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ここではないどこかに
しおりを挟む「……の人! …………!! …きて、起きて下しゃ……あっ噛んだ!! いやそれよりも起きて!!!! 下さい!!!!!!」
目覚めると、俺を起こしていたであろう、よくわからない獣の耳が生えた女の子と思い切り目が合った。
「あっ、旅のお方! 旅のお方が目を覚まされました!」
俺が口を開ける間も無く、女の子はワァワァと何事か騒ぎ立てダッシュで部屋を出て行ってしまった……別世界に着いてからの記憶が無いし、きっと倒れたんだろうな。で、そこをこの家の人が助けてくれた、と。
「……金は入ってるな」
そもそも俺が居た世界とこの世界で通貨は違うだろうから盗られる心配は無いと思うが、元の世界に帰ったら必要だからな。しっかりと有るのを確認する。服は違うものになっているし、剣は勿論他に身につけていたものもない。これは相手が俺を食おうと考えているのであればとても危ない。せめて剣だけでも取り返せれば……。
「おやおやぁ? もう起き上がっているのですかぁ? 人間ってタフなんですねぇ」
人の声が聞こえて、そちらへ首を向けると、先程の少女と、獣耳を生やした妙齢の白衣を着た女性が現れた。相変わらずなんと言っているのかは分からない。
「…………あぁ。言語が違うんでした。失敬失敬。ほぉらロン、君も飲んで」
「はい!!!」
目の前で二人が桃色の液体を一気飲みしている。どういう事なんだ。媚薬なのかアレは。
「アー、あー、はぁい。元気ぃ?」
ゴホンゴホンと何回かわざとらしい咳払いをして、白衣の女性がにこやかに片手を上げ、俺に挨拶をしてきた。あの薬はどうやら媚薬ではなく、俺と会話が出来るようにするための薬だった、という事か。
「この人! まだ元気ないです!!! 注射を!!!!」
「この人、動揺してるだけよぉ。落ち着いて、ね? 」
女性がやんわりとロン、という少女を止めてベッドの側に置いてある木製の椅子に腰掛けた。
「……お前達は、誰だ? 」
深呼吸を一つして、白衣を着た女性の目を見て、問いかけた。
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