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3.なぜ魔法を勉強しているの?
天空の魔女 リプルとペブル
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3.なぜ魔法を勉強しているの?
そんな二人の姿を壁の上からじっと見つめている魔女がいたことを二人は知らなかった。
その魔女の帽子には上級魔女だけが結ぶことができる紫色の大きなリボン。
ローブのえりには、金色のドラゴンのバッジがついている。
「あらあら、ニンゲンのロケット発射を見物しに来たのだけど、小さな魔女さんたちを助けることができてよかったわ。だけど、あのおチビさん、とっさにあんな上位魔法の呪文を唱えるなんて♪」
長くてふわふわの髪を持つ上級魔女は目をほそめて感心したようにつぶやいた。
壁の下では、まだふたりが何やらはなし続けている。
「世界にはしっこがあるとわかったから、リプルもスッキリしたでしょ?」
「うん!」
うれしそうな笑顔のリプルをみて、ペブルも自分のことのように胸がほっこりした。
けど次の瞬間、リプルは大きく両手を広げて、円をえがいた。
「でね、もっといっぱい知りたいことがふえたよ! この青い世界の果てを探しに行きたい。風がうまれる場所も見たい。お母さんも探したい。いちばん知りたいのは、私たち、なんで魔法を勉強してるんだろうってこと!」
リプルのことばを聞いた壁の上の魔女は、細い眉をあげ「あら」という表情になった。
「そりゃ魔法使いに生まれたからにきまってるよ」
あたりまえのことだと言う表情のペブルにリプルはなおも問う。
「じゃぁ、なんで私たちは魔法使いに生まれたの?」
「知らない」
めんどうになってきたペブルは、あふっとあくびをしながら答える。
「だから知りたい。どうしてこの世界に魔法があるのか。なんで私たちは魔女に生まれたのか!!」
リプルは、目をキラキラさせ、レンガ壁の穴から今日はじめてであった新しい青い世界をのぞきこんでいる。
「もう、リプルってほんとに知りたがり屋なんだから」
と、口をとがらせるペブル。
その時、ペブルの胸ポケットから顔を出した小さなシマリスが、ペブルに向かってささやいた。
「ねぇ、ペブル。花のネックレス、なくしちゃったね。リプルとおそろいの……」
シマリスはペブルの使い魔のシズクである。
使い魔は魔女がうまれたと同時にこの世に生まれてくる。シズクもペブルが生まれたその日に、青の森の魔樹の葉についた雫から生まれた。
しかし、どういうわけかリプルには使い魔がいなかった。そのかわりリプルには、とある秘密があるのだが……。
「ネックレス!」
シズクのことばに、ハッとしたペブルは、しまったという様子で口に手を当てた。
リプルは、そんなペブルの様子には気づかず、魂をうばわれたように青い世界を見つめつづけている。
お花のネックレスというのは、ペブルとリプルが、魔女学園にあずけられたときにカゴに一緒に入っていたもの。
白と青のスズランの花を魔法で枯れないように固めたおそろいのブローチだった。
おそらく母魔女からの贈り物だろう。
ペブルはそれをいつも胸からぶら下げていたが、慎重派のリプルは机の引き出しの宝物入れに大切にしまっていた。
「これはふたりがパルである印だよ」
「ずっと無くさないように大切にしようね」って約束していたのに。
ペブルはリプルにパルの印であるおそろいのネックレスを無くしてしまった事を言いだせなかった。
この世界では、魔女たちは互いにパルという特別な絆で結ばれている。
パル同士は、血をわけた姉妹のこともあれば、偶然出会ったふたりの場合もある。
なぜパルという絆をむすぶかというと、魔法という特別な能力を使うためだ。
魔法が暴発したり、魔物に襲われるなど危険な目にあったときに、ペア同士でいれば協力してピンチを乗り切ることができる。
同時に、魔法を勉強するライバル同士として競い合い、高めあうこともできる。
そして一番たいせつなことは、パル同士が家族のような関係を育むこと。
この世界の魔女は家族を持つことができない。
魔女としての英才教育を受けるために、生まれた赤ん坊はすべて魔法学園の施設で集団で育てられる。
だから、リプルもペブルも、親が誰なのか、兄妹がいるのかどうかも知らない。
しかし、それが普通のことなので、自分たちがとくべつでかわいそうだとはみじんも思っていない。
ただし王族や貴族については、家族を持つことができる。
それは家に代々伝わる宝物などを受けつぐためである。
宝物などに縁のない一般の魔法使いたちにとっては、パルという絆が家族や兄妹代わりの役割も兼ねているのだ。
リプルがペブルにどれだけ迷惑をかけられても、ペブルがリプルからどれだけお説教されても、ふたりは大切なパル同士なのである。
そんな二人の姿を壁の上からじっと見つめている魔女がいたことを二人は知らなかった。
その魔女の帽子には上級魔女だけが結ぶことができる紫色の大きなリボン。
ローブのえりには、金色のドラゴンのバッジがついている。
「あらあら、ニンゲンのロケット発射を見物しに来たのだけど、小さな魔女さんたちを助けることができてよかったわ。だけど、あのおチビさん、とっさにあんな上位魔法の呪文を唱えるなんて♪」
長くてふわふわの髪を持つ上級魔女は目をほそめて感心したようにつぶやいた。
壁の下では、まだふたりが何やらはなし続けている。
「世界にはしっこがあるとわかったから、リプルもスッキリしたでしょ?」
「うん!」
うれしそうな笑顔のリプルをみて、ペブルも自分のことのように胸がほっこりした。
けど次の瞬間、リプルは大きく両手を広げて、円をえがいた。
「でね、もっといっぱい知りたいことがふえたよ! この青い世界の果てを探しに行きたい。風がうまれる場所も見たい。お母さんも探したい。いちばん知りたいのは、私たち、なんで魔法を勉強してるんだろうってこと!」
リプルのことばを聞いた壁の上の魔女は、細い眉をあげ「あら」という表情になった。
「そりゃ魔法使いに生まれたからにきまってるよ」
あたりまえのことだと言う表情のペブルにリプルはなおも問う。
「じゃぁ、なんで私たちは魔法使いに生まれたの?」
「知らない」
めんどうになってきたペブルは、あふっとあくびをしながら答える。
「だから知りたい。どうしてこの世界に魔法があるのか。なんで私たちは魔女に生まれたのか!!」
リプルは、目をキラキラさせ、レンガ壁の穴から今日はじめてであった新しい青い世界をのぞきこんでいる。
「もう、リプルってほんとに知りたがり屋なんだから」
と、口をとがらせるペブル。
その時、ペブルの胸ポケットから顔を出した小さなシマリスが、ペブルに向かってささやいた。
「ねぇ、ペブル。花のネックレス、なくしちゃったね。リプルとおそろいの……」
シマリスはペブルの使い魔のシズクである。
使い魔は魔女がうまれたと同時にこの世に生まれてくる。シズクもペブルが生まれたその日に、青の森の魔樹の葉についた雫から生まれた。
しかし、どういうわけかリプルには使い魔がいなかった。そのかわりリプルには、とある秘密があるのだが……。
「ネックレス!」
シズクのことばに、ハッとしたペブルは、しまったという様子で口に手を当てた。
リプルは、そんなペブルの様子には気づかず、魂をうばわれたように青い世界を見つめつづけている。
お花のネックレスというのは、ペブルとリプルが、魔女学園にあずけられたときにカゴに一緒に入っていたもの。
白と青のスズランの花を魔法で枯れないように固めたおそろいのブローチだった。
おそらく母魔女からの贈り物だろう。
ペブルはそれをいつも胸からぶら下げていたが、慎重派のリプルは机の引き出しの宝物入れに大切にしまっていた。
「これはふたりがパルである印だよ」
「ずっと無くさないように大切にしようね」って約束していたのに。
ペブルはリプルにパルの印であるおそろいのネックレスを無くしてしまった事を言いだせなかった。
この世界では、魔女たちは互いにパルという特別な絆で結ばれている。
パル同士は、血をわけた姉妹のこともあれば、偶然出会ったふたりの場合もある。
なぜパルという絆をむすぶかというと、魔法という特別な能力を使うためだ。
魔法が暴発したり、魔物に襲われるなど危険な目にあったときに、ペア同士でいれば協力してピンチを乗り切ることができる。
同時に、魔法を勉強するライバル同士として競い合い、高めあうこともできる。
そして一番たいせつなことは、パル同士が家族のような関係を育むこと。
この世界の魔女は家族を持つことができない。
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だから、リプルもペブルも、親が誰なのか、兄妹がいるのかどうかも知らない。
しかし、それが普通のことなので、自分たちがとくべつでかわいそうだとはみじんも思っていない。
ただし王族や貴族については、家族を持つことができる。
それは家に代々伝わる宝物などを受けつぐためである。
宝物などに縁のない一般の魔法使いたちにとっては、パルという絆が家族や兄妹代わりの役割も兼ねているのだ。
リプルがペブルにどれだけ迷惑をかけられても、ペブルがリプルからどれだけお説教されても、ふたりは大切なパル同士なのである。
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