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第二章

三話[捕物劇]

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翌朝、視線を感じ目が覚める士郎。

『おはよう!』

「ギャァーーー!!!」

目の前に、横を向いた首だけが士郎を見つめていた。

体はキチンと正座している。

「マジでいい加減にしろ! 指輪探し手伝わないぞ!」

『ダメよ! そしたら毎朝コレで起こすわよ』

肩を落とし分かりやすく落ち込む士郎。

体に悪い…… 急いで成仏させねば……

町でこっそり買った指輪を落ちてた事にしようかと真面目に考えながら、朝食を食べる。

タチの悪い霊が膝の上に置いた頭で、食事を摂る士郎を見つめている。

『美味しそうね』

士郎も食べれるものなら食べてみろっと無言で、デリラの前に分けたパンを置く。

屋台で買った惣菜をパンに挟んだだけの朝食。

デリラは頭を元の位置に乗せると、パンに手を伸ばす。

まるでパンが幽体離脱した様に2つになりデリラの口に運ばれる。

差し出したパンもそのまま置いてあった。

お供物とはこう言う事なのか……

士郎は置き去りにされたもう片方を拾い食べる。

味に違いはなかった。

『美味しいわ! 食事なんていつ以来かしら』





街道をしばらく下を見ながら進むと、正面に小さく町が見えて来る。

この町から王都と港方面へ行く分岐になっているのか、ザマリの街より小さいけれど活気のあるザリスの町だった。

町に入る人が4、5人の列を作り、その後ろに並ぶ士郎。

前の様子を両手を高く上げ、持ち上げた頭部で見てるデリラ。

叫びそうな口を慌てて塞ぐ士郎。

『中々進まないわねぇ』

霊に触れるなら頭部を奪い、遠くに投げたかった。

いい加減しろ!っと小声を出しかけた時、列の先頭で騒ぎが起きる。

体格の良い男が守衛のひとりを投げ飛ばし、暴れている!

押さえ込もうと更にふたりの守衛が、腕と腰にしがみつく。

だが体格が違う!

軽々と投げ飛ばし、大声で威嚇する男。

そこに武器を持った守衛が援護に数人現れると、男は踵を返し逃げ出そうと後ろの数人を払い除け士郎に向かって来る!

「そいつを止めろ!」

体制を立て直す守衛が叫ぶが、最後の砦が細い少年と気付くと慌てて手振りで逃げろと訴える!

大男が突進して来る恐怖に固まる士郎。

守衛の叫びも聞こえてなかった。

どけ!っと払われた腕に顔を歪ませ吹き飛ぶ士郎。

地面の砂と鉄の味に、不恰好な自分に気付く。

にゃろぉ……

倒れた士郎が片目で捉えた男は、すでに手の届かない先を逃げている。

左手は刀を握ったまま。

パッシュ!っと誰も気が付かない音に、遠くを走る男の足の片方が吹き飛ぶ!

無様に転がる大男。

足を失った事にも気付いていないだろう。

その後を数人の守衛が追いかけ取り押さえていた。

「大丈夫か!」

最初に吹き飛ばされた守衛が士郎に手を差し伸べながら、視線は何が起こったのか理解出来ず、取り押さえられた男を見ていた。



騒ぎを聞きつけた野次馬が増える。

口の中を切った士郎が、守衛の男に渡された水筒の水でうがいをする前を、苦痛に歪む顔の男が引き摺られて行く。

「災難だったな」

「っぺ! 何だったんですか?」

「手配書の男が町に入ろうとしてたんだ。もう大丈夫。明日にでも連行されるだろう」

詳しくは何も分からず仕舞い。

ただとばっちりを受けた事は確かであった……





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