上 下
13 / 15
1章 アリアナの大冒険ー幼少期ー

悪ガキ集団の爆誕!!⑤

しおりを挟む
体中が血塗れで、着ていた気品ある着物はボロボロだった。ミミアは前方にいるアリアナ達を睨み付けながら怒りに震えていた。

「何事です!!あれから少しも反省したと思ったら……救いようのないゴミが!!」

アリアナに殺意を向けるミミアだが、そこに割って入ったのはゼストだった。

「ミミア夫人、今回はアリアナではありません」

「ゼスト様!あなたがこんな小汚い人族を拾ってきたのがそもそもの間違えなのです!これを屋敷に閉じ込めておいて下さいな!」

怒りで喚き散らすミミアに飛びかかろうとする激おこのプニとピピデデ兄弟だが、ロウジに止められている。

「……おい、誰に向かって言っているんだ?口は災いの元だぞミミア」

静かな声だが、威圧感が半端ないゼストにミミアは少しずつ後ずさる。

「おいおい、これはわしの仕業じゃ!文句があるならわしに言え!!」

そこへミルキルズも加わりミミアを睨み牽制している。

「なっ!ミルキルズ様が愛する者にこんな事するわけありませんわ!」

ミミアの言葉にその場が静まり返る。アリアナはよちよちとミルキルズの元へやって来てジト目で見ていた。

「ミル爺はあんなオババが好きなんでしゅか?」

「アリアナよ!勘違いするでない!わしもあんな傲慢なオババはお断りじゃ!」

ジト目でこちらを見ている可愛い曾孫に誤解されたくないミルキルズは必死だ。

「ミル爺!あのオババはゴイ爺のオババでしゅよ!失礼でしゅ!」

「アリアナ、それじゃあミミアがわしの祖母みたいな言い方じゃぞ?」

アリアナを愛おしそうに抱っこしながら呆れるロウゴイヤだが、ミミアは怒りでワナワナと震えていた。

「オババですって!?この無礼者どもめがーーー!」

怒りが爆発して魔力を暴発させたミミアは、髪が逆立ち宙に浮いていた。

「おーー!!スーパーオババでしゅよ!!」

異様な光景だが、何故かおちび達は瞳をキラキラさせて大興奮だ。そんなおちび達を防御魔法で守っていたロウジも母親の姿に口をあんぐりと開けていた。

ミミアは魔力を暴発させるだけで、不思議とこちらに攻撃してこない。こちらに最強であるミルキルズやゼスト、それにロウゴイヤやロウジがいるからかもしれないがずっと宙に浮いたままだった。

しばらく宙に浮いていたが、ふと気を失って落ちて来たミミアをロウゴイヤが上手く抱き抱えた。

「全く傲慢で自分勝手じゃな!相手を見下して己のプライドを守る…本当は思ってもいない事を口にして敵を作り孤立して、一人で泣いている可哀想な人よ」

そう言いながらも傷だらけで眠るミミアを大事そうに抱えながら屋敷に入って行ったロウゴイヤを、アリアナは不思議そうに見送った。

「ミル爺、ゴイ爺はあのオババの事を嫌いじゃないんでしゅか?」

「男女は分からんもんじゃからのう~。あっ、わしは本当に嫌いじゃ!」

首を傾げるアリアナを見てそう答えるミルキルズに、ゼストやロウジは苦笑いするしかなかった。

竜族に生まれたのにも関わらず魔力を上手く扱えずに、両親や身内から蔑まれ、部屋に幽閉されていたミミア。憎しみと悲しさ、寂しさを抱えながら幼少期を過ごした。

だが、そんな状況を知ったミルキルズに助けられたミミアは彼に強い憧れを持つ。そんな憧れであるミルキルズの伴侶になる為に血反吐を吐くほど努力したが、“あの女”には勝てなかった。

悲しさでどうにかなりそうなミミアだったが、プライドが邪魔をして周りにはそれを悟られないように傲慢に振る舞った。そんな彼女に婚姻を申し込む男は誰一人いなかった。

だが、一人の男が彼女に結婚を申し込みに来たのだ。彼はミルキルズの右腕であり、竜族一の偉大なる戦士であるロウゴイヤであった。

竜族女性の憧れの的であった男が、今彼女の目の前に跪いてプロポーズしていた。

(何で私みたいなゴミ以下の女にプロポーズするの!?)

理解できないミミアは蔑まれる自分を揶揄っているのだと思い、彼を辛辣に罵って断りその場を去った。去り際はミミアに周りの非難の目が突き刺さった。

(私は一人で生きていかないと周りを不愉快にする)

そう思い部屋に篭った。……が、次の日から彼はめげずにミミアに会いに来た。どんなに罵られ、見下され、睨まれても一輪の花を持ち、雨の日も風の日も嵐の日も雪の日も満面の笑みで毎日やって来たのだ。

なのに彼女はその一輪の花を踏み付けて、彼を怒鳴りつけた。

「何で毎日毎日来るのよ!迷惑なの!私に相応しいのはミルキルズ様だけよ!」

そう言うと、彼はミミアの目を見てにっこりと笑っていつもこう言った。

「お前が一途で優しい女だって分かっているのは俺だけでいい!だから一人で泣くな!俺の前で泣けばいい!」

その言葉に我慢ができずに、ミミアは崩れ落ち泣き続けた。そんな彼女を支えるロウゴイヤは知っていた。

ゴミのように踏み付けた一輪の花を、大事に押し花にしてしまっている事。そしてロウゴイヤが大規模な狩りに行く時は、毎日祈ってくれている事。

傲慢でプライドが高い、そして誰よりも傷つきやすく繊細で臆病な愛しい人。

「じゃが、今回はやり過ぎじゃぞ!」

ミミアの怪我を治しつつ、怒るロウゴイヤ。

「………。あの子が皆に見下されて蔑まれる前に人族の元へ帰した方がいいと思ったのよ。私はこのやり方しかできないから」

「……。可愛がってくれ。本当は可愛いって思っとるんじゃろう?」

ミミアはロウゴイヤの問いかけに答えなかったが、反論もしなかった。



一連の話を聞いたランゴンザレスは呆れていた。

「規模が違うわ…」

そんなランゴンザレスを無視して、キラキラした瞳でスーパーオババの事を話すアリアナだった。

しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ騎士団の光の聖女ですが、彼らの心の闇は照らせますか?〜メリバエンド確定の乙女ゲーに転生したので全力でスキル上げて生存目指します〜

たかつじ楓*LINEマンガ連載中!
恋愛
攻略キャラが二人ともヤンデレな乙女ーゲームに転生してしまったルナ。 「……お前も俺を捨てるのか? 行かないでくれ……」 黒騎士ヴィクターは、孤児で修道院で育ち、その修道院も魔族に滅ぼされた過去を持つ闇ヤンデレ。 「ほんと君は危機感ないんだから。閉じ込めておかなきゃ駄目かな?」 大魔導師リロイは、魔法学園主席の天才だが、自分の作った毒薬が事件に使われてしまい、責任を問われ投獄された暗黒微笑ヤンデレである。 ゲームの結末は、黒騎士ヴィクターと魔導師リロイどちらと結ばれても、戦争に負け命を落とすか心中するか。 メリーバッドエンドでエモいと思っていたが、どっちと結ばれても死んでしまう自分の運命に焦るルナ。 唯一生き残る方法はただ一つ。 二人の好感度をMAXにした上で自分のステータスをMAXにする、『大戦争を勝ちに導く光の聖女』として君臨する、激ムズのトゥルーエンドのみ。 ヤンデレだらけのメリバ乙女ゲーで生存するために奔走する!? ヤンデレ溺愛三角関係ラブストーリー! ※短編です!好評でしたら長編も書きますので応援お願いします♫

隠された第四皇女

山田ランチ
ファンタジー
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

昨今の聖女は魔法なんか使わないと言うけれど

睦月はむ
恋愛
 剣と魔法の国オルランディア王国。坂下莉愛は知らぬ間に神薙として転移し、一方的にその使命を知らされた。  そこは東西南北4つの大陸からなる世界。各大陸には一人ずつ聖女がいるものの、リアが降りた東大陸だけは諸事情あって聖女がおらず、代わりに神薙がいた。  予期せぬ転移にショックを受けるリア。神薙はその職務上の理由から一妻多夫を認められており、王国は大々的にリアの夫を募集する。しかし一人だけ選ぶつもりのリアと、多くの夫を持たせたい王との思惑は初めからすれ違っていた。  リアが真実の愛を見つける異世界恋愛ファンタジー。 基本まったり時々シリアスな超長編です。複数のパースペクティブで書いています。 気に入って頂けましたら、お気に入り登録etc.で応援を頂けますと幸いです。 連載中のサイトは下記4か所です ・note(メンバー限定先読み他) ・アルファポリス ・カクヨム ・小説家になろう ※最新の更新情報などは下記のサイトで発信しています。  Hamu's Nook> https://mutsukihamu.blogspot.com/ ※表紙などで使われている画像は、特に記載がない場合PixAIにて作成しています

美少女に転生しました!

メミパ
ファンタジー
神様のミスで異世界に転生することに! お詫びチートや前世の記憶、周囲の力で異世界でも何とか生きていけてます! 旧題 幼女に転生しました

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...