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本編

第11話 足音

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────扉を開く音が響き渡り、1人の人間が入ってくる。


 ッ!? この音は今日の処分!?


 いや、いつもはこの時間じゃない筈だ。いつもは、もう少し遅い時間にやって来るはずだ。だとすると、これはなんだろう......? 予定が変わった? それとも単に気まぐれ?


 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ


 もう奪われるのは嫌だ! 私の大好きなあずきが傷つくのは嫌なんだ! なんで! なんで! 私達は死ななきゃならないの!

 

 どす黒い感情に呑まれそうになる。よくわからないけど足に力が......入ら、ない?はぁ、もうだめなんだよ。もう、全てを放り投げて......しに......た......ふぇあ!?


 私が思考の渦に飲まれ、楽になりたいななんて考えちゃった時あずきは私にくっついててきた。

 あずきの優しい体温で私ははっ、とし顔を上げる。

 あずきの体温がじんわりと私の心に入ってくるようなふわふわした感覚になる。


 あず......き? 

 

 そして、そんな優しくてかっこよくて、私の大好きなあずきは......泣いていた。

 そうだよね、ごめんね。辛いのは私だけじゃないもんね。


 もう、私のよわっちい心なんかに負けない。ここの人間にだって絶対に負けない。

 どうにかして、あずきをあずきを......幸せにしてみせるんだから!!!


 犬だからって愛のパワーを見くびらないでよね


 このの温もりは絶対に失わせないんだから。


 私達が体を擦り寄らせ、不安を隠しているとあずきは私の耳元でそっと呟いた。


 「今までありがとう。僕の大切な相棒さん。」


 その声は消えそうなくらい震えていて、でも伝えないとというあずきの強い意思を感じられた。


 私はその言葉に嬉しい気持ちと、別れを意識しているあずきの言葉に胸が締め付けられた。私は、あずきに顔をスリスリした。そして一言こう伝えた。


 「あずき。大好きだったよわ。今まで一緒に居られて幸せだったよ。死んでもずっと、」


────死んでもずっと、好きだから1人でも生きて


 本当はそう言いたかったけど辞めた。あずきが許してくれなさそうだからね。


────とうとう檻が開き、人間が入ってくる。


 さぁ、人間。

 私を殺すのは良いけど、あずきは絶対に傷つけさせないからね?


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