12 / 13
十二.状況把握と今後の流れ
しおりを挟む
「いいえ、まだ生きています。――この答でよいか? 何の証も示せぬけれどな」
「……ええ」
石上は棺桶から出て、墓石のすぐそばに立った。
「説明をお願いします」
「長くなるかもしれぬから、座っていてもいいぞ。気楽にせよ」
「お気遣いをどうも。じゃあ……疲れたら座らせてもらいます。先を続けてください」
今現在の何とも言えぬ宙ぶらりんな状態で、肉体が疲労を感じるのかどうか。気にしながらも、黒い天使の口から次に出て来る言葉を待った。
「まず、貴殿の置かれた立場を端的に述べると、実験対象の一つであり、実験の第二段階に進んだところにいる。
やや詳しく語るなら――神様が数多いる人類の中から何名かをピックアップし、人ならざる能力を与えた後に、かの者自身がいかにして能力に気付き、どう振る舞うかを観察・記録するための実験をしている。人類から選ぶ方法は完全にランダムな場合あもあれば、某かの理由で神様の目に留まり、推薦のような形で選ばれる場合もある。前もって断っておくが、貴殿がどのような段階を経て選ばれたのかについては、言えない規則になっているから、これ以上尋ねぬように。
そうした実験を進めて行き、能力を身に付けたことを確信した者、能力の仕組みを理解した者、自らの意志で能力を行使した者といった条件にかなう人類を、さらにピックアップし、次の段階に進ませた。今ここだ。言ってみれば、一次選考を通過した形であるかな。
このあとは二次通過を目指し、他の人達と競ってもらうことになっている。競う方法が何なのかに関してもやはり言えない。
それから、このあと能力確定のセレモニーがある。今身に付けている能力をそのまま次の段階でも使うか、それとも別の能力との交換を望むかを、各人が意思表明する。二名以上が交換を希望した場合、ランダムに入れ替えが行われる。いかなる能力が行き渡ったかは当人以外には知らされない。
なお、交換を意思表明した者に限り、他にどのような能力が存在するかについて、情報を得られる。交換を望まなかった者は情報を得られない。
まあ、こんなところだ。質問を受け付けよう。答えられる範囲で教えるが、手短に済ませるように」
「じゃあ……何人で競うのかは教えてもらえますか」
「一応、十三名で締め切られた。けれどもこうして説明している間に条件を満たす者が現れれば、タイミングによっては追加して組み入れられることもある」
割とフレキシブルなんだな、と理解した石上。そして黒い天使が結構誠実らしいことも。
「他の人達は、どのようにして“勝ち上がった”のか、なんてことには答えられませんか」
「うむ、無理だな。各人の能力の一端に触れざるを得ない。それは不公平だし、ルールに反する」
「でしょうね。だったら、自分自身の戦略に関する事柄なら、どうでしょう。ずばり、他の参加者達は、僕よりも悪人か善人か」
「喜んでいい、皆、悪人だね」
それが確かなら、奇病Xを感染させられる能力は、極めて有利なんじゃないか。即効性がないのが玉に瑕だが、一度感染させたあと距離を保っていれば勝てるのでは――そんな風に想像を巡らせた石上。
「交換を希望した者は他の能力を知ることができるというのは、どの程度の深い情報なのか……? いわゆる発動条件や使用制限といった能力の枷になる事柄も、詳しく知られるのですか」
「ノー。そこまで教えたら面白みがなくなるからだろうね。分かるのは、能力が発動した状態のみ。貴殿を例に取れば、死に至る病に罹るということだけだね」
「……ええ」
石上は棺桶から出て、墓石のすぐそばに立った。
「説明をお願いします」
「長くなるかもしれぬから、座っていてもいいぞ。気楽にせよ」
「お気遣いをどうも。じゃあ……疲れたら座らせてもらいます。先を続けてください」
今現在の何とも言えぬ宙ぶらりんな状態で、肉体が疲労を感じるのかどうか。気にしながらも、黒い天使の口から次に出て来る言葉を待った。
「まず、貴殿の置かれた立場を端的に述べると、実験対象の一つであり、実験の第二段階に進んだところにいる。
やや詳しく語るなら――神様が数多いる人類の中から何名かをピックアップし、人ならざる能力を与えた後に、かの者自身がいかにして能力に気付き、どう振る舞うかを観察・記録するための実験をしている。人類から選ぶ方法は完全にランダムな場合あもあれば、某かの理由で神様の目に留まり、推薦のような形で選ばれる場合もある。前もって断っておくが、貴殿がどのような段階を経て選ばれたのかについては、言えない規則になっているから、これ以上尋ねぬように。
そうした実験を進めて行き、能力を身に付けたことを確信した者、能力の仕組みを理解した者、自らの意志で能力を行使した者といった条件にかなう人類を、さらにピックアップし、次の段階に進ませた。今ここだ。言ってみれば、一次選考を通過した形であるかな。
このあとは二次通過を目指し、他の人達と競ってもらうことになっている。競う方法が何なのかに関してもやはり言えない。
それから、このあと能力確定のセレモニーがある。今身に付けている能力をそのまま次の段階でも使うか、それとも別の能力との交換を望むかを、各人が意思表明する。二名以上が交換を希望した場合、ランダムに入れ替えが行われる。いかなる能力が行き渡ったかは当人以外には知らされない。
なお、交換を意思表明した者に限り、他にどのような能力が存在するかについて、情報を得られる。交換を望まなかった者は情報を得られない。
まあ、こんなところだ。質問を受け付けよう。答えられる範囲で教えるが、手短に済ませるように」
「じゃあ……何人で競うのかは教えてもらえますか」
「一応、十三名で締め切られた。けれどもこうして説明している間に条件を満たす者が現れれば、タイミングによっては追加して組み入れられることもある」
割とフレキシブルなんだな、と理解した石上。そして黒い天使が結構誠実らしいことも。
「他の人達は、どのようにして“勝ち上がった”のか、なんてことには答えられませんか」
「うむ、無理だな。各人の能力の一端に触れざるを得ない。それは不公平だし、ルールに反する」
「でしょうね。だったら、自分自身の戦略に関する事柄なら、どうでしょう。ずばり、他の参加者達は、僕よりも悪人か善人か」
「喜んでいい、皆、悪人だね」
それが確かなら、奇病Xを感染させられる能力は、極めて有利なんじゃないか。即効性がないのが玉に瑕だが、一度感染させたあと距離を保っていれば勝てるのでは――そんな風に想像を巡らせた石上。
「交換を希望した者は他の能力を知ることができるというのは、どの程度の深い情報なのか……? いわゆる発動条件や使用制限といった能力の枷になる事柄も、詳しく知られるのですか」
「ノー。そこまで教えたら面白みがなくなるからだろうね。分かるのは、能力が発動した状態のみ。貴殿を例に取れば、死に至る病に罹るということだけだね」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
JOLENEジョリーン・鬼屋は人を許さない 『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。
尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)
ホラー
ホラー・ミステリー+ファンタジー作品です。残酷描写ありです。苦手な方は御注意ください。
完全フィクション作品です。
実在する個人・団体等とは一切関係ありません。
あらすじ
趣味で怪談を集めていた主人公は、ある取材で怪しい物件での出来事を知る。
そして、その建物について探り始める。
怪異と共にその物件は関係者を追ってくる。
物件は周囲の人間たちを巻き込み始め
街を揺らし、やがて大きな事件に発展していく・・・
事態を解決すべく「祭師」の一族が怨霊悪魔と対決することになる。
読みやすいように、わざと行間を開けて執筆しています。
もしよければお気に入り登録・投票・感想など、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
ありがとうございます。
花嫁ゲーム
八木愛里
ホラー
ある日、探偵事務所を営む九条アカネに舞い込んできた依頼は、「花嫁ゲーム」で死んだ妹の無念を晴らしてほしいという依頼だった。
聞けば、そのゲームは花嫁選別のためのゲームで、花嫁として選ばれた場合は結婚支度金10億円を受け取ることができるらしい。
九条アカネが調査を進めると、そのゲームは過去にも行われており、生存者はゼロであることが判明した。
依頼人の恨みを晴らすため、九条アカネはゲームに潜入して真相を解き明かす決意をする。
ゲームの勝者と結婚できるとされるモナークさまとは一体どんな人なのか? 果たして、九条アカネはモナークさまの正体を突き止め、依頼人の無念を晴らすことができるのか?
生き残りを賭けた女性たちのデスゲームが始まる。
そのスマホには何でも爆破できるアプリが入っていたので、僕は世界を破壊する。
中七七三
ホラー
昨日、僕は魔法使いになった。
強風が吹く日。僕は黒づくめの女と出会い、魔法のスマホを渡された。
なんでも爆破できるアプリの入ったスマホだ。どこでもなんでも爆破できる。
爆発規模は核兵器級から爆竹まで。
世界を清浄にするため、僕はアプリをつかって徹底的な破壊を行う。
何もかも爆発させ、消し去ることを望んでいる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる