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第一章

十三話[持てる者の悩み]

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『石弾の魔法自体も強力だが、高級な杖ならば不可能ではない。それよりも杖の許容を超える魔力を一気に流せる方が異常だ! 杖が壊れる程の魔力を体から放出して本人はケロッとしている方が本来、異常過ぎるのだ!』

壊れた杖を見つめながら、静かに考え込むエルドル。

士郎は壊した杖が余程大事な物だったのだろうと、静かに弁償額を考えていた。

「すいませんでした、大切な杖を壊してしまい。出来る限り弁償はしますので」

「いえ…… 杖の事はお気になさらず。売るほどありますので。それよりも杖を破壊するほど一度に密度の濃い魔力を放出して、なんともないのですか?」

「えっ、すいません! 初めてだったので加減が分からなくって」

普通ならこうやって話してる事も出来ないだろう。

魔力量もすごいが魔力の質が異常なのだろう……

そうエルドルは思った。

「あの魔法を使うなら普通の杖では無理でしょうな。相当グレードが上な物でないと……」

「高級品という事ですか?」

「価値が高くはなるでしょうな。魔鋼と言っても精錬する職人の腕にもよりますし、また魔鋼に代わる金属も世にはあると言います」

「そうですか…… お金稼がないと魔法も撃てないんですね……」

「ああいえ、あの威力では無理ですが抑えれば普通の杖でも魔法自体発動は十分可能です」

士郎は収納スキルから麻袋を取り出し中身を手のひらに広げる。

「とりあえず先ほどの杖はおいくらでしょうか?」

「おや、結構お持ちなのですね。ではこの金貨2枚で在庫の杖をもう一本差し上げます。至って普通の杖ですが、道中練習するには十分でしょう」

それでもきっと安いに違いない。

士郎は頭を下げて感謝を伝える。

『捨て人と聞いていたが一体何者なのだろうか……』

エルドルもまた、答えの出ない悩みに直面していた。




少し馬を休ませてから、また馬車が走り出す。

速度は4キロも出ていないだろう。

速度出せばエルドル商会自慢の馬車であっても、この悪路では壊れるからだ。

のんびりと流れる景色を眺めながらエルドルは士郎の魔力を測っていた。

「まだ少し多いですね。シロウ殿の場合両腕より両手の人差し指だけから魔力を流すように集中してみて下さい」

指先だけか……

ストーンバレット!

士郎の目の前に塵芥が集まり出し、直径2cm程の球が浮かび上がる。

「そうです。その大きさを覚えて下さい!」






やがて陽が沈み始め、林の中でまた夜営する事になる。

あれからずっと練習を続けている士郎を、恐ろしく思うエルドル。

普通ならとっくに魔力切れを起こし倒れているだろう。

他の攻撃魔法に比べ、石弾は消費魔力が少ないとしても……

「シロウ殿はどうして冒険者に?」

「のんびり世界を見て回ろうかと。収納スキルもありますので」

「ほぉ、世界を」

あれ? 商人なら収納スキルに興味を持つと思ったが……

「収納スキルって珍しくないんですか?」

「そうですね、珍しい部類とは思いますが、高価なマジックバッグやマジックボックスもありますからね。私も馬車にマジックボックスを持ち行商を行なっております」

そうなのね……






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