を組んで座り込み、眉間に皺を寄せて考えている。
イジュリアはさっきと同じ姿勢で立っていた。
「イジュリアって、巨人なのか?」
『先祖に血が混じっているそうだ』
話しながら椅子に座る士郎。
「さて、俺はギルドの依頼を断ってる。王家とか貴族と関わりたくなくてね。それでイジュリアは何が心残りなんだ? 助けられるなら成仏させたいが、その伯爵を王にって話なら断るぞ」
『いや、エルス様なら私など居なくてもいずれ…… だが、リゴル卿がなぜ私の軍に近付いたのか、なぜ私は部下に殺されたのかが知りたい…… 戦う事も出来ず後ろから仲間に刺されて死んだなんて、納得がいかないのだ!』
守る者の為に戦いに身を置いて来たイジュリアには、戦わず死んだ事が納得出来ない話なのは分かるが……
考え込んでたゴジャッペが口を開く。
「シロウ。やはり子爵が上の伯爵を差し置いて何か企てる事はない気がする。前足であるウィズーリ伯爵もかんでると考えるのが普通じゃ。じゃが何を企てる。なぜ同じ前足のイジュリアを殺し、ギリタ軍に反逆の罪を着せた。そこがよく分からんのじゃ」
「他に生き残りのギリタ軍はいるのですか? 逃げた8人は全員死んでますよ」
ゴジャッペの話では数年前、北のコルト地方に、隣国との小競り合いで奪われた土地を奪還する為、遠征に出たギリタ軍は進軍途中で姿を消し大騒ぎになったそうだ。
その真意を確かめるべく別の軍が捜索に向かったが、捜索対象のギリタ軍に襲われ大きな被害を受ける。
国は反逆行為と見做し軍務を解き、元ギリタ軍の捜索が大々的に行われ、多くの死傷者を出した。
捕らえたギリタ軍は一様に口を閉ざし、全員処刑されたと言う。
見つかっていなかった残りの者も、徐々に捕らえられ、士郎が捕らえた者が団長イジュリアを残し最後との事。
その団長もすでに死んでいたとは。
「誰も口を割らなかったのですか?」
「そうらしい。今思えば処刑の判断も早すぎる気がする」
「言えなかったと?」
「ああ…… シロウ。ギルドの小娘に会え。ワシはイジュリアの刀を打つ」
「いや打った所で彼女はもう……」
『頼む! 刀を。首謀者を探し出し斬らねばならぬ!』
だから切れないでしょ……
結局巻き込まれていく士郎。
昼にもう一度ギルドを訪れる事になる。
仮眠をとったが眠そうな士郎は、留守番してていいと言ったのに着いてくるハナと、ギルドに向かっていた。
一際大きなイジュリアを連れて。
ゴジャッペは刀を作ると町外れの工場に寝ずに家を出て行った。
「それでこの国を乗っ取るのですか?」
「話し聞いてた? 首謀者を見つけてイジュリアが斬るんだって!」
「霊が?」
「そこは俺も分からんが……」
『すまぬな、シロウよ』
はぁ~ まぁ結局ギルドの依頼を受ければ良いぐらいで済んでよかったが……
面倒くさいが。
ギルドの受付に来ると、冒険者の対応に忙しそうな職員を捕まえて、ギルマスに会いたい旨を伝える。
王都のギルドはいつ来ても賑やかだった。
「お待たせしました。こちらへ」
突然の訪問に会ってくれるらしい……
前回と同じ部屋に案内され入ると、机で書類に追われる大柄なライカがいた。
イジュリアを見た後では、やや小さく見える。
「やはり受ける気になったか! それとも護衛任務の結果が不服だったか?」
「いえ、獅子の前足について後ろ足に聞きたい事がありまして」
手が止まるライカ。
まだドア付近に立っていた職員に、部屋を出る様にと睨む。
椅子にもたれかかり胸を突き出すライカ。
やはりイジュリアの後では……
「他に何を知っている」
士郎は全てを話した。
ゴジャッペは腕を組んで座り込み、眉間に皺を寄せて考えている。
イジュリアはさっきと同じ姿勢で立っていた。
「イジュリアって、巨人なのか?」
『先祖に血が混じっているそうだ』
話しながら椅子に座る士郎。
「さて、俺はギルドの依頼を断ってる。王家とか貴族と関わりたくなくてね。それでイジュリアは何が心残りなんだ? 助けられるなら成仏させたいが、その伯爵を王にって話なら断るぞ」
『いや、エルス様なら私など居なくてもいずれ…… だが、リゴル卿がなぜ私の軍に近付いたのか、なぜ私は部下に殺されたのかが知りたい…… 戦う事も出来ず後ろから仲間に刺されて死んだなんて、納得がいかないのだ!』
守る者の為に戦いに身を置いて来たイジュリアには、戦わず死んだ事が納得出来ない話なのは分かるが……
考え込んでたゴジャッペが口を開く。
「シロウ。やはり子爵が上の伯爵を差し置いて何か企てる事はない気がする。前足であるウィズーリ伯爵もかんでると考えるのが普通じゃ。じゃが何を企てる。なぜ同じ前足のイジュリアを殺し、ギリタ軍に反逆の罪を着せた。そこがよく分からんのじゃ」
「他に生き残りのギリタ軍はいるのですか? 逃げた8人は全員死んでますよ」
ゴジャッペの話では数年前、北のコルト地方に、隣国との小競り合いで奪われた土地を奪還する為、遠征に出たギリタ軍は進軍途中で姿を消し大騒ぎになったそうだ。
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国は反逆行為と見做し軍務を解き、元ギリタ軍の捜索が大々的に行われ、多くの死傷者を出した。
捕らえたギリタ軍は一様に口を閉ざし、全員処刑されたと言う。
見つかっていなかった残りの者も、徐々に捕らえられ、士郎が捕らえた者が団長イジュリアを残し最後との事。
その団長もすでに死んでいたとは。
「誰も口を割らなかったのですか?」
「そうらしい。今思えば処刑の判断も早すぎる気がする」
「言えなかったと?」
「ああ…… シロウ。ギルドの小娘に会え。ワシはイジュリアの刀を打つ」
「いや打った所で彼女はもう……」
『頼む! 刀を。首謀者を探し出し斬らねばならぬ!』
だから切れないでしょ……
結局巻き込まれていく士郎。
昼にもう一度ギルドを訪れる事になる。
仮眠をとったが眠そうな士郎は、留守番してていいと言ったのに着いてくるハナと、ギルドに向かっていた。
一際大きなイジュリアを連れて。
ゴジャッペは刀を作ると町外れの工場に寝ずに家を出て行った。
「それでこの国を乗っ取るのですか?」
「話し聞いてた? 首謀者を見つけてイジュリアが斬るんだって!」
「霊が?」
「そこは俺も分からんが……」
『すまぬな、シロウよ』
はぁ~ まぁ結局ギルドの依頼を受ければ良いぐらいで済んでよかったが……
面倒くさいが。
ギルドの受付に来ると、冒険者の対応に忙しそうな職員を捕まえて、ギルマスに会いたい旨を伝える。
王都のギルドはいつ来ても賑やかだった。
「お待たせしました。こちらへ」
突然の訪問に会ってくれるらしい……
前回と同じ部屋に案内され入ると、机で書類に追われる大柄なライカがいた。
イジュリアを見た後では、やや小さく見える。
「やはり受ける気になったか! それとも護衛任務の結果が不服だったか?」
「いえ、獅子の前足について後ろ足に聞きたい事がありまして」
手が止まるライカ。
まだドア付近に立っていた職員に、部屋を出る様にと睨む。
椅子にもたれかかり胸を突き出すライカ。
やはりイジュリアの後では……
「他に何を知っている」
士郎は全てを話した。
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