刑事×怪盗の秘密

カルキ酸

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探偵登場

王冠の行方

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「警部。怪盗ナイトウォーカーにアロマノフ王朝の王冠が盗まれたという情報は、本当なのでしょうか?」
「盗まれたとしたら、アロマノフ王朝との国際問題に発展するのでは?責任をどうするおつもりですか?」

 何度もフラッシュを焚き撮影されながら、大量のボイスレコーダーを向けられる渡辺警部。
「今、まだ調査中だ!」
などと叫んでも、記者たちは一歩も引かず、それどころか犯行現場の映像を撮ろうと、列車に乗り込もうとする。
 その様子に何名かの警官が下車し、記者たちの侵入を防いでいた。
 同時に、鑑識官たちが駅に到着し、列車に乗り込むため、出入り口に群がる記者たちと揉み合っていた。





 一方、混乱に乗じて食堂車を抜けた白夜は、3号車に向かって走っていた。

 僕の推理では、佐川がナイトウォーカーだ。安藤という部下と、車内に残った警官もグルだろう。
 警官は、警帽を深く被って目を暗闇に慣れさせていたため、停電の時にでも辺りがよく見えた。
 だから、停電した隙にガラスを割って、"王冠をクッションの下のケースの中に隠した"。
 そして、電気の復旧後、佐川自ら確認し、クッションの下には無いと嘘をつくことで、まんまと騙したのだ。
 王冠は、まだケースの下にあるに違いない!



「そこまでだ、ナイトウォーカー!」

 3号車のドアを開け、白夜は叫ぶ。
 そんな彼に、佐川警部は、怪訝そうな顔をする。

「一般人は立ち入り禁止よ」
佐川警部は言う。

「僕は、私立探偵の白夜ノアです」
 白夜は、名刺を見せながら言う。
 奥の方で聞いていた安藤警部補が、プッと吹き出した。

「あのね、僕。探偵ごっこは他所よそでやってちょうだい。」
 声に苛立ちを隠しきれずに佐川警部は言う。
「この部屋に入れるわけにはいかないの。現場検証って知ってるかな?」
 白夜が入ってこないよう、佐川警部は、出入り口の前に仁王立ちして腕を組む。

「舐めないでいただきたい。そのケースの中に、まだ王冠があることを、僕は知ってるんですよ」
白夜は、パーカーに手を入れる。
「鑑識が終わってから回収するつもりでしょうが、無駄ですよ。鑑識が終わるまで、僕がここで見張ってますから」
 白夜は、佐川警部を睨んだ。

「いいわ、勝手にしなさい。でも、風で飛ばされ落ちた髪が、この車内に落ちでもしたら、あなたがナイトウォーカーの疑いで逮捕されるかもしれないけど、悪く思わないでね」

 鑑識官が、ようやくゾロゾロと3号車に集まる。
 鑑識の中にもグルがいるかもしれない。見張らなくては。白夜は、ずっとケースを睨んでいた。





 指紋採取などが終わり、佐川警部は出入り口の前に、ケースを持ってきた。クッションを外し、横に倒して見せる。

 中は、空洞だった。

「もう、いいでしょ」
 佐川警部は、バン!と乱暴に扉を閉めた。

 通路に1人残された白夜は、悔しさに、血が出るほど強く下唇を噛んだ。

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