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第5話: あいつがやってきてから退屈を知らない(魔王視点)
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陽太がこの城に来て以来、妙な胸騒ぎが続いている。
この城と周辺の領地を治め、魔族を統べるべく日々の業務に追われる身だが、ふとした瞬間に陽太のことが頭をよぎってしまうのだ。
何をしているか、うまく過ごせているか、彼が俺を避けようとするあの態度も含め、何もかもが気になって仕方ない。
今日も朝から一連の会議や執務をこなす中で、彼のことが思い浮かんでは消える。
そうなると謎の衝動が抑えられず、執務の合間に陽太の部屋の様子を確認することにした。
「異界から来た生物として観察が必要なのだ」と自分に言い訳しつつも、彼に接触することでしか得られない感覚があることに、薄々気づき始めていた。
部屋に向かい、ノックもせずに扉を開けると、陽太は驚いた顔でこちらを見つめる。
「また来たんですか…」
その言い方には、どこかうんざりとした響きがあったが、俺は気にせず歩み寄る。
「お前のことが気になってな。問題なく過ごしているか、確認に来た」
「いや、問題なくはないですけど。そもそも、なんでここに閉じ込められてるのか、未だにわからないし…」
陽太は視線をそらし、不満を隠さずに口にする。
その態度が、俺の心をかすかに苛立たせるが、それ以上に「どうして俺を避けるのか」が気になって仕方ない。
「お前がここにいる限り、俺が守ってやる。そのためにこうしているのだ」
「守ってるって…俺にはただの監禁にしか思えないんですけど」
陽太の冷たい視線が突き刺さり、思わず言葉を詰まらせた。
彼にとっては俺の行為は「守られる」というより「閉じ込められている」としか映っていないのか?
自分の行動が彼にどう伝わっているのか、上手く把握できず、ただもどかしさだけが募った。
「まあ、お前の言い分も理解しよう。しかし、必要なことだ」
陽太の視線に耐えかねて、そう言い残し彼の部屋を後にしようとしたが、背後からは小さなため息が聞こえた。
その後執務に戻ったが、もちろん集中はできなかった。
さっきの陽太のうんざりした顔、苛立った顔が浮かんでくる。
最初に会った時はあんな態度ではなかったはずだ。慣れない環境に体調でも崩しているのだろうか?
何か自分にできることがあるのではと考えてみるが、今までそんな風に他者を気にしたことなどなかった俺には、どうすれば良いのか皆目見当もつかない。
一通りの業務が終わり、気づけば昼食の時間になっていた。
俺は昼食を陽太と共に取ることを決め、彼の部屋に向かうことにする。
再び扉をノックせずに開けると、陽太はまたも驚きつつも不快そうな顔を浮かべていた。
「え、また来たんですか?ノックくらいしてくださいよ…」
「昼食だ。共に食事を取ることにした」
言葉少なに告げると、彼は不満を押し殺すようなため息をついたが、拒絶するわけでもなく、静かに席につく。
彼の目がこちらに向けられるたびに、何かを言いたげな表情を浮かべているのがわかる。
「…それで、魔王様は、なんで毎回俺のところに来るんですか?」
「お前が異界から来た存在である以上、観察し見守るのは当然だ」
俺がそう言うと、陽太の表情がうんざりした顔に変わった。
何がそんなに不満だというのか。
陽太が何を考えているのかまるで分からず、自分の中に芽生える苛立ちに気づく。
今までこんな感情を抱いたことはなく、どう処理していいのかもわからないまま、食事は無言で進んでいった。
陽太を部屋に残し執務室に戻ったが、やはり心が晴れない。
陽太の反発や避ける態度に触れるたびに、苛立ちや戸惑いが湧き上がる。
それでも、どこかその反応に喜びすら感じている自分がいる。
彼がただの従者や部下とは異なる唯一の存在であることが、確実に俺の生活を変えつつあった。
こんなに誰かが気になるのも、仕事が手につかないのも初めてのことだ。
自分でも理解できない謎の衝動や胸騒ぎも。
彼の存在が、俺の日常にどれほどの変化をもたらしたのかを思い知る。
だが、不快ではない。むしろこれはーー
陽太との接触が「楽しい」と感じている自分に驚きを覚えた。
この城と周辺の領地を治め、魔族を統べるべく日々の業務に追われる身だが、ふとした瞬間に陽太のことが頭をよぎってしまうのだ。
何をしているか、うまく過ごせているか、彼が俺を避けようとするあの態度も含め、何もかもが気になって仕方ない。
今日も朝から一連の会議や執務をこなす中で、彼のことが思い浮かんでは消える。
そうなると謎の衝動が抑えられず、執務の合間に陽太の部屋の様子を確認することにした。
「異界から来た生物として観察が必要なのだ」と自分に言い訳しつつも、彼に接触することでしか得られない感覚があることに、薄々気づき始めていた。
部屋に向かい、ノックもせずに扉を開けると、陽太は驚いた顔でこちらを見つめる。
「また来たんですか…」
その言い方には、どこかうんざりとした響きがあったが、俺は気にせず歩み寄る。
「お前のことが気になってな。問題なく過ごしているか、確認に来た」
「いや、問題なくはないですけど。そもそも、なんでここに閉じ込められてるのか、未だにわからないし…」
陽太は視線をそらし、不満を隠さずに口にする。
その態度が、俺の心をかすかに苛立たせるが、それ以上に「どうして俺を避けるのか」が気になって仕方ない。
「お前がここにいる限り、俺が守ってやる。そのためにこうしているのだ」
「守ってるって…俺にはただの監禁にしか思えないんですけど」
陽太の冷たい視線が突き刺さり、思わず言葉を詰まらせた。
彼にとっては俺の行為は「守られる」というより「閉じ込められている」としか映っていないのか?
自分の行動が彼にどう伝わっているのか、上手く把握できず、ただもどかしさだけが募った。
「まあ、お前の言い分も理解しよう。しかし、必要なことだ」
陽太の視線に耐えかねて、そう言い残し彼の部屋を後にしようとしたが、背後からは小さなため息が聞こえた。
その後執務に戻ったが、もちろん集中はできなかった。
さっきの陽太のうんざりした顔、苛立った顔が浮かんでくる。
最初に会った時はあんな態度ではなかったはずだ。慣れない環境に体調でも崩しているのだろうか?
何か自分にできることがあるのではと考えてみるが、今までそんな風に他者を気にしたことなどなかった俺には、どうすれば良いのか皆目見当もつかない。
一通りの業務が終わり、気づけば昼食の時間になっていた。
俺は昼食を陽太と共に取ることを決め、彼の部屋に向かうことにする。
再び扉をノックせずに開けると、陽太はまたも驚きつつも不快そうな顔を浮かべていた。
「え、また来たんですか?ノックくらいしてくださいよ…」
「昼食だ。共に食事を取ることにした」
言葉少なに告げると、彼は不満を押し殺すようなため息をついたが、拒絶するわけでもなく、静かに席につく。
彼の目がこちらに向けられるたびに、何かを言いたげな表情を浮かべているのがわかる。
「…それで、魔王様は、なんで毎回俺のところに来るんですか?」
「お前が異界から来た存在である以上、観察し見守るのは当然だ」
俺がそう言うと、陽太の表情がうんざりした顔に変わった。
何がそんなに不満だというのか。
陽太が何を考えているのかまるで分からず、自分の中に芽生える苛立ちに気づく。
今までこんな感情を抱いたことはなく、どう処理していいのかもわからないまま、食事は無言で進んでいった。
陽太を部屋に残し執務室に戻ったが、やはり心が晴れない。
陽太の反発や避ける態度に触れるたびに、苛立ちや戸惑いが湧き上がる。
それでも、どこかその反応に喜びすら感じている自分がいる。
彼がただの従者や部下とは異なる唯一の存在であることが、確実に俺の生活を変えつつあった。
こんなに誰かが気になるのも、仕事が手につかないのも初めてのことだ。
自分でも理解できない謎の衝動や胸騒ぎも。
彼の存在が、俺の日常にどれほどの変化をもたらしたのかを思い知る。
だが、不快ではない。むしろこれはーー
陽太との接触が「楽しい」と感じている自分に驚きを覚えた。
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