コイカケ

崎田毅駿

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コイカケ2の10

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   ダイヤの2 クラブのA クラブの2 ダイヤの7 ダイヤのK

 一見すると2のワンペアだが、クラブの2に付与された特性によりクラブのAがダイヤの2に置き換わる。つまり、2のスリーカードだ。
(しかもこれでダイヤが四枚と見なせるから、フラッシュを狙える!と思ったのに、ちょっと考えたら、あり得ないんだわ。クラブの2の効果でダイヤが四枚になるのに、フラッシュを狙うにはそのクラブの2を捨てねばならない。でも捨てたら効果は発揮されず、クラブのAはクラブのAのまま。何ていやらしい特性を付けてくれたのよっ)
 ここは素直に、二枚の2を残すのがいいのか。何せ、これだけで2のスリーカードが確定している。
(スペードの2が来ればフォーカードだけど、ハートの2だったら特性が発動してしまう。相手の最強の札が手元に来ても、大して嬉しくないわ。自分で決めたカードなのに、こんなマイナスの側面が)
 そう、野杁が指定した特殊カードの三枚目、6.はハートの2だった。
「最早、天に運を任せる」
 野杁はダイヤとクラブそれぞれの2を残して、三枚を交換した。

 両者は自身の手札を見、さらには相手の様子を短時間ながらつぶさに観察し、上乗せするマッチ棒を決めた。
「縁起の悪い方が面白いかもしれないわね」
 先番の静流はおかしそうに言いながら、マッチ棒十三本を出した。
「十三本上乗せして、合計二十。きりよく行きましょう」
「……コールする」
 野杁もこれを受けて、二十本とした。
 三ツ矢の静かだがよく通る声で、各人手札をオープンするように求められた。

神田部静流の手札
   ハートのA ハートの6 クラブの3 クラブの5 クラブのA

野杁竹子の手札
   ダイヤの2 クラブの2 スペードの2 スペードのQ ハートの10

「これはこれは。少々お待ちを」
 三ツ矢は、予め記述しておいた特殊カードの対応表をちらと確認し、発言の通り少し考える時間を取った。といっても三十秒程度だ。
「――先に、野杁さんの手札から見ていくとしましょう。特殊カードはクラブの2のみです。通常のポーカーであれば、2のスリーカードの完成ですが、クラブの2は自身の手札中、最も大きなカードをダイヤの2に変えます。なのでこの時点で2のフォーカード。また、クラブの2は対戦相手の最強の札をクラブの2に変えさせる能力も付与されています。これが発動することを頭に入れて、静流さんの手札を見ますと」
 物事を整理しながら話すためか、三ツ矢は一度、台詞を区切った。唇を内側に若干噛んでから再開する。
「特殊カードはハートの6とクラブの5の二枚。通常のポーカーですと、エースのワンペアですが、ハートの6及びクラブの5は、野杁さん指定の特殊カードでジョーカーになります。そして取り決めに従い、カードの大小からは外れます。ですから、静流さんの手札で最も大きなカードにはAになります。二枚ありますが、スーツ(マーク)の格からハートのエースがより強い。これがクラブの2になります。
 これらを鑑みて、実際の手札を書き出してみますと」


神田部静流の手札
   クラブの2 ジョーカー クラブの3 ジョーカー クラブのA

野杁竹子の手札
   ダイヤの2 クラブの2 スペードの2 ダイヤの2 ハートの10


「このようになり、野杁さんの手札は2のフォーカードに相当します。
 一方の静流さんは……ジョーカーの代用カードに何を当てはめるのか、決めていただきましょう」
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