上 下
1 / 9

聖職者エレミアの醜態

しおりを挟む
 
 神父エレミアは、森の小道を歩いていた。教会から街までは20kmの道のりがあり、その半分ほどは進んだ頃だった。
 彼は黙々と歩きながら、下腹部の焦燥感に悩まされていた。

 暦の上では春というのに外はまだ寒く、教会を出てすぐエレミアは軽い尿意を感じていた。
 一度戻って用を足そうか悩んだが、それだけのために帰ってきたと思われるのも恥ずかしく、結局ここまで歩いてきてしまった。
 街まで我慢しようと決めて早足で歩いてきたが、そろそろ限界が近づいていた。

 辺りは木々が生い茂り、小鳥の囀りと自分の足音が聞こえる静かな場所だ。
 他に人はいない。
 木の陰でしてしまっても、バレないのではないか。

 いやいや、とエレミアは頭を振った。
 神が見ているというのに、聖職者たる自分が野外で放尿をするなんて。

 エレミアは下腹部に力を込めて、早足で歩き続けた。




*******


 あれから1時間は経っただろうか。
 いつもと同じ道が、やけに長く感じる。
 1歩踏み込むときの僅かな振動ですら膀胱を刺激し、油断すると漏らしてしまいそうになる。
 考えないようにすればするほど尿意は強まるばかりだった。

「・・・ッ!」

 思わず漏らしそうになり、慌てて両手で股を押さえて立ち止まる。
 内股になって太ももに力を入れるも、尿意は弱まらず、少しでも動いたら出してしまいそうだ。

 あぁ、神よ。事前に準備を怠った私を罰しているのですね。

 空を見上げてながら、両手で強く押さえる。服越しに自分の性器の柔らかさの熱を感じる。
 じわり、と下着の一点が濡れた気がした。


 もう駄目だ。

 漏れる。

 出ちゃう・・・

 おしっこ漏れる!!


 ・・・お許しください!


 心のなかで叫びながら、エレミアは小道を外れ、草むらの方へ駆け込んだ。

 近くの木に寄り、慌てて黒い祭服キャソックの裾を捲り上げ、ズボンと下着のボタンを外し、性器の先を外に出す。
 脱ぎ終わるや否や、その先端からは勢いよく尿が排出された。

 ビチャビチャと下品な音を立てて、木の幹を濡らしていく。

 背徳感と羞恥心に泣きそうにながらも、ようやく解放された快感に思わず口元が緩む。
 しばらくして、勢いが弱まった尿が、放物線を描いて地面の草に落ちていく。
 朝露のように水滴がついた草が、木漏れ日に照らされてキラキラと輝いていた。



「・・・なんの音だ?」

 森の奥の方から、草を掻き分けて青年が顔を出した。

「え?」

 聖職者が野ションをしているのを目の当たりにし、呆気に取られる。


「あ・・・」

 目撃された羞恥心で、エレミアは一気に赤面した。
 思わず股に目を落とすも、チョロチョロとまだ出続けており、止めることが出来なかった。

 草むらから出てきた青年も、思わずエレミアの股間に注視してしまう。
 それに気付いたエレミアも、耳まで真っ赤になりながら、早く終わって欲しいと思いながら自身の性器の先を見ていた。


 ようやく出し切り、服装を直したエレミアは、なんと言うべきか分からず視線をウロウロとさせていた。
 目撃してしまった青年──アイザックも、なんと声をかけるべきかと沈黙を続けていた。


「・・・あのさ」

 誰にも言わないから、気にすんなよ、と言おうとしてアイザックが口を開くと同時に、エレミアはビクッと肩を震わせた。
 アイザックがエレミアを見つめると、彼は俯いたまま涙目になっていた。
 醜態を晒してしまったことでパニックになっているらしい。
 
「あの・・・っ!このような・・・も、申し訳ありません!」

 ガバっと頭を下げると、エレミアは一目散に逃げ出した。

「待っ・・・」

 突然のことに驚いて手を伸ばすも、エレミアの姿はあっという間に見えなくなってしまった。
 
「まぁ、普通に恥ずかしいよな。うん」

 先ほどまで彼がいた場所に目を落とすと、木の幹からその下まで盛大に濡らした跡が広がっていた。

 相当、我慢してたんだろうな。
 目が合った瞬間、一気に赤くなった彼の顔を思い出してしまい、吹き出してしまう。

「変な奴だったな・・・ん?」

 濡れている草が、陽の光とは違う光り方をしているのに目が止まる。
 そっとしゃがみ込み近くで見ると、雫の一粒一粒が魔力を帯びているようだった。

 この光の色、回復ポーションと似ているような・・・
 より目を凝らすも、これが彼のおしっこであることを思い出し、サッと離れる。

「何やってんだよ俺」

 自嘲しながら立ち上がり、森の奥へと歩き出す。
 
 それにしても・・・
 アイザックは、エレミアの俯き涙を目に溜めた表情を思い出す。

 男のくせに、やたら可愛かったような・・・?!
 急に頬が火照り、脈が速くなる。

「そんなことより、修行、修行!」

 雑念を断ち切るように、アイザックは野生のモンスター狩りに戻って行った。



 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

待てって言われたから…

ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。 //今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて… がっつり小スカです。 投稿不定期です🙇表紙は自筆です。 華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

風邪ひいた社会人がおねしょする話

こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。 一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?

処理中です...