刑事×怪盗の秘密

カルキ酸

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探偵登場

怪盗の依頼主

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 公安が管理する地下駐車場に、一台の黒いセンチュリーが停まっていた。
 そこに、1人の紙袋を持った女性が近付き、独特なリズムで窓ガラスをノックした。ドアが開くと、女性は車内に乗り込んだ。

「いやぁ、苦労したぜ。列車の下に潜り込んで床底を抜くのには」
 紙袋から王冠を取り出し、女装した怪盗は頭に被った。

「そう。ご苦労様」
彼の頭から抜き取り、佐川警部は自分の膝の上に王冠を置いた。

「しかし、なんで公安が、こんな物を盗ませるのかね」
 怪盗の呟きに、佐川警部も、運転席にいる安藤警部補も答えない。
「・・・まぁ、お前らの秘密主義は、よく知ってるけど」

 怪盗は、ドアを開けて帰ろうとする。

「待ちなさい」
佐川警部が、呼び止めた。
「白夜ノアとか言う、自称探偵に気を付けなさい」

「・・・あのコスプレみたいな野郎か。いけ好かないのは確かだが」
 怪盗は、香坂刑事が白夜に見惚れていた姿を思い出した。あんなガキに鼻の下伸ばしやがって、と未だにイライラする。

「ああいうのは、粘着質だから、しつこいわよ」
佐川警部は、薄く笑う。

「ああ。分かったよ」

 車を降りた怪盗は、ヒールの音をカツカツ響かせながら、暗闇に消えていった。




 白夜は、誰もいなくなった駅で、唇をトントン叩きながら考えていた。
 何度、考えても佐川がクロとしか思えない。


 構内にアナウンスが流れて、1番のりばに列車が停車する。階段を駆け降りてきた会社員らしき女性が、パンプスをカツカツ鳴らして走り、始発列車に飛び乗った。


 そうか。

 白夜は閃いた。おそらく警官に変装していた怪盗は、あの記者たちの群に紛れて列車を降りたに違いない。そして、割った窓ガラス・・・は人目につくから、列車の下だ。列車の床に隠し扉を作っておいて、潜り込んで、ケースの中の王冠を盗んだんだ。警官から、点検作業員にでも変装したのか、奴は。

「分かったぁ!!」
突然叫んだ白夜に、向かいのホームで掃除をしていた駅員がビクッとする。

「そっか、そっか」
パソコンを開いた白夜は、怪盗ナイトウォーカーについてのデータを更新する。

「僕をここまで本気にさせるなんて・・・」
 白夜は、胸を高鳴らせながら、舌舐めずりをした。

 絶対に、僕の手で捕まえてみせる。白夜は強く、心に決めた。
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