22 / 80
第二章
三話[捕物劇]
しおりを挟む
翌朝、視線を感じ目が覚める士郎。
『おはよう!』
「ギャァーーー!!!」
目の前に、横を向いた首だけが士郎を見つめていた。
体はキチンと正座している。
「マジでいい加減にしろ! 指輪探し手伝わないぞ!」
『ダメよ! そしたら毎朝コレで起こすわよ』
肩を落とし分かりやすく落ち込む士郎。
体に悪い…… 急いで成仏させねば……
町でこっそり買った指輪を落ちてた事にしようかと真面目に考えながら、朝食を食べる。
タチの悪い霊が膝の上に置いた頭で、食事を摂る士郎を見つめている。
『美味しそうね』
士郎も食べれるものなら食べてみろっと無言で、デリラの前に分けたパンを置く。
屋台で買った惣菜をパンに挟んだだけの朝食。
デリラは頭を元の位置に乗せると、パンに手を伸ばす。
まるでパンが幽体離脱した様に2つになりデリラの口に運ばれる。
差し出したパンもそのまま置いてあった。
お供物とはこう言う事なのか……
士郎は置き去りにされたもう片方を拾い食べる。
味に違いはなかった。
『美味しいわ! 食事なんていつ以来かしら』
街道をしばらく下を見ながら進むと、正面に小さく町が見えて来る。
この町から王都と港方面へ行く分岐になっているのか、ザマリの街より小さいけれど活気のあるザリスの町だった。
町に入る人が4、5人の列を作り、その後ろに並ぶ士郎。
前の様子を両手を高く上げ、持ち上げた頭部で見てるデリラ。
叫びそうな口を慌てて塞ぐ士郎。
『中々進まないわねぇ』
霊に触れるなら頭部を奪い、遠くに投げたかった。
いい加減しろ!っと小声を出しかけた時、列の先頭で騒ぎが起きる。
体格の良い男が守衛のひとりを投げ飛ばし、暴れている!
押さえ込もうと更にふたりの守衛が、腕と腰にしがみつく。
だが体格が違う!
軽々と投げ飛ばし、大声で威嚇する男。
そこに武器を持った守衛が援護に数人現れると、男は踵を返し逃げ出そうと後ろの数人を払い除け士郎に向かって来る!
「そいつを止めろ!」
体制を立て直す守衛が叫ぶが、最後の砦が細い少年と気付くと慌てて手振りで逃げろと訴える!
大男が突進して来る恐怖に固まる士郎。
守衛の叫びも聞こえてなかった。
どけ!っと払われた腕に顔を歪ませ吹き飛ぶ士郎。
地面の砂と鉄の味に、不恰好な自分に気付く。
にゃろぉ……
倒れた士郎が片目で捉えた男は、すでに手の届かない先を逃げている。
左手は刀を握ったまま。
パッシュ!っと誰も気が付かない音に、遠くを走る男の足の片方が吹き飛ぶ!
無様に転がる大男。
足を失った事にも気付いていないだろう。
その後を数人の守衛が追いかけ取り押さえていた。
「大丈夫か!」
最初に吹き飛ばされた守衛が士郎に手を差し伸べながら、視線は何が起こったのか理解出来ず、取り押さえられた男を見ていた。
騒ぎを聞きつけた野次馬が増える。
口の中を切った士郎が、守衛の男に渡された水筒の水でうがいをする前を、苦痛に歪む顔の男が引き摺られて行く。
「災難だったな」
「っぺ! 何だったんですか?」
「手配書の男が町に入ろうとしてたんだ。もう大丈夫。明日にでも連行されるだろう」
詳しくは何も分からず仕舞い。
ただとばっちりを受けた事は確かであった……
『おはよう!』
「ギャァーーー!!!」
目の前に、横を向いた首だけが士郎を見つめていた。
体はキチンと正座している。
「マジでいい加減にしろ! 指輪探し手伝わないぞ!」
『ダメよ! そしたら毎朝コレで起こすわよ』
肩を落とし分かりやすく落ち込む士郎。
体に悪い…… 急いで成仏させねば……
町でこっそり買った指輪を落ちてた事にしようかと真面目に考えながら、朝食を食べる。
タチの悪い霊が膝の上に置いた頭で、食事を摂る士郎を見つめている。
『美味しそうね』
士郎も食べれるものなら食べてみろっと無言で、デリラの前に分けたパンを置く。
屋台で買った惣菜をパンに挟んだだけの朝食。
デリラは頭を元の位置に乗せると、パンに手を伸ばす。
まるでパンが幽体離脱した様に2つになりデリラの口に運ばれる。
差し出したパンもそのまま置いてあった。
お供物とはこう言う事なのか……
士郎は置き去りにされたもう片方を拾い食べる。
味に違いはなかった。
『美味しいわ! 食事なんていつ以来かしら』
街道をしばらく下を見ながら進むと、正面に小さく町が見えて来る。
この町から王都と港方面へ行く分岐になっているのか、ザマリの街より小さいけれど活気のあるザリスの町だった。
町に入る人が4、5人の列を作り、その後ろに並ぶ士郎。
前の様子を両手を高く上げ、持ち上げた頭部で見てるデリラ。
叫びそうな口を慌てて塞ぐ士郎。
『中々進まないわねぇ』
霊に触れるなら頭部を奪い、遠くに投げたかった。
いい加減しろ!っと小声を出しかけた時、列の先頭で騒ぎが起きる。
体格の良い男が守衛のひとりを投げ飛ばし、暴れている!
押さえ込もうと更にふたりの守衛が、腕と腰にしがみつく。
だが体格が違う!
軽々と投げ飛ばし、大声で威嚇する男。
そこに武器を持った守衛が援護に数人現れると、男は踵を返し逃げ出そうと後ろの数人を払い除け士郎に向かって来る!
「そいつを止めろ!」
体制を立て直す守衛が叫ぶが、最後の砦が細い少年と気付くと慌てて手振りで逃げろと訴える!
大男が突進して来る恐怖に固まる士郎。
守衛の叫びも聞こえてなかった。
どけ!っと払われた腕に顔を歪ませ吹き飛ぶ士郎。
地面の砂と鉄の味に、不恰好な自分に気付く。
にゃろぉ……
倒れた士郎が片目で捉えた男は、すでに手の届かない先を逃げている。
左手は刀を握ったまま。
パッシュ!っと誰も気が付かない音に、遠くを走る男の足の片方が吹き飛ぶ!
無様に転がる大男。
足を失った事にも気付いていないだろう。
その後を数人の守衛が追いかけ取り押さえていた。
「大丈夫か!」
最初に吹き飛ばされた守衛が士郎に手を差し伸べながら、視線は何が起こったのか理解出来ず、取り押さえられた男を見ていた。
騒ぎを聞きつけた野次馬が増える。
口の中を切った士郎が、守衛の男に渡された水筒の水でうがいをする前を、苦痛に歪む顔の男が引き摺られて行く。
「災難だったな」
「っぺ! 何だったんですか?」
「手配書の男が町に入ろうとしてたんだ。もう大丈夫。明日にでも連行されるだろう」
詳しくは何も分からず仕舞い。
ただとばっちりを受けた事は確かであった……
34
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
懐かれ気質の精霊どうぶつアドバイザー
希結
ファンタジー
不思議な力を持つ精霊動物とともに生きるテスカ王国。その動物とパートナー契約を結ぶ事ができる精霊適性を持って生まれる事は、貴族にとっては一種のステータス、平民にとっては大きな出世となった。
訳ありの出生であり精霊適性のない主人公のメルは、ある特別な資質を持っていた事から、幼なじみのカインとともに春から王国精霊騎士団の所属となる。
非戦闘員として医務課に所属となったメルに聞こえてくるのは、周囲にふわふわと浮かぶ精霊動物たちの声。適性がないのに何故か声が聞こえ、会話が出来てしまう……それがメルの持つ特別な資質だったのだ。
しかも普通なら近寄りがたい存在なのに、女嫌いで有名な美男子副団長とも、ひょんな事から関わる事が増えてしまい……? 精霊動物たちからは相談事が次々と舞い込んでくるし……適性ゼロだけど、大人しくなんてしていられない! メルのもふもふ騎士団、城下町ライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる