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12.これもある意味「ルールは破るためにある」
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カード争奪の最終戦となる四戦目は、入札ゲームが適用されると発表があった。
探偵ゲームではお馴染みの競技種目で、各チーム百万ディテク(ゲーム内での通貨単位)のコインを手持ちの資金に、残る四枚のカードを対象として入札していく。全く入札しない行為は認められず、少なくともどれか一つに十万以上を入札せねばならない。端数はあり。四枚の内、一番高い値が付けられたカード一種のみが落札され、他は無効となる。
注意せねばならないのは、手持ちのコインはこのあとの探偵ゲーム本番でも役立つ場合が多々あるということ。今までの傾向から鑑みて、探偵ゲームでは四十万ディテクは残しておきたい。よって実質的に入札に回せるのは、五十万から六十万といったところだろう。
また、あるカードに対して入札し、落札したチームは入札額全額を差し引かれるのは当然だが、入札したが敗れたチームは入札額の半分を差し引かれる。丸損だ。
「セオリーに従うのなら、まず軍資金を無駄にしたくないのか否かを決めないとね。無駄にしたくないのであれば、競合する可能性の強いカードに入札するのを避けて、比較的人気がないであろうカードを狙っていく」
桐生は片薙に確認の意味で言った。今現在、相談タイム十分間を利して各チームが話し合っているところだった。
「でも人気の低いカードでも、全体で最高値じゃないと勝てない。不人気のカードに高い値を付けられるかっていうのが、ハードルになる」
「それにまだあるのよね。人気の高いのを避けていたら、このあとのドラフトで、よいカードが自動的に下位チームに行くのよね。ある程度のリスクは取らなくちゃいけない。悩みどころだわ」
話し合いの内容が他のチームに聞かれることはもちろんない。ちなみにだが、話し合いの内容を敢えて聞かせるという行為は禁じられていない。ライバル達を惑わせる作戦として、行ってもいいと認められている。ただ、実行しても効果が薄く、またどのチームも嘘の割合が多いだけでショーとしてあまり面白くないこともあって、不評である。それ故に、最近の大会では採用されることが著しく減っていた種目である。にも関わらず、強者や有名人を集めた一大イベントで採用するとは、いささか不可解ではある。
<作戦会議が進んでいると思うけれども、邪魔するよ>
突然、テーリン吹田がスピーカーを通して口を挟んだ。
嫌な予感を抱いたのは、桐生だけではなかったかもしれない。ともかく話し合いを中断し、耳をすませる。
<実はルールの説明がまだ途中だったんだ。ごめんごめん>
その発表に六人の参加者は一様にざわついた。吹田のふざけた言い種と相まって、皆の怒りを買うのに充分だ。「どういうこと?」「ふざけてるんじゃないよ」と実際に怒り出す者も出る始末。
<今回から新ルールになったのを忘れていました。お詫びいたす。許して>
まだおふざけの響きの残る吹田だったが、当人としては司会進行としていつものキャラクタターを貫いているだけなのであろう。参加者達もいつまでもブーイングを浴びせていたって、仕方がない。ここは大人になる。
<ご静聴をよろしく~。では改めて説明すると、追加のルールがあるよ。何せ不評が続いていたもんねえ、このゲーム。このルール追加で、ちょっとは面白くなればいいんだけど。おっと、脱線してる暇はないんだった。悪い話じゃないと思うから、落ち着いて聞いてくださいな。今回、全体で最高値が付いたカードを、最高値を付けたチームが獲得できるのは同じなんだけど、支払う額が違うんだ。そのカードに対する入札の中で二番目に高かった額を払えばいい>
吹田は己の話が場に与える効果を楽しみたいのか、言葉を句切った。事実、六人の参加者には、この新ルールをどう受け止めようかという困惑がさざ波のように広がる。
<これだと極端な場合、凄いことが起こり得るんだよね。え? 凄いことって何かって? うーん、じっくり考えたら君達も絶対に辿り着くと思うけど、まあそれは酷だからさっさと言っちゃおう。ほんと、極端なケースになるんだけれど、カードA、B、C、Dの四枚にそれぞれ順に、二十万、十万、十万、十万と一つずつ入札があったとしよう。旧ルールだと、カードAに入札したチームが二十万払って獲得する。では今さっき言ったルールを適用するとどうなるかな? 重要なのは、二番目の高値というのは全体を指してのことじゃない。最高値が付いたカード、例ではAに関する入札のみを対象とする。つまりつまり、この事例だと入札は二十万の一つだけで、二位以下はなし。ということは? そう、二番目の高値はゼロ。ただでカードAが手に入るんだ!>
なるほど理解した、と桐生は思った。
(でも、そんな極端な入札は、まず起きるまい。テーリン吹田が解説しなければまだ可能性はあったかもしれないけれど、今の話で絶対になくなった。ひょっとしたら、それこそが主催者側の狙いなのかな? まあ、重要なのは二位の額で支払いが済む点だ。思い切った高額入札ができるかも)
考えを推し進めるべく片薙に話し掛けようとした矢先、吹田の話には続きがあったことを知らされる。
つづく
探偵ゲームではお馴染みの競技種目で、各チーム百万ディテク(ゲーム内での通貨単位)のコインを手持ちの資金に、残る四枚のカードを対象として入札していく。全く入札しない行為は認められず、少なくともどれか一つに十万以上を入札せねばならない。端数はあり。四枚の内、一番高い値が付けられたカード一種のみが落札され、他は無効となる。
注意せねばならないのは、手持ちのコインはこのあとの探偵ゲーム本番でも役立つ場合が多々あるということ。今までの傾向から鑑みて、探偵ゲームでは四十万ディテクは残しておきたい。よって実質的に入札に回せるのは、五十万から六十万といったところだろう。
また、あるカードに対して入札し、落札したチームは入札額全額を差し引かれるのは当然だが、入札したが敗れたチームは入札額の半分を差し引かれる。丸損だ。
「セオリーに従うのなら、まず軍資金を無駄にしたくないのか否かを決めないとね。無駄にしたくないのであれば、競合する可能性の強いカードに入札するのを避けて、比較的人気がないであろうカードを狙っていく」
桐生は片薙に確認の意味で言った。今現在、相談タイム十分間を利して各チームが話し合っているところだった。
「でも人気の低いカードでも、全体で最高値じゃないと勝てない。不人気のカードに高い値を付けられるかっていうのが、ハードルになる」
「それにまだあるのよね。人気の高いのを避けていたら、このあとのドラフトで、よいカードが自動的に下位チームに行くのよね。ある程度のリスクは取らなくちゃいけない。悩みどころだわ」
話し合いの内容が他のチームに聞かれることはもちろんない。ちなみにだが、話し合いの内容を敢えて聞かせるという行為は禁じられていない。ライバル達を惑わせる作戦として、行ってもいいと認められている。ただ、実行しても効果が薄く、またどのチームも嘘の割合が多いだけでショーとしてあまり面白くないこともあって、不評である。それ故に、最近の大会では採用されることが著しく減っていた種目である。にも関わらず、強者や有名人を集めた一大イベントで採用するとは、いささか不可解ではある。
<作戦会議が進んでいると思うけれども、邪魔するよ>
突然、テーリン吹田がスピーカーを通して口を挟んだ。
嫌な予感を抱いたのは、桐生だけではなかったかもしれない。ともかく話し合いを中断し、耳をすませる。
<実はルールの説明がまだ途中だったんだ。ごめんごめん>
その発表に六人の参加者は一様にざわついた。吹田のふざけた言い種と相まって、皆の怒りを買うのに充分だ。「どういうこと?」「ふざけてるんじゃないよ」と実際に怒り出す者も出る始末。
<今回から新ルールになったのを忘れていました。お詫びいたす。許して>
まだおふざけの響きの残る吹田だったが、当人としては司会進行としていつものキャラクタターを貫いているだけなのであろう。参加者達もいつまでもブーイングを浴びせていたって、仕方がない。ここは大人になる。
<ご静聴をよろしく~。では改めて説明すると、追加のルールがあるよ。何せ不評が続いていたもんねえ、このゲーム。このルール追加で、ちょっとは面白くなればいいんだけど。おっと、脱線してる暇はないんだった。悪い話じゃないと思うから、落ち着いて聞いてくださいな。今回、全体で最高値が付いたカードを、最高値を付けたチームが獲得できるのは同じなんだけど、支払う額が違うんだ。そのカードに対する入札の中で二番目に高かった額を払えばいい>
吹田は己の話が場に与える効果を楽しみたいのか、言葉を句切った。事実、六人の参加者には、この新ルールをどう受け止めようかという困惑がさざ波のように広がる。
<これだと極端な場合、凄いことが起こり得るんだよね。え? 凄いことって何かって? うーん、じっくり考えたら君達も絶対に辿り着くと思うけど、まあそれは酷だからさっさと言っちゃおう。ほんと、極端なケースになるんだけれど、カードA、B、C、Dの四枚にそれぞれ順に、二十万、十万、十万、十万と一つずつ入札があったとしよう。旧ルールだと、カードAに入札したチームが二十万払って獲得する。では今さっき言ったルールを適用するとどうなるかな? 重要なのは、二番目の高値というのは全体を指してのことじゃない。最高値が付いたカード、例ではAに関する入札のみを対象とする。つまりつまり、この事例だと入札は二十万の一つだけで、二位以下はなし。ということは? そう、二番目の高値はゼロ。ただでカードAが手に入るんだ!>
なるほど理解した、と桐生は思った。
(でも、そんな極端な入札は、まず起きるまい。テーリン吹田が解説しなければまだ可能性はあったかもしれないけれど、今の話で絶対になくなった。ひょっとしたら、それこそが主催者側の狙いなのかな? まあ、重要なのは二位の額で支払いが済む点だ。思い切った高額入札ができるかも)
考えを推し進めるべく片薙に話し掛けようとした矢先、吹田の話には続きがあったことを知らされる。
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