1 / 17
1.イントロダクション的なもの
しおりを挟む
浮遊感にはっとなって覚醒した。
次に――俺、昨日買ったアニメ「エクスカリナー」のグッズの剣、抱いたまま寝てしまった気がするけど、あれって結構鋭く尖っていたよな、このままベッドから床に落ちたら、下手すると刺さるんじゃないか――と、ここまで考えたときには、もう落下済み。
予想以上の痛撃に、飛び上がった。腹に刺さった? 死ぬかも?
で、痛みに顔をしかめていたが、徐々に目を開けると何だか様子がおかしい。両目をぱっちり開いてぐるりを見渡すと、そこは中古アパートの狭い部屋ではなく、屋外だった。
一面、ピンクのお花畑。俺がいるのはそのあぜ道……と表現していいのかな? 要するに花畑の間を碁盤目状に走る通路の一角だ。下はしっとり湿った土である。俺は腰を上げ、土を払った。
見上げると天気は晴れだが、青空には白い雲がいくつか浮いている。花の香りはぱっと見ほど漂っては来ない。
いや、そんなことよりも、ここはどこで、どうしてこうなったんだろう。自分の他に人はいないかと探すが、目の届く範囲には見当たらない。
ふと気付くと、手には「エクスカリナー」に出て来る剣・エクスカリナー――の模造刀を持っていた。刃渡り三十センチほどのおもちゃで、鞘はどこかに行ってしまったようだ。これが腹に刺さった気がして、痛みも感じていたのだけれども……刃には血も何も付いていない。痛みを覚えた脇腹の辺りをパジャマの上からまさぐったが、何ともなかった。
これはもしや……いやいや、ないな。そんなことが起きるはずがない。
夢だ。夢が続いているに違いない。
右手に持った剣で左の手のひらをちくちくつついてみる。痛い。
だけど、夢の中で痛みを感じることもあると聞くから、当てにならない。
一方、これまで見てきた夢で、今ほど現実味を感じたことはなかったと断言できる。何かがおかしい。異常な事態が起きていると認識すべきだな。
とりあえず……履き物が欲しい。寝ていたときの格好のまんまだ。だからパジャマ姿に裸足。エクスカリナーの剣があるのは、持って寝ていたからだろうか。もしそんな法則があると分かっていたら、スマホを掴んで寝たものを。いやいや、スマホを持ち込めたとしても、この世界で使えるかどうか怪しいもんだけどさ。
……あれ? 何か、俺の思考ってもうすでにここを異世界だと認識してきているような。夢の中なのか、異世界に飛ばされたのか、判断を下すために見て回ろうと思っていたところなのに。
そういえば、目がよく見えている! 眼鏡ユーザーの俺だが、睡眠時は当然、眼鏡を外している。だから今は掛けていない。にもかかわらず、視力が戻っているようだ。
前に測った裸眼視力、覚えちゃいないが0.1未満だったのは確かだ。それが何故か、くっきりぱっちり見えている。この感じだと、1.5は確実にあるだろう。
これこそ異世界に来た、あるいは転生した証拠?
つづく
次に――俺、昨日買ったアニメ「エクスカリナー」のグッズの剣、抱いたまま寝てしまった気がするけど、あれって結構鋭く尖っていたよな、このままベッドから床に落ちたら、下手すると刺さるんじゃないか――と、ここまで考えたときには、もう落下済み。
予想以上の痛撃に、飛び上がった。腹に刺さった? 死ぬかも?
で、痛みに顔をしかめていたが、徐々に目を開けると何だか様子がおかしい。両目をぱっちり開いてぐるりを見渡すと、そこは中古アパートの狭い部屋ではなく、屋外だった。
一面、ピンクのお花畑。俺がいるのはそのあぜ道……と表現していいのかな? 要するに花畑の間を碁盤目状に走る通路の一角だ。下はしっとり湿った土である。俺は腰を上げ、土を払った。
見上げると天気は晴れだが、青空には白い雲がいくつか浮いている。花の香りはぱっと見ほど漂っては来ない。
いや、そんなことよりも、ここはどこで、どうしてこうなったんだろう。自分の他に人はいないかと探すが、目の届く範囲には見当たらない。
ふと気付くと、手には「エクスカリナー」に出て来る剣・エクスカリナー――の模造刀を持っていた。刃渡り三十センチほどのおもちゃで、鞘はどこかに行ってしまったようだ。これが腹に刺さった気がして、痛みも感じていたのだけれども……刃には血も何も付いていない。痛みを覚えた脇腹の辺りをパジャマの上からまさぐったが、何ともなかった。
これはもしや……いやいや、ないな。そんなことが起きるはずがない。
夢だ。夢が続いているに違いない。
右手に持った剣で左の手のひらをちくちくつついてみる。痛い。
だけど、夢の中で痛みを感じることもあると聞くから、当てにならない。
一方、これまで見てきた夢で、今ほど現実味を感じたことはなかったと断言できる。何かがおかしい。異常な事態が起きていると認識すべきだな。
とりあえず……履き物が欲しい。寝ていたときの格好のまんまだ。だからパジャマ姿に裸足。エクスカリナーの剣があるのは、持って寝ていたからだろうか。もしそんな法則があると分かっていたら、スマホを掴んで寝たものを。いやいや、スマホを持ち込めたとしても、この世界で使えるかどうか怪しいもんだけどさ。
……あれ? 何か、俺の思考ってもうすでにここを異世界だと認識してきているような。夢の中なのか、異世界に飛ばされたのか、判断を下すために見て回ろうと思っていたところなのに。
そういえば、目がよく見えている! 眼鏡ユーザーの俺だが、睡眠時は当然、眼鏡を外している。だから今は掛けていない。にもかかわらず、視力が戻っているようだ。
前に測った裸眼視力、覚えちゃいないが0.1未満だったのは確かだ。それが何故か、くっきりぱっちり見えている。この感じだと、1.5は確実にあるだろう。
これこそ異世界に来た、あるいは転生した証拠?
つづく
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。
アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。
【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】
地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。
同じ状況の少女と共に。
そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!?
怯える少女と睨みつける私。
オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。
だったら『勝手にする』から放っておいて!
同時公開
☆カクヨム さん
✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉
タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。
そして番外編もはじめました。
相変わらず不定期です。
皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます🙇💕
これからもよろしくお願いします。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる