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5.高校時代

3.百合子、やっちまったなぁ!

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「は?」

「だーからぁ……! ヤッちゃった」

 まてまてまて。

 今なんとおっしゃいました?

「ヤッた……?」
「うん……」

 要するに、百合子ちゃんの初体験の相手が、七つ上の教育実習生というわけ。
 未成年と成人。

 アウトー。

 同意してもしなくてもアウトだろ、これは、と思いつつも、百合子ちゃんの気持ちを尊重しなければならない。

「……幸せだった?」
「うん。すごく良かった」

 ああ、あの百合子ちゃんが大人になってしまったのか……。

「実はもう何回もヤッちゃった」
「すげえ」

 土曜日に実習生の一人暮らし部屋に転がり込み、ことに及び、そのまま性欲を貪るようにして何度もヤッたそうだ。

「痛くなかったの?」
「それがねえ、全然! 気持ち良かった」
「ちゃんとゴムつけてくれた?」
「うん、ちゃんとしてた」

 それもそうだ。
 ああいうタイプはきちんとゴムをつけてトラブルを徹底的に避けるからだ。
 結婚まで狙うのであれば、うっかり妊娠などあってはならないのだ。

 たち悪いな、と私は腕を組んだ。

「ねえ、一緒に喜んでよぉ」
「う、うん……百合子ちゃんが幸せだったらね。嬉しいと思う」
「何よ、その濁した感じ!」
「だって……立場が逆だったら、未成年に手を出してるって状況なんだからさ……素直に喜べないわけよ」
「そうだけどさ」
「まだ百合子ちゃんがハタチとか成人していれば、素直に喜べたのよ」

 教育実習生という立場と状況からして、未成年を抱く嗜好があるのではないかと勘ぐりたくなるのだ。

「まあ……、今を楽しんでね。でもその人との将来を考えちゃダメだよ」
「分かってるわよ。そこんとこはちゃんと考えてる」
「何をちゃんと考えてるの?」
「嫌でも分かってる。私は圓山財閥の子だからさ。ずーっと色々言われるわけよ。結婚だって自由にさせてもらえないと思うし。だったら結婚するまでの間は好きにさせてもらおうと思ってるわけ。そういう意味で、男遊びを今してるの」

 そっか……、と私はため息をついた。

「気持ち分かるよ。それなら私はもう何も言わない。百合子ちゃんが楽しく、幸せに過ごしてくれれば本当に嬉しいから」
「ありがとう。宣子はエッチしないの?」
「うーん……したいけど、なんか一度エッチしちゃうと欲望が止められなくなるんじゃないかって怖い」
「うはは、そんなに?」
「うん、めっちゃ性欲強いのよ」

 こうやって開けっぴろげに話せるのは百合子ちゃんだけ。
 良き友を得られたのはでかい。

「へえーエッチしてないのに、そんなの分かるの。すごいね、ある意味」
「まあ……ね」
「賢太とはやらないの?」

 百合子ちゃんのけしからん質問に、私は噴き出した。

「まあアイツはしそうにないけど、万が一童貞を誰かに奪われたらどうすんのよ」
「まってまってまて!」
「何よ」
「なんで賢太くんの話になるわけ」
「へ? アイツアンタにぞっこんだし、アンタだって憎からず想ってるんでしょ?」
「いや、そう見えてるの?」
「違った?」
「分からん」

 正直、賢太くんに対する気持ちを自分が見えてないのだ。
「わかんないの……」

「そっか。まあヤキモチでも妬けば分かるんじゃない?」
「そうなのかなあ」
「賢太に抱かれたいって一瞬でも思ったことあるなら、まあ好きなんだと思うけど?」

 バリバリにある。
 賢太くんのムードに流されそうになって、このまま押し倒されたいと妄想したことだってあった。

「何を我慢してるの? なんか怖いことでもあったの?」

 百合子ちゃんに真剣に心配されそうになって、私は笑って誤魔化した。

「さっきも言ったけど、ほんとに性欲強すぎるから、朝から晩までヤッちゃいそうな勢いかなって」
「それはそれでいいじゃん? 人生一度きりだし――」

 私、二度目……。

「まあとにかく、男で失敗とかしたくないの……」

「あっそ。まあ私は男で失敗してもやり直すから」

 潔くて大好きだ、百合子ちゃん。
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