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7.夢から醒めて【R18含む】

18.ときどき

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 賢太くんと二人で過ごしているうちに、私はあることを思い出していた。

 ――あっちの世界での賢太くんとのセックスは最高だったな。

 不埒なことを考えては止めようと思考を遮ろうと試みるのだが、賢太くんの横顔や喉仏、胸板などを見ているとどうしても思い起こされてしまう。

 まだ十代だった賢太くんはあどけなさを残しつつも男になった感じだったが、今は熟した色気のある男性に成長している。
 どんなセックスをするんだろう、と思うと下腹が熱く感じてくる。

 最初の再会時にはそこまで感じなかったのに、今はもう色気ダダ漏れなのが分かって、私をくらくらさせてしまった。

 会話の中で冗談交じりに「オレのこと惚れた?」と子供っぽく笑うのも、また魅力的だった。

 ドライブデートの行き先は、人気のない波止場だった。
「ここならゆっくり話せると思って」
 街灯がオレンジ色で温かみのある色だ。心がじんわりと温かくなるのを感じた。

「素敵。知らなかったわ」
「うん、仕事でたまたま波止場近くの事務所に行くことがあって、その時に教えてもらったんだよね」

 へえ、と感嘆する私の手を取って、「恋人ごっこしよう」と賢太くんがおどけて言う。
「ごっこ、ね」
 恋人繋ぎをして、誰もいない波止場をゆっくりと歩いていく。
「ここは一般の人が来るところじゃないから、さすがにベンチはないな……」
 じゃあここに座ろう、と波止場にあるあれ――ボラードを指した。
「一人しか座れないけど?」
「ん? こうするんだよ」
 先に賢太くんがボラードに腰掛けてから、私を引き寄せて膝の上に座らせる。
「温かい」
 まだ肌寒い温度だったので、人の温もりが欲しかったところだったのか、私をぎゅっと抱き締めて独りごちた。

「ああー……幸せだ」
 賢太くんがため息をつきながら小さく呟く。
「私も」
「ほんと? オレと一緒にいて幸せを感じてくれてる?」
「うん。ホッとする」
「ドキドキは?」
「うーん、うん、するよ」
「良かった。とりあえず男として見られてるんだ」

 私の背中に額をくっつけて、すりすりとこすった。

「ねえ、賢太くん……」
「ん?」
「私を好きでいてくれるのは嬉しいんだけど……これまでに好きになった女性はいなかったの?」
「あー……、うん、とりあえず彼女は作った。……けど、うーん……なんていうか」
「うん、それで?」
「この人じゃないなって」

 遠くの方から船の汽笛が聞こえてくる。

「宣子じゃないとダメなんだよなあ」
 そう言って、私のお腹を撫でるようにして触れた。

「私のどこが良かったのよ?」
 恥ずかしくて賢太くんの顔をまともに見られないので、この姿勢は有り難かった。

「すごく美しい人」
「え? なにそれ?」
「容姿が、という意味じゃないよ。心が純粋で子供みたいな感じ。あと、ほっとけない。オレを見る目がさ、すごーく切ない感じが伝わってくるんだよね。すがりたいような、助けてって言ってるような……」
「気のせいじゃないの」

 私は苦笑いして、私のお腹をさする賢太くんの手の甲を軽くつねった。

「気のせいかもな。でも、ほっとけないんだ」
「私はちゃんと仕事出来るし、一人でも生きていけるのよ?」
「そうだね」
「ひょっとしたらたくましいかもしれないのよ」
「うん、否定しない」
「やっぱり気のせいだと思うわ」
「そうかもしれないけど、オレはほっとかないよ」
「しつこいわね」
「嬉しいくせに。あーやば……ちょっと興奮してきた」

 気が付いたら私の尻に硬いものが膨らんでいる。

「やだ、恥ずかしい! ごっこはもうおしまい」
「ええー」

 立ち上がって賢太くんの方に振り返ると、彼の股間は立派に隆起していた。
「ごめんね、もう少ししたら収まると思うから……」
 苦笑する賢太くんが愛おしかった。
「大きいのね……」
 もうすでに彼の一物の大きさは知っていたが、こっちの世界では知らないことになっているのだから。
「試してみる?」
「何を言ってんの」

 恐らくこういうやりとりをするのは私ぐらいだろう。
 それだけ賢太くんのスケジュールはみっちりで他の女と会う隙間などない。
 この時間が、彼にとって息抜きなのだろう。

「さ、家に帰って寝ましょ」
「うーん、帰りたくないな……。宣子ともっと一緒にいたい」
「だーめ。明日も仕事だから」
「はあ、仕方ない。帰るとしますかー」

 鈍い動きで立ち上がった賢太くんは、私の腰に手を回して引き寄せた。
 まっすぐに見つめられて、私はどぎまぎしてしまう。

「宣子……愛してるよ」
「賢太くん……」
 ゆっくりと近づいてくる顔を避けられずに硬直していると、その顔が私の顔の横にすれ違い、抱き締めただけだった。
「キスすると思った? えっちー」
「ば、バカ!」

 ひとしきり笑った後に、賢太くんは優しい笑みを浮かべて口を開いた。
「宣子が幸せならそれでいいよ。付き合えなくても結婚出来なくても、オレは宣子の傍にいて、幸せを見届けるから」
「賢太くんの幸せは?」
「オレの幸せ? 宣子の幸せを見ることかな」
「……バカ」
 泣きそうになるのを必死に堪えたおかげで、涙を零さずに済んだ。

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