人を選ぶ病

崎田毅駿

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十二.状況把握と今後の流れ

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「いいえ、まだ生きています。――この答でよいか? 何の証も示せぬけれどな」
「……ええ」
 石上は棺桶から出て、墓石のすぐそばに立った。
「説明をお願いします」
「長くなるかもしれぬから、座っていてもいいぞ。気楽にせよ」
「お気遣いをどうも。じゃあ……疲れたら座らせてもらいます。先を続けてください」
 今現在の何とも言えぬ宙ぶらりんな状態で、肉体が疲労を感じるのかどうか。気にしながらも、黒い天使の口から次に出て来る言葉を待った。
「まず、貴殿の置かれた立場を端的に述べると、実験対象の一つであり、実験の第二段階に進んだところにいる。
 やや詳しく語るなら――神様が数多いる人類の中から何名かをピックアップし、人ならざる能力を与えた後に、かの者自身がいかにして能力に気付き、どう振る舞うかを観察・記録するための実験をしている。人類から選ぶ方法は完全にランダムな場合あもあれば、某かの理由で神様の目に留まり、推薦のような形で選ばれる場合もある。前もって断っておくが、貴殿がどのような段階を経て選ばれたのかについては、言えない規則になっているから、これ以上尋ねぬように。
 そうした実験を進めて行き、能力を身に付けたことを確信した者、能力の仕組みを理解した者、自らの意志で能力を行使した者といった条件にかなう人類を、さらにピックアップし、次の段階に進ませた。今ここだ。言ってみれば、一次選考を通過した形であるかな。
 このあとは二次通過を目指し、他の人達と競ってもらうことになっている。競う方法が何なのかに関してもやはり言えない。
 それから、このあと能力確定のセレモニーがある。今身に付けている能力をそのまま次の段階でも使うか、それとも別の能力との交換を望むかを、各人が意思表明する。二名以上が交換を希望した場合、ランダムに入れ替えが行われる。いかなる能力が行き渡ったかは当人以外には知らされない。
 なお、交換を意思表明した者に限り、他にどのような能力が存在するかについて、情報を得られる。交換を望まなかった者は情報を得られない。
 まあ、こんなところだ。質問を受け付けよう。答えられる範囲で教えるが、手短に済ませるように」
「じゃあ……何人で競うのかは教えてもらえますか」
「一応、十三名で締め切られた。けれどもこうして説明している間に条件を満たす者が現れれば、タイミングによっては追加して組み入れられることもある」
 割とフレキシブルなんだな、と理解した石上。そして黒い天使が結構誠実らしいことも。
「他の人達は、どのようにして“勝ち上がった”のか、なんてことには答えられませんか」
「うむ、無理だな。各人の能力の一端に触れざるを得ない。それは不公平だし、ルールに反する」
「でしょうね。だったら、自分自身の戦略に関する事柄なら、どうでしょう。ずばり、他の参加者達は、僕よりも悪人か善人か」
「喜んでいい、皆、悪人だね」
 それが確かなら、奇病Xを感染させられる能力は、極めて有利なんじゃないか。即効性がないのが玉に瑕だが、一度感染させたあと距離を保っていれば勝てるのでは――そんな風に想像を巡らせた石上。
「交換を希望した者は他の能力を知ることができるというのは、どの程度の深い情報なのか……? いわゆる発動条件や使用制限といった能力の枷になる事柄も、詳しく知られるのですか」
「ノー。そこまで教えたら面白みがなくなるからだろうね。分かるのは、能力が発動した状態のみ。貴殿を例に取れば、死に至る病に罹るということだけだね」
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